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周期的に揺れる船から降り立ったそこでは卑屈な雨が降っていた。ドサッと勢い付いてる訳でも無いしっとりとしたにわか雨だ。かと言って私に寄り添うわけでも無く傘からはみ出た私の鞄と風に流され少しばかり焦茶の革靴とを濡らした。
3年前の出立の日もこうであった。私を後押しするのでも引き止めるのでもない、見守るだけの雨。
それはまるで彼女に似ていた。風化されつつある過去の記憶に一人、明瞭に映る人が。
それは凛と云う名の幼馴染で、六つの時から居たからおそらく十年余りを共にした人だ。
かつて私がこの島を離れる時彼女は何も言わず見送った。別れの挨拶なんて物はなかったし私も意固地になって声を掛けなかった。確か最後に見た彼女の顔は悠然とした態度の元に下げていた笑顔であったと思う。
ただ私は知っていた、その瞳に離愁の潤いが宿されていた事を。取り繕われた喜色の裏にあった物を私は確かに認識できていたと思う。唯私はそれを避けた。彼女が宿したその情感を知ろうと思うと私の全身は凍傷の用にひりつき心中は淋しさ一色になってしまい何にも手が付かなくなりそうだったからだ。
本心では今日ここに来ることすら億劫だった。既に燕の雛の囀りを聞き私の心は十分に揺れ動いていた。
しかし今日ばかりは来ざるを得ない訳があった。7日前に届いた一通の手紙である、それも拝啓で綴り敬具で括る丁寧なもの。身構えて一度読めば喫驚した。凛が婚約をし、式を挙げると言うのだ。私は世界から疎外されるような淋しさとなるがままの自分に対するやるせなさと少しの安堵を覚えた。その文に返事を送り返すこともなく支度をし、家を出てきて今日に至る。割り切っては見るがどうも落ち着かない、何かを思案しては霧散するの繰り返し。次第には私の心が浮足立って震える始末。
唯幾ら立ち往生しようが人生上手く行きやしない。むしろ機を逃して困憊するのみである。
それにはある程度の割り切りが必要だなんてことはとうに知っている。なので私は考えるより先に足を回した。しかし見るところ先の雨は強いらしい。




