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デモンズ・リベレーション~俺は転生して魔人となり、くそったれな世界に叛逆する~  作者: 宇月ナギ


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10話 喰らう箱

 暗闇の中。

 

 俺は慎重に歩を進めた。

 さっきまで感じていた気配は

 いくつか潰した。

 

 武装したゴブリン。

 

 それに、少し大きい個体——ホブゴブリン。


 ……思ったより数が多い


 壁にも、床にも。

 

 わずかに痕跡が残っている。

 

 踏み荒らされた跡。

 

 削れた爪痕。

 

 血の跡。


 群れで動いている。 

 しかも、ある程度まとまって。


 ……人間みたいに連携して動く。

 完全な獣じゃない。

 知能がある。


 息を吐く。

 ゆっくりと、気配を探る。


 そして——

 見つけた。


 少し開けた空間の、その中央に

 一つの箱が置かれていた。


 俺の想像する…

 そう、ゲームでよく見るような宝箱だった。


 …異世界でも宝箱の形は何故か

 共通しているらしい。


 足を止めて視線を凝らす。


 その箱は、古びた木箱の外見で 

 縁に鉄の補強が入っている。

 

 鍵は壊れている。


 ……違和感はない。


 左目に意識を向ける。

 

 魔力の流れ。

 

 瘴気。


 どちらも、特別な反応はない。


 足音を殺しながら。

 目の前まで来る。

 しゃがみ込んで箱に触れる。


 冷たい。

 ただの木と鉄、少なくともそう感じる。


 わずかに、蓋を持ち上げた。

 ——その瞬間。


 ガバッ!!


「っ!?」


 箱が、開いた。

 

 そして内側に見えたのは…

 牙。

 歪んだ肉と、吸い込むような暗闇。


 ——ミミックだ!!


 反射で後ろに跳ぶ。

 

 だが遅かった。


 ガチンッ!!

 

 腕に衝撃。

 

 噛みつかれた。


「ぐっ……!!」


 強引に引き剥がす。

 

 皮膚が裂ける。

 

 血が飛ぶ。


「ちっ!……完全に油断した!」


 ミミックが蠢く。

 

 箱の形を維持しながら。

 

 中から肉が溢れている。


 ゆっくりと、向きを変える。

 

 まるで、獲物を見定めるように。


 ……気配がなかったのは、そういうことか。


 擬態。

 

 完全に溶け込んでいた。


 後ろにすぐさま跳躍する。

 ここは距離を取って呼吸を整えるべきだ。


 右腕は…まだ使わない。

 

 左手だけでは、決定打に欠ける。


 剣は使い物にならない。



 傷が熱を持つ。


 意識を切り替える。


 ——来い!


 強く思う。


 敵。

 

 危険。

 

 排除。


 胸の奥が熱を帯びる。

 

 ぞわり、と。


 左目が、焼ける。


 視界が変わる。

 

 世界が、遅くなる。


 身体の奥から、何かがせり上がる。


 ……この状態から、引き出す!


 魔人の力を。


 半魔人。


 完全ではない。

 

 だが、それでいい。


 ミミックが襲いかかる。

 

 蓋を振り上げるように噛み付いてきた。


 よし、見える!


 踏み込む。

 

 回り込んで噛みつきを紙一重で躱した。


 カウンターの要領で左手を貫手の形で叩き込む。


 左手はミミックの外皮を貫いた。

 左手が内側へ入る。


 俺はそのまま左手をねじ込んだ。


 ぐちゃり。

 

 鈍い音。


 ……よし、ここだ!


 中枢。

 

 そこを狙ってさらに押し込む。


 そして左手に訪れる中核を破壊する感覚…


 その瞬間。


 あの感覚。

 

 “削れる”感触。


 ミミックの内部にあった力が流れ込む。


 ……喰ってる。


 確信する。


 左腕が力を奪っている。


 半魔人の状態でも左手の能力は有効のようだ。


 ミミックが大きく歪む。

 

 その形が崩れ始める。


 最後に、わずかに跳ねて——

 

 動かなくなった。


 沈黙。


「……はぁ……」

 

 息を吐く。


 ……甘く見ていたようだ。


 ここはダンジョンだ。

 ただの洞窟じゃない。


 油断したら、普通に死ぬ。

 しかし、半魔人化もだいぶ慣れてきた。

 今回で練習は終わりでいいだろう。


 視線を落とす。

 

 さっきまでミミックだったもの。


 その内部から何かが零れ落ちている。


 ……人間の装備だった。


 黒いローブ。

 赤い装飾が入っている。


 軽鎧。

 頑丈そうだ。


 レザーパンツ。

 

 ブーツ。


 なるほど、このミミックは誰かを喰って

 その装備を抱え込んでいた。


「……まあいい」


 ミミックが出した装備を拾い上げる。


 周囲に危険がないことを確認するため気配を探る。

 すると、奥から少し大きな気配を感じる。

 しかし、こちらに来る様子はない。


 軽鎧とレザーパンツとブーツを着用して

 ローブを羽織る。

 

 軽く動いてみる。


 防御は上がる。

 

 動きも阻害されない。

 いい装備だ。


「助かるな、これは」


 …なんというご都合展開……

 思わず苦笑が漏れる。


「……今までの不幸の分、これくらいの幸運があってもバチは当たらんだろう」


 小さく呟き、肩を鳴らす。


 そして、視線を奥へ向ける。

 さっき感じとったあの気配の方向。


 しかも、数が多い。

 規則的な動き。

 まとまった気配。


 この感じ…

 この先にいるのは“群れ”だ。


 そして、その中心に。


 ……一際大きい気配…強いのがいる。


 はっきりと分かる。


 息を吐く。


 そして——

 

 一歩、踏み出した。


 装備は整った。


 力もある。


 ……行こう、その先へ。


 俺は、迷わず進んだ。

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