↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
77/163

episode 77

陽の光が差している。

その光がステンドグラスを通して、柔らかな色となり、そしてジェインに降り注いでいた。

(綺麗……)

言葉を失い、すぐに鉛筆を握り直した。さらさらと黒い線を走らせる。ジェインの背が高いのは、否応なしにわかっていたし、横顔ならしっかり盗み見ることができるため、鼻も高いことも知っている。ただ、真正面からはあまりはっきりとは見たことがない。それほど眩しい人だからだ。

青い瞳。緩やかなウェーブのかかった金髪。さらさらと鉛筆を滑らせていく。金髪より少し茶色がかったアーチ状の眉。唇は薄く、いつも微笑みを浮かべている。

完璧な人だ。さらには仕事もできて、CEOという名のトップに君臨している。

(そうなんだ、どこまでも完璧で、人からの信頼も厚いし。本当にすごい人なんだな……)

名古屋支社の社員の間でも、草壁ジェインの話題で持ちきりだ。

「また出張に来てくれないかしら。そしたら今度こそは押しまくるのに!」

主に女性から。イケメンだのセクシーだのハイスペックだのと噂は尽きない。そんな人がなぜ、自分なんかに構うのか?

好きだと言われても、耳を疑ってしまう自分がいる。

現に今も、だ。

あの、ステンドグラスの綺麗な光を浴びれば、自分も少しは綺麗に見えるだろうか。あの、柔らかな光の中なら一緒にいても、遜色なく見えるのだろうか。

もっともっと綺麗な格好をしたら、自信を持って並んで歩けるようになるのかな。

(……そんなわけない)

胸が。

ぎしっと軋んだ気がした。

どれもこれも、自信はこれっぽっちもない。自分はまず、顔を上げて堂々歩くことすら、覚束ないのだから。

本当は、ジェインにプレゼントしてもらったブラウスとスカートを着て、今日のお出かけに臨みたかった。

それなのに。あの日に起こってしまった事件で、すべて台無しになってしまう。今から1週間前のことだった。

ジェインが外せない仕事があると言っていたその日。日曜日の午後。前から機会があったら一度入ってみたいと、憧れていた駅前のオシャレなカフェへと向かった。

ジェインから贈られた洋服が、背中を押してくれた。パステルオレンジとイエローのグラデーション。そのセットアップを着ると、憧れのカフェの中にいてもきっとおかしくないと、思えたからだ。

「いらっしゃいませ〜」

席に案内される。周りは若い女性ばかり。やはりみな、可愛く着飾っている。

「入っちゃった……」

ドキドキしながら、カフェラテとガトーショコラを注文した。今日は自分が主役。そんな風に夢見心地でガトーショコラを完食し、カフェラテを半分ほど飲んでいた時に。

目の前にいつのまにか、和田弥一が立っているのに気がついた。

「えっ! や、やっ……ちゃん」

一瞬。ひゅと息を飲んだ。

「どうして、ここ、」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。