番外編短編・マリエの推理
マリエの件も解決し、すっかり春めいてきた。探偵事務所の窓からも花が見えるし、日差しが眩しい。
カミルは事務室で仕事中だった。最近、依頼も途絶えていたし、貴族たちに手紙を書きつつ、探偵事務所のチラシも同封していた。
時計をチラリと見る。今はまだ午前中。エステルはやってくる時間じゃない。マーサも実家の用事で出掛けていたし、猫のミルクはずっと寝ている。
「退屈だ」
メガネを外し、目を擦る。このままでは居眠りしてしまいしまいそうだったが、この手紙は郵便局に持っていかなければ。
メガネを再びかけ、ジャケットを着ると、探偵事務所から郵便局へ向かった。
春のせいか、花屋の屋台も多い。ジュースや菓子の出店も出てる。妙に浮き立つ華やかな空気。
「お、あいつはマリエか?」
そんな道を歩いている時、前方にマリエが見えた。噂ではバルテルと駆け落ちしたそうだが、証拠はない。ただ、相変わらずマリエはバルテルと付き合っている。それはいくつか証言を得ていた。
「あら、カミルじゃないの?」
向こうもカミルに気づいた。気まずい。マリエはユリウスの復讐未遂事件は知らないとはいえ、何か感じ取っているらしい。
今日はグレーのドレスにメイクも薄い。目も一段と憂鬱そうだ。バルテルと付き合っていても一ミリも幸福そうに見えない。やはり、ユリウスが復讐を思いとどまって正解だ。もう報いは受けているだろう。
「ところで私の尾行している時、バレバレな変装していたわね。あれ、わざと? わざと私にバレるようにしていた?」
「さあ? それは君の思い過ごしだ」
あえて挑戦を仕掛けるような質問をしてきた。相変わらずいけすかない女だ。見た目の悪に気が強い。かといって芯も強くなさそう。エステルとは大違いだ。
そんなことを考えていたからか。マリエはさらに踏み込んできた。
「わかったわ。エステルを一人にしたくなかったのね。おとり調査にならないように守ってた? あえて目立つ執事の格好したりして?」
思わず目が泳ぐ。その推理、別に外れてもいないからだ。
「まさかバルテルのあの手紙、私以上にあなたの方がイライラしたんじゃない? エステル、箱入りお嬢様ぽいもの。私と違って男性から熱烈ラブレター貰ったら心配よね。バルテルからしたらエステルなんて赤子の手をひねるぐらいイージーに遊べそうだし?」
あぁ、イライラする。マリエの推理、全然外れていないから。
「あぁ、もうどうでもいいだろ。それよりユリウスに謝れ」
もっともユリウスの名前を出したら、マリエは黙った。その口元、強張っている。嫌な女だが、ユリウスにしたことの自覚はあるらしい。
ご覧いただきありがとうございます。これにて全編完結です。
気づくと長い話になってしまいましたが、最後までご覧いただき嬉しく思います。ありがとうございました。また別の新作も書く予定があるので、よろしくお願いいたします。




