表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
揺らぐ世界は誰の為に
PR
52/52

「声」

52話です。

ガーゴイルが咆哮する。



その瞬間だった。



ルクスの視界が揺らぐ。



世界が歪む。



狭間の空気が重くなる。



まるで。



何かが無理やり流れ込んでくるような感覚。



「っ……!」



ルクスが顔をしかめる。



頭が痛い。



胸が苦しい。



理由は分からない。



だが。



聞こえる。



誰かの声が。



『助けて』



小さな声。



子供だった。



知らない顔。



知らない人生。



それなのに。



確かにそこにいた。



『どうして俺だった』



今度は男の声。



『どうして私じゃなかった』



女の声。



『認めて欲しかった』



『見て欲しかった』



『許せない』



『悔しい』



『寂しい』



次々と流れ込む。



無数の感情。



無数の人生。



ルクスは思わず膝をついた。



頭を押さえる。



「ルクス!」



遠くからカインの声が聞こえた。



だが届かない。



声が多すぎる。



聞こえすぎる。



リリスは静かにその姿を見ていた。



「聞こえるでしょう」



優しい声だった。



だが。



どこか悲しかった。



「これが選ばれなかった者達よ」



ガーゴイルが一歩前へ出る。



その身体の中から。



さらに声が溢れる。



『必要ない』



『失敗作』



『不要』



『価値がない』



ルクスの呼吸が乱れる。



どれも。



聞いたことがある言葉だった。



王国。



村人達。



最弱テイマー。



過去の記憶が蘇る。



『お前には才能がない』



『スライムしか使えない』



『役立たず』



拳が震える。



リリスが言う。



「あなたも同じだったでしょう?」



「だから分かるはずよ」



「この子達の苦しみが」



ルクスは顔を上げる。



ガーゴイルを見る。



巨大な身体。



巨大な怨嗟。



だが。



何かがおかしかった。



苦しみは分かる。



怒りも分かる。



悔しさも分かる。



だけど。



混ざっている。



あまりにも。



混ざり過ぎている。



『助けて』



『許さない』



『寂しい』



『殺してやる』



『認めて欲しかった』



全部が同時に聞こえる。



まるで。



誰の声なのか分からなくなるほど。



ルクスは眉をひそめた。



ガーゴイルを見る。



そして。



リリスを見る。



「……なあ」



リリスが首を傾げる。



「何?」



ルクスは少し考える。



そして。



静かに言った。



「これは誰の声なんだ」



リリスの表情が止まる。



ほんの一瞬。



本当に一瞬だけ。



「何を言ってるの?」



ルクスは続ける。



「分からないんだ」



「子供もいる」



「大人もいる」



「人間もいる」



「魔物もいる」



拳を握る。



「でも」



「誰の声なのか分からない」



狭間が静まる。



リリスの瞳が揺れる。



ルクスはガーゴイルを見る。



悲鳴。



怒り。



後悔。



全部ある。



でも。



その奥にいるはずの誰かが見えない。



「これじゃ」



小さく呟く。



「苦しいだけじゃないか」



ガーゴイルが大きく揺れる。



まるで。



その言葉に反応するように。



リリスの顔から笑みが消えた。



「違う」



小さな声。



「違わない」



ルクスは答える。



リリスが一歩前へ出る。



その瞳には怒りがあった。



「この子達は救われたの!」



「忘れられるより!」



「消えるより!」



「ずっとここにいる方が!」



言葉が止まる。



ルクスは何も言わない。



ただ見ていた。



その姿を。



そして。



その奥にある痛みを。



ガーゴイルが再び咆哮する。



狭間全体が震える。



無数の声がルクスへ押し寄せた。



悲鳴。



怒り。



絶望。



その中で。



ルクスは聞いた。



ほんの小さな声を。



『……たすけて』



今までとは違う。



混ざっていない。



誰か一人の声。



ルクスの瞳が見開かれる。



そして。



ガーゴイルへ向かって一歩踏み出した。



その声の主を探すために。

52話でした。一つにして何になるというのだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ