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勇者、トリップ中

リュウは思った。

理不尽だ…。何故俺がこんな目に遭っているのか……と。


「つまり私達は最初からレントさんの眼中になかったと!?」

「報告にくる度に私達に思わせぶりな態度だったのにですか!?」

「眼中にないってわけじゃないんですが、多分彼女がいなくても選ばなかったというか…。それにあの思わせぶりな態度はレントのデフォでして…」


三姉妹の説得を試みるリュウだが上手く説明できない。

確かにレントにその気はなくてもあの態度は気があるのではないかと周りに思わせるようなものばかりだった。

それがデフォだと分かってたミウでさえ本当は好きではないのかとドキドキしながらそのやり取りを見ていたくらいなのだ。

なのに今更あれは全く関係なく最初から気がなかったんです、などと言われた日には3人が怒るのも無理はない。

どうしていいものか分からなくなったリュウはレントに直接説明してもらおうと考える。

けれど………


「無理だ…。あいつならこの油火の中に余計油を注ぎかねん……!」


実際、こうしてリュウとタイガが苦労しているというのにレントはどこかに意識が飛んでいる。

ふわふわと幸せそうな表情から察してハルのことでも考えているのだろうか。

あの状態のレントに説明を要求しようものなら『いやぁ、元からあの子が好きだったんで貴方達には興味なかったです』などと無神経に豪速球のストレートを投げそうだ。

勿論顔面直撃のコースで。

これだから鈍感野郎は……。

ため息と共に首を振りたくなるリュウだが我慢する。

ここで弱音を吐けば負けだ。

こんなところで負けるわけにはいかないと気持ちを奮い立たせた。

え? どうしてリュウはここまでやる気なのかって?

その理由は後々出てきますから。

言っておきますが理由についてはあまり期待しない方がいいですからね。

いや、一応。


「ねぇタイガ。あたしはあいつにずぅぅっっと泳がされてたの? 手の平で踊らされていたわけ?」

「そういうわけじゃありませんよ。あいつはミウさんのことを大切に思ってます。……仲間として」

「何よそれ! ずっと旅してて行く先々のあの思わせぶりは全部仲間としてのってこと!? 」

「そういうことになりますね……ってダメです! こんなところで殺人はよくないです!」


タイガはタイガで苦労していた。

暗殺忍者(アサシン)ジョブのミウが自慢の短剣でレントの後ろに回り込もうとするのを魔法で抑える。

本当はダンジョン外で魔法を使うことは許されてないが小柄な体格のタイガにミウを抑えるだけの力はないので魔法を使うしかない。

王様もこの状況をこれ以上悪くしない為に多少の使用は認めてくれるだろう。

ん〜、フラグ魔が告白しちゃうとこんな風になっちゃうんですね〜。

心なしか姫達の侍女や使用人の女の子達まで嫉妬の目で見ているような……。


「それにあたしも知らない間に付き合い始めた子って誰!? エルメス、コスタ、マルガ、ミリアム、ハンネ、ニコル、ヴェロ、ヘルミ、グレーテル、マーヤ、あぁ! もっとたくさんいるけど一体誰なの!?」

「空に挙げるだけでそんなに出てくるところがレントの恐ろしいところですが……確かにそうですね。一体誰でしょうか……?」


出るわ出るわレントがフラグを立てた女性の名前。

タイガの言う通りミウは怒っていて、パッと思いつく分しか挙がらないのに詰まらずあれだけ言えるとは……。

人のいない夜道に気をつけなさいレント。

いつ誰に後ろから刺されるか分かりませんよ。

レントが誰と付き合い始めたのか。

ミウだけでなくタイガまでもが興味を持ち、2人はレントーーではなくリュウを見る。

だってレントはトリップしてますからね。


「あ〜、あいつだ。あの道具屋の娘。分かっかなぁ。銀髪の娘がいただろ?」

「銀髪……? あぁ。いましたね、そんな娘が……ってあの娘ですか!?」

「それ本当!? あの娘フラグ立ってなかったでしょ! 」


ま、マジですか…?

ハルにフラグは立ってなかったんですか……?

な、なんというダークホース…。

大穴もいいところですね……。

よもや名前すら知らないような女の子がレントの彼女だとは思っていなかったようでタイガもびっくり。

ミウもプルプルと体を震わせて……ってあれ?

何だかミウの様子がおかしくありませんか…?


「いい! いいわっ! あの娘可愛いから前から妹にしたかったの!」

「あの娘ならレントの彼女でもいいわね。そして私の妹にする!」


ええっ!?

それでいいんですかミウさん!?

ほら! あまりのバカらしさにタイガも額に手を当てて呆れてるじゃないですか!

目を星に輝かせ、打って変わって態度を豹変させたミウ。

レントも大概非道であるがあんたもその程度だったのかとタイガも疲れて溜息を漏らす。

そのまま疲れた表情でリュウの元に向かい、今度は三姉妹姫の説得へ。

可哀想に。振り回された果てにまだやることが残っているとは…。

今回のレントの告白によって一番振り回されたのはある意味タイガかもしれませんね……。



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