本当のスイーツの答えは
ロザリアが舞踏会の会場に戻ったころには、舞踏会は終盤を迎えようとしていた。
そして、一足先に舞踏会に戻ったリュミエールの周りには、貴婦人達が花に群がる蝶のように集まりをみせていた。
リュミエールに少し離れ、宰相にエスコートされながらロザリアも舞踏会の場に戻る。
「あんな男でも群がる人間がいるなんてね。」
赤い髪よりもよく目立つ、大きな扇を口元に当てながらメマリーが傍に来る。
宰相が軽く頭を下げる。
メマリーも他国とはいえ王族につならなるものであるはずなのに、扇を仰ぐようにしながら小さく頷きをかえした。
「帰る?」
何があったでもなく、軽くメマリーが言った。
ロザリアは宰相の腕から自分の手を離した。
「そうですよ。」
弟の王子も急かすようにメマリーの言葉に同意する。
メマリーは優雅に扇をたたみ、さりげなさを装いながら王子の手の甲を打った。
「うるさいわね。」
メマリーが回りに聞こえないように、笑顔で王子を罵倒する。
「僕は思ったことを言ったまでです。」
王子も負けじと笑顔で応戦する。
「従姉様に口答えできるようになっただけでも成長ね。」
自分が国からいなくなってからの年月をロザリアは感じる。
「どういうことですか。」
王子が姉の言葉に問い返す。
「馬鹿ね、以前の王子様だったら頼りなくて仕方がなかったってことに決まっているでしょ。」
メマリーが補足した。
むっとした様子で王子が腕を組んだ。
「確かに前は立場も分からない子どもでした、けれど姉上。」
組んだ腕をはずし、ロザリアの手を大きくなった手で包み込み、ロザリアと同じ緑色の瞳でしっかりとロザリアの瞳を捕らえる。
「もう王位継承権で争いは起きないと断言できます。」
王子の手の暖かさが心地よくロザリアを包む。
「帰ってきませんか?」
舞踏会の音楽の調べが少し小さくなる。
「ここじゃなくてもお菓子は作れるわよ。」
メマリーが茶化したように王子の言葉の上に、言葉を重ねる。
「そうですね。」
ロザリアは貴婦人たちと楽しそうに会話を交わすリュミエールのほうに目をやる。
ロザリアが何か口を開こうとしたとき、侍女の格好ではなく貴族の格好をしたマリアが皿を持ち現れた。
「姫様、お口が寂しいのではありませんか?」
そう言ってパイ生地にクリームを乗せ焼かれたお菓子を差し出した。
「ピュイ・ダムール。」
ロザリアがお菓子の名前を口にする。
口の中に広がるシンプルでいて、深みのあるクリーム。
口の中にクリームが残らないように、口の中の甘さをパイ生地が包んでいく。
「でも…甘いお菓子ばかりじゃ、つまらないわ。」
ロザリアが王子の手をどけ、メマリーの手の上に乗せる。
「貴方が変わったように…私も変わったのよ。」
そういってマリアの差し出したグラスに入ったきらきらと輝くミネラルウォーターを口にする。
「ね、いいでしょ。」
ロザリアは昔と変わらない無垢な笑顔を見せた。
○




