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第1話:この世界、デブこそが至高にして正義

※デブ=超エリート、ガリ=負け組の世界で、元・農学者が胃袋から世界をひっくり返す内政ファンタジーです!

「体重100キロ未満は人にあらず。150キロを超えて初めて一人前だ」


これが、俺が転生した世界――氷河期が明けたこの国の、絶対的な法律(ステータス)だった。

脂肪の厚さこそが神の恵みであり、エリートの証。丸々と太ったお貴族様たちが、丸太のような腕で国を支配している。


一方、俺はといえば――【あばら骨の浮いた、体重42キロのド底辺】。

鏡に映るのは、干からびたトカゲのようなガリガリの身体だ。


「おい、ガリのリィン! 突っ立ってないでさっさと配給の泥を持って行きな!」


配給所のデブ役人から、あざ笑うように名前を投げつけられる。

前世の記憶を取り戻す前、この世界の親が「せめて細くても生き延びてくれ」と願ってつけた、痩せっぽちを意味する名前。この国では、文字通り『人間のクズ』であることを証明するレッテルだった。


この世界で生き残るためには、食わなければならない。だが、その肝心の「食」こそが、俺たち平民を縛り付ける最大の鎖だった。


ガラガラ、と骨張った手で木箱を開ける。中にあるのは、今日の夕食。……いや、今週分の配給食だ。

「……相変わらず、ただの泥だな、これ」

ドサリと机に置いたのは、灰色のネチャネチャした塊。味付けも何もない、ただ茹でて潰しただけの謎の根菜だ。


飢え死にしないためだけに、毎日これを喉の奥に押し込む。前世で農学者だった俺の頭が、その異常な数値を勝手に弾き出した。

『総カロリー、推定800キロカロリー。脂質、ほぼゼロ』

愕然とした。成人男性が1日に必要な最低限のエネルギーすら下回っている。


「……あいつら、わざとやってやがるな」


そう、気づいてしまった。貴族たちが配るこの配給飯は、平民を飢え死にさせない絶妙なラインを保ちつつ、【絶対に太ることができない(=永遠にスペックが上がらない)】ように計算し尽くされた、呪いの奴隷飯なのだ。


じゃあ、自分で美味いものを育てて、腹いっぱい食えばいい?

それができないから、誰もが絶望している。


この世界で平民に配られる種は、すべて貴族が管理する『神の種』。一度は立派に実るが、その収穫した野菜から取れた種をいくら地面に植えても、二度とまともな芽は出ない。スカスカの不良品しか育たない仕組みになっている。

つまり、平民は毎年、貴族から種を「恵んで」もらうしかない。食糧の蛇口を完全に貴族に握られている以上、平民は逆らうことすら許されないのだ。


「……いや、違うな」


俺は配給の隅に転がっていた、干からびた『神の種』を一つ、つまみ上げた。じっと観察し、指先で潰してみる。


神の呪い? 貴族の血統の奇跡?

笑わせるな。こんなもの、前世の地球では当たり前に使われていた技術――【第一世代(F1種)の交雑操作だ】。


システムは単純だ。違う性質の親を掛け合わせて作られたこの種は、1代目に限り「最高に美味くて立派な作物」が育つ。だが、その作り変えられた遺伝子は一代限りで崩壊する。2代目(その作物から取れた種)を植えても、先祖返りを起こして、不味くて育ちの悪い雑草のようなものしか生まれない。


言わば、貴族が平民に配っているのは、【二度と複製できないコピーガード付きの種】なのだ。だからこそ平民は、毎年貴族の足元にひれ伏して種を乞うしかない。


彼らが「絶対に解けない神の暗号」だと信じ込んでいる、この遺伝の法則。

だが、現代の農学知識と、地道な選別ハッキングの技術をもってすれば――そのコピーガード、いくらでも解除(固定化)して書き換えられる。


「種を独占して、自分たちだけブクブク太るのがお貴族様のルールか」


骨と皮だけの、干からびたトカゲのような俺の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。腹の虫が、グゥと猛烈に鳴り響いた。


「覚えてろよ。そのぬるま湯の脂肪、俺の科学で根底から大炎上させてやる」


平民は飢えてろという世界で、俺たちの「悪魔の高カロリー逆襲劇」が今、静かに幕を開けた。

第1話をお読みいただき、ありがとうございました!


次回、第2話はいよいよ【5歳のリィン、世界の絶望を知る。お貴族様の支配構造を暴け!】が始まります。

自由に動けるようになった5歳のリィンが、身近なところから「世界のイカれたルール」の正体を突き止め、反撃の狼煙を上げる準備を始めます。お楽しみに!


―――

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