第2話:5歳児、世界の絶望を知る
※5歳になったリィンが、世界の絶望的なルールに気づき、最初の反撃へ向けて動き出します!
オギャアとこの世界に産み落とされ、出された離乳食(あの灰色の泥飯)を口にした瞬間から、俺はこの国の異常さに気づいていた。
前世の記憶を持つ俺――リィンにとって、あの飯の栄養の低さは異常だった。貴族どもは『F1種』の仕組みを完全に理解した上で、平民が絶対に太れないよう、意図的にあの呪いの奴隷飯を配っているのだ。
だが、赤ん坊の肉体では何もできない。
俺がようやく自由に歩き回り、まともな言葉を話せるようになったのは、5歳の頃だった。
ある日の夕食時。相変わらず机に置かれた灰色の泥飯を前に、俺はあえて無邪気な子供のフリをして、母親に尋ねてみた。
「ねえ、母さん。どうしてこのお野菜、もっとたくさん育てて種を増やさないの? 畑にいっぱい植えたら、みんなでお腹いっぱい食べられるのに」
その瞬間、優しかった母親の顔が、恐怖で引きつった。
隣で泥飯を黙々と口に運んでいた父親の手も、ピタリと止まる。
「リィン、滅多なことを言うんじゃありません……! 種はね、お貴族様が神様から預かっている、神聖なものなの。私たちが勝手に増やそうとしたら、神様のバチが当たって、村ごと干からびちゃうのよ」
母親は怯えたように俺の肩を抱き寄せ、声を潜めた。
「それにね……昔、お隣の村の人がこっそり種を残して植えたことがあるの。でも、出てきたのは毒草みたいな雑草だけで、何も実らなかった。種を独占できるのは、神に愛されて丸々と太ったお貴族様だけ。私たちガリガリの平民は、お恵みを待つしかないの」
――やっぱりな、と俺は冷徹に確信した。
神のバチでも呪いでもない。
貴族どもは平民に『一度しか実らないコピーガード付きの種(F1種)』を配り、その仕組みを奇跡として演出し、従わせている。
平民たちは「自分で植えても育たなかった」というトラウマを植え付けられ、完全に牙を抜かれているのだ。
「わかった。僕、変なこと言ってごめんなさい」
怯える両親を安心させるため、俺は5歳児の笑顔を作って見せた。
だが、その内側では、前世の農学者の魂がふつふつと燃え上がっていた。
(なるほど。お貴族様が技術を隠蔽して支配してるってわけだ)
絶望に沈む両親の後ろ姿を見つめながら、俺は小さく拳を握りしめる。
仕組みが分かれば、あとは戦いようがある。
平民がいくら種を植えても育たないのは、2代目で遺伝子が崩壊する(先祖返りする)からだ。
なら、俺がこの世界でするべき『研究』はただ一つ。
――その遺伝子の崩壊を防ぎ、2代目以降も同じ品質で実り続けるように「固定化」する技術の開発だ。
「見てろよ、お貴族様。そのコピーガード、俺が5歳児の自由研究でぶち壊してやる」
その夜、両親が寝静まったのを見計らい、俺は小さな体にボロ布を纏って、静かに家を抜け出した。
平民の立ち入りが禁じられている、村の裏山。そこが、俺の秘密の『ハッキング研究所』だ。
第2話をお読みいただき、ありがとうございました!
5歳になったリィン、ついに「お貴族様のコピーガード」をぶち壊すためのスタートラインに立ちました!
次回、第3話はいよいよ――【裏山の秘密研究所! 5歳児リィンの『悪魔のハッキング実験』が始まる!】をお送りします。
地道な選別と前世の科学の末、リィンが最初の「超・高カロリー作物」の芽を呼び覚ます、カタルシス満載のシーンをお楽しみに!
―――
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