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それから数日が経ったが、まあ……俺から言わせて貰えば何も得るもんがねえ。
友達なんてのはいねえし、授業も全部知ってるもんばっかだしなあ……ああいや、魔法のだけはちげえか。だって間違ってるし。
ほんっっっっとあいつら余計な事しかしねえよなぁ……今ならスペリオル2人までなら相手して勝つ自信があるがぁ……6人同時に来られちゃぁ流石の俺もやべえからな。
取り敢えず後6年はかかんだよなぁ……
「——くん!」
まあ、そんときゃシャルルも力つけてるだろうしなぁ、なんならスペリオル一人くらいは倒せるようになってっかな?
「——リ君」
さて、そろそろ俺の方もなんかやらねえとなぁ……神域魔法の研究でもすっか?
「アリ君!!」
「はい!?」
「やっと気付きましたね?全くもう……」
っと、いけねえいけねえ。考え事してた。
「恐らく問題を聞いていないのでもう一度言います。魔法には段階があります。その段階を言ってください」
「下から順に最下級、下級、中級、上級、超上級、神級、神域級です」
何気なく言ったが、周りが笑ってる事みるとぉ……間違えたなあこりゃ。
「なんだよ最下級って」
「神級だって」
「神域級?どう言う意味なの?」
どうやらここら辺を間違えたっぽいな。
「あー、すみません間違えました」
「いえ、いいですよ。座ってください」
まあ、周りの評価なんざどうでもいいからな……
そして午後。周りの人間がザワザワしてる。
まあ、んな事無かったろうからなぁ。
「はい、それでは模擬戦闘をやってもらいます!」
今俺たちがいるのは訓練場。
決闘とか模擬戦闘を行う場所だ。
模擬戦闘ってのは俺たちが戦うっつう事だ。
勿論殺しちゃいけねえが。
でだ。普段は無視してきやがるのに今はほぼ全員が俺の方を向きやがる。
はいはい。わかってるつうの。俺とやりてえんだろう?
絶対泣かす。
「それではペアを組んでくださいね」
「おいお前、俺とやれ」
生意気そうなガキじゃねえか。いいぜ?面白え。
「うん。いいよ」
余裕で承諾してやる。
他の奴らはずるいだの俺とやれだの言ってたが、まあ待て。ちゃんとやってやるよ。
「それでは全員揃いましたね?では、はじめ!」
「へへ、初っ端から虹紋様とやれるなんて俺はついてプギュウウ!」
なんだ?この時代の貴族は相手とやり合う時になっげえ前振り入れねえと済まねえのか?
「お前!卑怯だぞ!」
「残念だけどそれは褒め言葉だ」
「ッヒ!?『わ、我が火の力の眠りし所よグゲ』」
だからなんで避けえねえんだこいつ?
……あ。
意気揚々と腹蹴ったら呪文が誤作動して服に燃え移ってんなありゃ。
……あ?まずい?
「先生。あの子燃えてます」
「え?はああああ!!???《我が水の力よ!さあ力を示せ!《クリエイト・アクア》』」
すると、火だるま一歩手前の火がクリエイト・アクアで作られた水で消える。
「う、うわぁあぁぁぁぁぁぁん」
あ、泣きだしやがったよめんどくせえ。
「ちょ、ちょっとアリ君!何をしたの!」
「いや、『呪文』詠唱してきたから蹴り飛ばしました」
「そ、それは……正しい判断だけど……でも危ないって言うか……けどアリ君は魔法使えないし……こんな前例ないから、何とも……」
ん?
先生が可笑しくなってるけど、よく観ると俺を見る目が変わってんな。
雑魚から恐怖の対象みたいになってやがる。
…………!
「さあ!他に誰か俺とやらない?確か俺とやりたいって言ってた人まだいたよね?」
ザッと俺から顔を背ける奴ら。
ッチ、根性ねえなこいつら。
「私とやりましょう」
お?後ろから声がかかる。
振り向くと、真っ赤女がいた。
「ああ、真っ赤」
「は?」
「いや、何でも。それよりもやるんなら早くやろうか」
一位だし、何よりも俺に挑んできた根性。
最高だね。
「では、行きますよ『我が力に応えよ《ファイアボール》』」
おっと?これは『呪文』短縮か。
なかなか珍しい前世でも『呪文』使ってるやつは……いや、この時代じゃこの技術が必要なのか?
それに前世で『呪文』使ってるやつって大体がかっこいいからって理由だったし、短縮なんてしねえか。
さて、『呪文』の速度は早えが、魔法はまだまだだな。余裕で躱せる。
「じゃあ行くぜ」
「っ!?避け……っく!」
おしゃべり出来んのか?おい。
ッチ、避けられたか。本気じゃないにしてもコイツかなり良いな。
「『我が力に応じよ《ファイアボール》』」
芸がねえな……余裕で躱す——
「『曲がれ』!!」
——へえ、良いじゃねえか。
それは中々良いぜ?一般的な魔法使いじゃあそれは出来ねえ。
だが……
「届かない」
「な!?」
本気で体を捻って避けた後に地面を蹴って真っ赤女の背後に立ち、組み伏せる。
恐らく女は急に俺が消えたと思ったら俺に組み伏せられてたって感じだろうな。
「中々良い線いってたぜ?お前さん名前は?」
「……自己紹介をしたはずだが?」
「ハッハッハ、あんなん覚えてる訳ねえだろ?俺は興味のある奴しか覚えなくてね。自分の兄貴の名前ですら忘れてんだ」
「……ルージュ。『ルージュ・ペトラ』」
「覚えたぜ。じゃあな」
解いて周りを見渡すと、今度は誰も俺の方を見ようとしねえ。
まあ、んなもんか。
「アリ君、そのですね。ええと……」
「魔法が使えない俺が悪いんですから、気にしないで下さい。俺は観戦していますよ」
「ええ……ごめんなさいね」
そんなこんなで俺は観戦する事になった。
そして昼。
なんか食わねえといかんが、どこで食うか……シャルルから弁当は貰ってるし、あの木のところはあの先輩っぽい人がいるから使えねえしな……
で。
「おい、そこのストーカー」
ビクってなってすぐに隠れたが、なんだあれ?バレてないと思ってんのか?
「いや、バレてんに決まってんだろ。ルージュ」
「っく、その……良い天気だな!」
ああ、実はコイツバカか。
「そうだな。で?なんかようか?」
「い、いや。用というか……い、一緒にご飯を食べないかと誘いにきたんだが……」
……こいつって普段どうやって飯食ってるっけ……ああ、確かボッチだったな。
「別に良いが、俺はまだどこで食うか考えてねえぞ?」
「そうか……そうだ。先輩から聞いてる良いところがあるんだ。そこにいかないか?」
「あん?別に良いけど、近いのか?」
「近いが……きみ、どうしてそんな口調なんだ?もっと普段は普通だろう?」
「これが地でね。一回この喋り方見せたしな。もうお前には偽る必要ねえだろ?」
「そうか?まあいい。ついて来てくれ」
……まあ、だんだん嫌な予感はしていた。
だが……
「こうも当たるとはな……」
「どうした?」
「あら?久しぶりですね」
と言うわけであの木のところに来たのである。
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