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「国王陛下、本日は我が娘のナナリーの誕生日にお越しくださり誠に感謝しております」
「うむ…我も久しぶりにこの屋敷に来れた事、とても嬉しく思う。変わらぬこの景色に癒されていた」
「御褒めの言葉、我々ラスターナ家の者も誇りに思います」
国王陛下……空耳?であってほしいけれど、フィリアスさんを筆頭にメイド2名も執事もライオネルさんの護衛騎士だろう人も深くお辞儀をしている為、そうなのだろう
冷や汗をかきつつ、横を見上げるとライオネルさんがこちらを見て、ニヤッと笑った
とてもイケおじすぎる、素晴らしい
「フィリアス、こちらのご令嬢を紹介してくれないか?」
「あ!!ナナリー!こちらへおいで」
フィリアスさんはライオネルさんの影で見えなかった私を見つけ、びっくりするとすぐに優しい顔で私を呼んだ
ヨタヨタと近寄りライオネルさんに向き直った所で挨拶できる?と聞かれ、淑女への道としてメイドと沢山練習した挨拶を行う
「こくおうへいか…ごあいさつ遅れました、わたくしナナリー・ルーシェ・ラスターナともうします」
今着ているワンピースの両端を持ち、膝を曲げて挨拶をする
フィリアスさんもライオネルさんも周りもおお…と唸り、3歳にしてはよく出来たのではないかと思う
「ああ、宜しくナナリー。…ふむ、フィリアス、散々自慢する意味を理解したぞ」
「ええ!!そうでしょう!私の天使ですから!!」
(やめてー…)
挨拶を終えた私を抱きかかえ、頬ずりをして褒めてくれるフィリアスさん
国王陛下の前だけど親バカを隠さない方向なのだろうか
周りの人引いてますが…
「予定より早く着いてしまったから此処に来たのだが、久しぶりにチェスでもしながら話をしようではないか」
「ええ、勿論です。それでは応接間にご案内を」
「うむ、ではまた後程会おうナナリー嬢」
「はいっ!」
「ナナリーも可愛くなってね、お披露目が楽しみだよ」
頬をぷにぷにされ、ゆっくりと地面に降ろされる
ベンチに置きっぱなしになっていたアザラシマリアンへ駆け寄り、大人達を見上げる
フィリアスさんが片手を上げ、執事にライオネルさんを応接間へ案内するように指示をすると護衛騎士達も続き、フィリアスさんとライオネルさんはお互いにこやかに会話をしながら庭園を後にした
「ナナリー様、他のメイドへ指示をして参りますのでもう少し此方でお待ちくださいね」
「はーいっ」
メイド2名はライオネルさんへのお茶出し等を指示しに行くのだろう、慌てて庭園を出ていった
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1人になり誰も来ないだろうとようやく落ち着いた頃、マリアンがポンッと元に戻る
〈はーーーっ、びっくりしましたー!!〉
「本当にびっくりした…まさか国王陛下とは…」
精霊であるマリアンがバレてしまうのを恐れ、ビクビクはしていたが優しいイケおじで良かった
ホッと胸を撫で下ろし、マリアンを見ると何やら話している
〈もしもーし、ノアル様、聞こえてますかー???…うーん忙しいのかな…〉
「ノアルに連絡してるの?」
〈ええ、国王にバレなかったと一応報告しようと思って…でも中々連絡つかないんですよね〉
「忙しいんだねー…」
「あれでも一応精霊王ですので!」
あれでも、と言いながら可愛い笑顔で少しディスっているマリアンは通信が繋がらないのか諦めていた
するとガザガサと奥の茂みから音がした
こんな所に動物はいるはずないし、人なら入口から声が聞こえてくるはずだけどそれもない
〈ナ、ナナリー様っ…気をつけて…!〉
「猫ちゃん?それとも鳥かな?ほら、おいでー…」
マリアンに引っ張られながらも音のする茂みに近づき、様子を伺っているとノソっと前足が出てきたのである
大型犬ぐらいの獣の前足と大きな爪に驚き固まっていると、目の前に白銀の毛並みを靡かせた狼が1匹出てきた
〈#☆□●※×~~~!!!!〉
「おっと~…」
マリアンの声にならない叫び声と、大きな狼の凛とした綺麗な顔に驚いてる私だったが、いつの間にか音もなく後ろに来ていた誰かにひょいっと抱き上げられた
「きゃっ…」
「なんでお前、その姿なんだよ…」
〈えっ、えっ……貴方は?!?!?〉
〈この姿の方が…怖がられないかと思ったのだ〉
「逆だろ逆、それ獣だからな一応」
「?????」
しょんぼりしている狼に説教しつつ私を抱き上げているのは、短い茶髪にキリッとした目の中々格好良い少年
少年と狼を交互に見て驚いているマリアン
いや、誰だよと不審な顔で問いかけると、少年は私を地面に降ろしてワンピースを整えてくれたと思ったら目の前に跪いた
「ご紹介遅れ申し訳ない、我が名はアラム・ディストア。アラムと呼んでくれ」
「はあ…」
「こっちの狼はルシファート・エレアだ」
アラムに手招きされて近づいてきた狼は、私の目の前に来てすぐに伏せをして尻尾を大きく振っていた
ルシファート…そう、私は怖がらない寧ろ動物大正解!!と思いながらグッと抱き締めたい気持ちを押さえ込み、宜しくと微笑んでみた
「私は…」
「大丈夫、知ってるよナナリー」
自分の自己紹介をしようと口を開けると、アラムがニヤリと笑って私を知っていると告げてきた
ルシファートも相変わらず尻尾をブンブン振り回してこちらを見ていた
するとマリアンが私の肩に乗っかり、戸惑いながらアラムに話しかけた
〈あ、あの…〉
「ああ!ごめんごめん、すっかり忘れてた。
久しぶりだねマリアン!」
「え?マリアン、知ってる人なの?」
〈知っているも何も、お二人は精霊王様です…!!〉
国王陛下に続き、精霊王2人との出会いです!忙しいマリアンとナナリー!