1話 …チート?
「初めまして、不破英雄様……あなたは、1度死んでしまいました」
白い空間に響く、澄んだ声。
俺――不破英雄は、目の前に浮かぶ金髪の女神をぽかんと見上げていた。
不破英雄。
親父よ、お前はいったい何を考えていたんだ。
キラキラネームというやつだ。「英雄」と書いて「ひでお」と読む……でもなく、「ヒーロー」と読む。小学校の入学式、担任が出席を取る手が止まったのを今でも覚えている。
「ふ、不破……え、えいゆう……?」
「ヒーローです」
「…………」
それ以来、六年間ずっとそう呼ばれた。慣れたといえば慣れた。嫌だといえば嫌だった。
そんな俺の高校生活には、ラノベ的なイベントがいくつかあった。特に印象的なのが――
食パンをくわえた転校生との衝突。登校中、角を曲がった瞬間だった。向こうは食パンをくわえたまま全力で走ってきて、見事に正面衝突。そのまま慌ててその子は学校へ走り去った。
ホームルームで転校生の紹介があった。壇上に立ったのは、あの時の女の子だった。俺は思わず「お前あの時の!」
ラブコメの始まりだ――そう思ったが…
「あの時はごめんなさい」
帰ってきたのがお詫びの言葉。そらそうだよな、向こうが走ってきてぶつかったんだから。
ベタ展開に「あんたあの時の!」展開はなく、そしてそれ以降音沙汰なし。しかも隣の席で…
それから、幼なじみとの毎朝登校。物心ついた頃からずっと一緒に学校へ向かっていた。これには男子全員が羨ましがった。その幼なじみには憧れの先輩がいた。三年生のバスケ部のエース。今ではそっちとラブラブである。この春から俺は一人で登校している。
あとは図書館で本を取った時たまたま文学少女と被って手と手が触れ合ったら本争奪戦が始まったり、たまたま告白に失敗した学園1のギャルを見かけて慰めたら友達にはなったもののそれからは音沙汰なし…その他はカクカクシカジカでエトセトラエトセトラ
数えたらキリがない
つくつぐラブコメの神様に嫌われてるらしい
死因はと言うと、情けない。本当に情けない。
登校中に空を見上げたのがまずかった。「今日も青いな」などと思っていたその瞬間、何かが落ちてきた。正確には「誰か」が。女の子だった。どこから来たのかわからない。空から、降ってきた。
ラブコメ展開ではここから恋が始まると思うじゃん?
全体重で俺の頭を直撃して、そのまま俺は地面に沈んだ。
最後に聞こえたのは「きゃあ」という声と、「あ……」という他人事みたいな呟き。
それが俺の、十六年と数ヶ月の幕引きだった。
ほんと期待させるなよ……
現実と創作物は違う。
ついさっきまでは、そう思っていた。
そう――ついさっきまでは。
だが、今は違う。
「今、異世界では魔王の手によって未曾有の危機が迫っています」
女神の声で、俺は現実――いや、現状に引き戻された。
「ただ、今のあなたでは魔王どころかスライムにも太刀打ちできません」
「…………」
「あなたには転生特典で、いいものを差し上げましょう」
女神がほほえみ、掌の上に光の玉が現れる。
「その名も――『システム干渉コントローラー』」
「……システム干渉コントローラー?」
「あなたのステータス全てを、自由に操作できる力です。攻撃力、防御力、魔力、速度――全てを思いのままに。レベルの概念すら書き換えられる、まさに規格外の能力です。」
やばい。これ完全にチートじゃないか。
「いってらっしゃいませ」
女神が微笑んだ瞬間、世界が白く溶けた。
目を開けると――石造りの広間だった。
高い天井。ステンドグラスから差し込む赤い光。
そして――悲鳴。怒号。
ここは……王城か。
玉座の前では騎士たちが必死に剣を構えていた。その先にいるのは化け物が三体。魔族なのか?その風貌は、悪魔の羽を生やした狼を二足歩行にしたような怪物だった。騎士たちは次々と吹き飛ばされ、玉座の奥では王族らしき人物とお姫様が震えながら玉座の後ろで抱き合いながら隠れていた。
魔族が王城の中で絶賛戦闘中。そうそこに俺は転生した。
タイミング最悪すぎるだろ。あと空気読め
のんきにそう考えた俺の視線を、魔族(?)の一体が捉えた。
なにやら勝手にステータスウィンドウが開いた。条件はまだわからないが、見てみることにした。
下級魔族 剣士 Lv.83
下級魔族 魔法使い Lv.81
下級魔族 武闘家 Lv.80
………………。
いや、待て。待ってくれ。
転生初日。人間側の王城。王族が襲われている真っ最中。レベル80越えが三体。
自分のステータスを見てみると――
不破英雄 Lv.1
HP 50 / MP 30
攻撃力 10 / 防御力 8
速度 12 / 魔力 15
……
でもこっちにはこれがある!
俺は震える指先でシステム干渉コントローラーを起動した。
編集モードに入る。攻撃力の数値を選択して――
「ピッ」
WARNING
同時編集可能ステータス数:1
同時に操作できるステータスは1項目のみです。
俺はしばらく、その文字を眺めた。
魔族の一体がゆっくりとこちらを向く。赤い瞳が、俺を捉えた。
女神様。
ついでにもう一個だけ、文句を言いに戻っていいですか。
空から降ってきた女の子「初めまして、不破英雄様……あなたは、1度死んでしまいました」
白い空間に響く、澄んだ声。
俺――不破英雄は、目の前に浮かぶ金髪の女神をぽかんと見上げていた。
不破英雄。
親父よ、お前はいったい何を考えていたんだ。
キラキラネームというやつだ。「英雄」と書いて「ひでお」と読む……わけがない。俺の名前は「えいゆう」でも「ひでお」でもなく、「ヒーロー」と読む。小学校の入学式、担任が出席を取る手が止まったのを今でも覚えている。
「ふ、不破……え、えいゆう……?」
「ヒーローです」
「…………」
それ以来、六年間ずっとそう呼ばれた。慣れたといえば慣れた。嫌だといえば嫌だった。
そんな俺の高校生活には、ラノベ的なイベントがいくつかあった。特に印象的なのが――
食パンをくわえた転校生との衝突。登校中、角を曲がった瞬間だった。向こうは食パンをくわえたまま全力で走ってきて、見事に正面衝突。そのまま慌ててその子は学校へ走り去った。
ホームルームで転校生の紹介があった。壇上に立ったのは、あの時の女の子だった。俺は思わず「お前あの時の!」と叫んでしまった。クラス中の視線が一斉に俺に刺さった。
ラブコメの始まりだ――そう思ったが…
帰ってきたのがお詫びの言葉。そらそうだよな、向こうが走ってきてぶつかったんだから。そしてそれ以降、音沙汰なし。
それから、幼なじみとの毎朝登校。隣の家に住む幼なじみの日向とは、物心ついた頃からずっと一緒に学校へ向かっていた。これには男子全員が羨ましがった。
日向には憧れの先輩がいた。三年生のバスケ部のエース。今ではそっちとラブラブである。この春から俺は一人で登校している。
現実と創作物は違う。
ついさっきまでは、そう思っていた。
そう――ついさっきまでは。
死因は、情けない。本当に情けない。
登校中に空を見上げたのがまずかった。「今日も青いな」などと思っていたその瞬間、何かが落ちてきた。正確には**「誰か」**が。女の子だった。どこから来たのかわからない。空から、降ってきた。
ラブコメ展開ではここから恋が始まると思うじゃん?
全体重で俺の頭を直撃して、そのまま俺は地面に沈んだ。
最後に聞こえたのは「きゃあ」という声と、「あ……」という他人事みたいな呟き。
それが俺の、十六年と数ヶ月の幕引きだった。
ほんと期待させるなよ……
だが、今は違う。
「今、異世界では魔王の手によって未曾有の危機が迫っています」
女神の声で、俺は現実――いや、現状に引き戻された。
「ただ、今のあなたでは魔王どころかスライムにも太刀打ちできません」
「…………」
「あなたには転生特典で、いいものを差し上げましょう」
女神がほほえみ、掌の上に光の玉が現れる。
「その名も――『システム干渉コントローラー』」
「……システム干渉コントローラー?」
「あなたのステータス全てを、自由に操作できる力です。攻撃力、防御力、魔力、速度――全てを思いのままに。レベルの概念すら書き換えられる、まさに規格外の能力です。あなたたちの世界でいう、ゲームのチート行為と思ってくれたらいいです」
やばい。これ完全にチートじゃないか。
「いってらっしゃいませ」
女神が微笑んだ瞬間、世界が白く溶けた。
目を開けると――石造りの広間だった。
高い天井。ステンドグラスから差し込む赤い光。
そして――悲鳴。怒号。金属がぶつかり合う音。
ここは……王城か。
玉座の前では騎士たちが必死に剣を構えていた。その先にいるのは化け物が三体。魔族なのか?その風貌は、悪魔の羽を生やした狼を二足歩行にしたような怪物だった。騎士たちは次々と吹き飛ばされ、玉座の奥では王族らしき人物と女の子が震えながら玉座の後ろで抱き合いながら隠れていた。女の子の方はお姫様なのか?
魔族が王城に攻め込んでいる。そこに俺は転生した。
タイミング最悪すぎるだろ。
のんきにそう考えた俺の視線を、魔族(?)の一体が捉えた。
なにやら勝手にステータスウィンドウが開いた。条件はまだわからないが、見てみることにした。
下級魔族 剣士 Lv.83
下級魔族 魔法使い Lv.81
下級魔族 武闘家 Lv.80
………………。
いや、待て。待ってくれ。
転生初日。人間側の王城。王族が襲われている真っ最中。レベル80越えが三体。
自分のステータスを見てみると…..
不破英雄 Lv.1
HP 50
MP 30
攻撃力 10
防御力 8
速度 12
魔力 15
————-
……
でもこっちにはこれがある!
俺は震える指先でシステム干渉コントローラーを起動した。
よし。全部ぶっ上げてやる。
編集モードに入る。攻撃力の数値を選択して….
「ピッ」
WARNING
同時編集可能ステータス数:1
同時に操作できるステータスは1項目のみです。
俺はしばらく、その文字を眺めた。
魔族の一体がゆっくりとこちらを向く。赤い瞳が、俺を捉えた。
女神様。
ついでにもう一個だけ、文句を言いに戻っていいですか。
空から降ってきた女の子の連絡先……教えてください。連絡先……教えてください。
なんだよこれ…元の世界に戻せよ!




