二人のスイーツ
前国王はゆっくりとしたステップを踏みながら、少し皮肉めいた笑いを浮かべる。
「自己中心的でどうしようもない男に惚れているのだろう。」
「残念なことに。」
ロザリアが即答した。
「この会は、あいつの伴侶を選んだ会だと知っているのかい。」
「ええ。」
「だとしたら、わしが紹介しようとしている人物も知っているのかい。」
ロザリアはにっこりと笑う。
「知りません。」
「わしだって腐っても前国王だ。いろいろなしがらみだってあるしな…。」
愚痴めいた口調にロザリアは踊りながら軽く人差し指を自分の唇に当てた。
「かまいませんわ。」
そしてステップをとめる。
「だって、誰を選ぼうと結果は変わらないですわ。」
前国王と視線をしっかりと合わす。
「私が惚れた男ですもの、誰にも渡しません。」
ロザリアのきっぱりとした口調に、前国王は大きな声で笑った。
「さすが姫。」
前国王が音楽隊に軽く手を向け、音楽を静止する。
そして手をとり口づけする。
「愛しいわが娘。」
わざと周囲に聞こえる声で告げる。
息子の王妃を決める席で、国王の父が『わが娘』と使えば、おのずと導き出される答えはひとつ。
ロザリアの片方の眉が上がる。
「まさか。」
「驚いたかい。」
それは大きな悪戯を成功させた瞳の輝きだった。
「おめでとうございます。」
宰相が手をたたきながら、メマリーと王子とともに側にやってきた。
「無事、陛下の伴侶も決定されました。今まで姫様が王位継承権が一位ということで、中々話が進みませんでしたが…ようやくこの日が迎えられましたね。」
長々といわれる祝辞に、白い婚姻と噂され、最近になり寵愛を得たロザリアとの関係が、まるで二年も前から婚儀に向けて進められていたかのような錯覚を回りに起こさせる。
「おめでとう。」
メマリーが近づき、ロザリアに抱擁する。
「姉上…。」
青ざめた顔で王子が手をとる。
「ここで気の利いた謝辞も言えない男なんて、王子じゃないわよ。」
メマリーが王子にそっと耳打ちをする。
「おめでとうございます、姉上。」
王子は悔しそうに、そしてにこやかな顔でロザリアの頬に口付けた。
最後にロザリアの元へ現れたのはリュミエールだった。
「どういう。」
前国王に詰め寄る前に、宰相がそっと間に立ちロザリアを前に出す。
「お父上の行動をご存知だったのですか?」
「まさか。」
苦々しい口調でリュミエールが答えた。
「さすが無責任ですわね。」
「無責任だからこそ、できることもあるのだよ。」
楽しそうに前国王が答える。
祝福の言葉をかけようとやってくる貴族たちを軽くいなし、リュミエールはバルコニーにロザリアを導く。
先ほどまで血なまぐさい場面のあった庭園が目の前に移る。
「ここはきれいなところじゃないぞ。」
「きれいでいたいとは思いません。」
少しの間
「婚儀で忙しくなるな。」
当然のことのようにリュミエールが言った。
「何をおっしゃっていますの?」
ロザリアが頬を膨らませた。
「まだ、あなたから結婚の申し込みはされていません。」
むっとした表情でリュミエールが手の甲に口付ける。
「どうだ。」
憮然とした表情で、少し耳元が赤くなったリュミエールが口を開く。
ロザリアは悪戯っぽく笑った。
「まずは自己中心的なところから直していただかないと。」
花が開く様な笑顔をロザリアはリュミエールに向け、自分の手でリュミエールの顔を引きよせる。
そして、二人の唇が手に入れたスイーツは…
二人が本当に結ばれるのは近くて遠い未来。
お読みいただきありがとうございました。
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