コミカライズ配信記念『レイモンドの隠し事』
ついに本日2月11日より、コミックシーモア様にて聖女不在のコミカライズ版が配信開始です!!
それに伴い、全二話の番外編を書かせていただきました!!
皆様、原作ともども、コミカライズ版もどうぞよろしくお願いいたします!!
めっちゃくちゃ面白いですよぉおおおお!!
まただ。
また、いない。
「──というわけで、今週もいつの間にかいなくなってたの」
「そうですか」
明け方、私が目を覚ますと、隣で寝ているはずのレイモンドはいなくなっていた。
1週間に1度、2日ほど続けて夜中の間にベッドを抜け出してそのまま朝まで帰って来ないことが、この2か月ほど続いている。
最初は用を足しにでも行ったのだろうと特に気にすることなく二度寝をしていた私だけれど、何度か続いた後気になり始めて二度寝することなく待っていても、結局帰ってくることはなく、日中の疲れのせいでいつのまにか寝落ちしてしまって、起きるとすでに着替えを終えたレイモンドが涼しい顔をして私の寝顔を見て喜んでいる。
解せぬ。
いつも私を抱き枕にして幸せそうに朝まで爆睡しているレイモンドが、定期的に一人でどこかに行っているだなんて……おかしいわ。
「ま……まさか浮気!?」
週に一度、私に黙って誰かほかの女と会ってるの!?
「そうよね……。男の人って、常に新しいものに惹かれるとこの間読んだ恋愛小説に書いてあったし、小さい頃からずっと一緒にいる私なんて古女房よね。さすがにもう飽きちゃったのかもしれないわね……」
「それだけはないです」
もごもごと弱気な言葉を繰り出す私に、ゼルが食い気味に否定する。
「陛下が王妃様に飽きるなんてことはありえません。長年、あなた方を一番近くで見てきた私が言うのです。間違いはありません。それに、気になるのであれば、今夜は寝たふりでもして後をつけると良い。いつも2日続けていなくなるということは、今夜もまた陛下は動くでしょうし。いつまでも一人でもやもやと考えているのではなく、気になることは本人に確認して、二人で解決する。あなた方は、結婚してからそれを学んだはずですよ」
「!!」
そうだ。
思っていることを自分の中でだけでもやもやと抱え込んで、すれ違って……。
話し合うことの大切さを、私は学んだじゃないか。
「そうね、ゼル。ありがとう。私、今夜はしっかりと起きて、レイモンドと話をするわ」
レイモンドと、また仮面夫婦には戻りたくはないから。
私にとって、変わらず大切な人だから。
***
夜。
私たちはいつもと同じように、ベッドで一日の出来事を語らうと、二人一緒に眠りにつく。
いつもとちがうのは、それが私は寝たふりだ、ということ。
絶対にレイモンドの隠し事を突き止めて、きちんと話し合って見せるんだから!!
──動きがあったのは、眠りについてしばらく経った、その時だった──。
ふわり、と隣から重力が消え、部屋の扉が小さな音を立てた。
行ったか……!!
「よし!! 動くわよ!!」
私は急いでベッドから降りると、椅子に掛けていたガウンを羽織り、音を立てないようにゆっくりと扉を開けると、寝室を出た。
レイモンドは……こっちかしら。
わずかに聞こえる足音の方へ進めば、曲がり角を曲がった先でレイモンドの後ろ姿をすぐそばに発見して、思わず影に隠れる。
っぶなぁ~っ!!
て、どうしたのかしら、レイモンド。
あんなに熱心に絵を見て……って……えぇっ!?
レイモンドは熱心に廊下に飾ってあるラス湖の絵画を見ていたと思えば、なんと突然絵画を横にスライドし始めたではないか。
そして現れたのは隠し階段。
なにこれ!?
こんなものがあるの、今日初めて知ったわ……。
と、とにかく、後を追わなきゃ。
私はレイモンドが行ったのを確認すると、慎重に絵画をスライドさせて、現れた隠し階段を静かに降りていった。
薄暗い螺旋階段を下りていくと、突き当りに扉があり、そこからわずかに明かりが漏れている。
「レイモンドはあそこね」
漏れ出た光をたよりに突き当りまで降り、扉の隙間から部屋の中を覗き見ると──。
「なっ!?」
その光景を見て、思わず声が出てしまった。