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episode 76

美術館の中に入ると、しんと張り詰めた空気が流れていた。

ステンドグラスで作られた造形、その美しさ、輝き。ランプスタンド、置物、時計などが並べてある。

色とりどりの美しいガラスだ。なんとも言えないレトロな温かみ。どこかノスタルジックな雰囲気すら感じ、ジェインは心が安まるのを感じた。

壱花は、ひとつの作品の前に留まり、スケッチをし始めた。

「なにを描いてるの?」

見ると、ランプスタンド。カリカリと鉛筆でメモ帳に描いている。

「すみません、ジェインさん。少しお時間ください」

その真剣な表情に、胸が鳴った。

「いいよいいよ、思う存分、描いてくれていい。俺もぐるっと見てるから」

美術館内を一周し、そして戻ってきた。まだ壱花は夢中になって描いている。

ジェインは、ステンドグラスでできた大きな窓の下に置いてある長椅子に腰掛け、その複雑で緻密に入り組んだ、最高傑作を望み見た。この美術館の代表作だ。

何年もかけ、何人もの職人が魂を込めて造り上げたもの。その歴史の重厚さに圧倒された。

「すごいな」

視線を感じ、振り返ると側でこちらを見ていた壱花と目が合った。

「綺麗ですね」

「ああ、本当に」

「こうして皆さんに見てもらえるような作品を描きたいな」

そうぽつりと呟いた。独り言だから呼応しなくても良いのだろうが、ジェインは伝えたかった。

「壱花ちゃんならできるよ」

壱花が顔を上げて、ジェインを見る。くしゃと表情を崩す。潤んだ瞳。その瞳で見上げてこられたらもう。

「ありがとうございます。頑張ります」

その真摯な姿勢に、たまらなくなって肩を抱き寄せた。

「キミならできる」

何度も囁いた。

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