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ヒューマンコード  作者: エイジ


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第37章 崩壊の始点

警告音が鳴ったのは、深夜だった。


短く、鋭い音。


一度では終わらない。


間隔を詰めて、連続して鳴る。


当直からの連絡で駆け付けたルキが、跳ねるように端末を開く。


「……なんだこれ」


画面に流れるログ。


──不正侵入検知

──外部アクセス急増

──防御層突破


オペレーションルームの空気が、一瞬で張り詰めた。


同じく駆け付けたばかりのナッシュが顔を上げる。


「……何が起こってる?」


レオンが、落ち着いた様子でオペレーションルームに入ってくる。


その歩みには、迷いがなかった。


その目は、すでに覚悟を決めていた。


「来たか」


サガラが低く言う。


「外部監視、最大出力」


モニターが切り替わる。


夜の街。


静まり返った工業地区。


その上空に——


光。


小さな点。


一つ。


二つ。


三つ。


来たばかりのカイが、訳が分からないまま息を呑む。


「……ドローン?」


次の瞬間。


数が増える。


十。


二十。


視界を埋めるように、空が覆われていく。


音は、ほとんどない。


だがそれが逆に、異様だった。


アヤがモニターを見つめたまま言う。


「……包囲されてる」


逃げ場はない。


そう理解できる配置だった。


ルキが端末を叩く。


「通信経路……全部見られてる」


レオンが吐き捨てる。


「くそっ」


そのとき、画面の中央に文字が浮かぶ。


──ARCADIA:作戦を開始する。


誰も、言葉を発さなかった。



同時刻。


北部拠点。


警告音が重なって鳴る。


アリシアの顔がモニターに映る。


「北部拠点、攻撃されてる!南部拠点、どうなってる?」


ルキが振り向きながら答える。


「こっちも攻撃受けてる!」


ナッシュが続ける。


「なんでだ?位置……完全に割れてる」


アリシアは一瞬だけ目を閉じる。


そして開いた。


「……やられたわね」


その言葉には、悔しさも焦りもなかった。


ただ、事実を受け入れていた。


「データの優先順位を切り替える」


冷静に指示を出す。


「外部流出を最優先で防いで」



南部拠点、入口付近。


レオンとサガラ、カイが駆け付ける。


爆音。


壁が外側から弾け飛ぶ。


衝撃。


空気が押し出される。


カイの体が床に叩きつけられる。


「っ……!」


レオンが叫ぶ。


「立て!来るぞ!」


煙の向こうから影が流れ込む。


黒。


統一された装備。


無駄のない動き。


処理班。


サガラが即座に撃つ。


一人、倒れる。


だが次の瞬間。


別方向から侵入。


「多方向だ!食堂付近!」


ナッシュが叫ぶ。


ルキが端末を叩き続ける。


「防御、全部抜かれてる……!」


レオンが歯を食いしばる。


「ここは時間を稼ぐ!行ってくれ!」


サガラが短く返す。


「了解」


その動きに迷いはない。



北部拠点。


警報が赤に変わる。


モニターが埋まる。


侵入ルート。


進行予測。


すべてが、最短距離だった。


アリシアが静かに言う。


「……完璧ね」


誰も反応しない。


「どれぐらい持つ?」


当直員がパソコンから目を離さず答える。


「……三分持てばいい方です」


アリシアはわずかに頷いた。


「そう」


一瞬の間。


「覚悟するしかないようね」


その表情に、恐怖はなかった。



南部拠点。


銃声。


閃光。


爆発。


空間が削られていく。


カイが叫ぶ。


「レオンさん!」


レオンは振り返らない。


ただ前を見て応戦する。


「撃ちながら下がれ!」


その声は強かった。


カイも応戦しながら言う。


「このままじゃジリ貧です!」


レオンが短く答える。


「分かってる」


その会話に、感情はなかった。


ただ、生き延びるための判断だけがあった。



北部拠点。


扉が破壊される。


処理班が流れ込む。


速い。


正確。


躊躇がない。


当直員が立ち上がる間もなく撃ち抜かれる。


そしてアリシアに銃口が向けられる。


だが——


撃たれない。


アリシアは動かなかった。


ただ、まっすぐ見返す。


「……そういうことね」


小さく呟く。


「私は、残すのね」


処理班は何も答えない。


だが、それが答えだった。


その時点で、北部の戦闘は——


終わっていた。



南部拠点。


爆発音が連続する。


空間が崩れていく。


ナッシュが叫ぶ。


「押されてるみたいだ!」


ルキが歯を食いしばる。


「あぁ分かってる…もう少しで最低限のデータは退避できそうだ」


レオンが叫ぶ。


「退路を確保しろ!」


食堂付近の防衛を諦め、サガラがすぐに動く。


その動きは、冷静だった。


すでに“撤退戦”に切り替わっていた。



夜空。


ドローンが旋回する。


無音。


無数。


そのすべてが、同じ目的で動いている。


──排除。

──確保。

──制圧。



南部拠点。


カイが息を荒げる。


「……これ、もう……」


言葉が続かない。


レオンが短く言う。


「まだ終わってねぇ」


その声だけが、空間に残った。


だがその言葉は、


どこか現実から少しだけ遠かった。



北部拠点。


静寂。


戦闘は、すでに終わっていた。


アリシアだけが、立っている。


処理班が取り囲む。


逃げ場はない。


彼女はゆっくり息を吐いた。


「……合理的ね」


その言葉に、誰も反応しない。


ただ、次の処理へ移行する。



南部拠点。


まだ、戦闘は続いていた。


だが——


終わりは、もう見えていた。


静寂は、完全に壊された。


そしてそれは、


二度と元には戻らない。

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