episode 39
「皆さん、おはようございます。今日から私たちの仲間になる、イラストレーターの柊 壱花さんだ。柊さんは、フリーランスのイラストレーターで、私も彼女の作品を色々と見させてもらったけど、なかなか良いセンスを持っている。まずは社内向け広報のイラストから頼む予定なので、柿谷さん、うちの広報の方向性を教えてあげてください」
名を呼ばれた中年の女性は、顔を上げてすぐさま返事をした。
「は、はい!」
IT企業SOTの名古屋支社。支社の中での業績は中のなかの下、だ。
その朝礼の挨拶で、ジェインは壱花を紹介した。
「慣れてきたらイラストの依頼をじゃんじゃんお願いしていい。彼女は契約社員としての登用とさせてもらったからね。本人いわく、こき使って良いそうだ。そうだね? 柊さん」
ジェインが目配せをする。壱花はジェインを見、そして周りを見てから、頭を下げて挨拶をした。
「はい! 希望のイメージなど教えていただければ、それに沿ったイラストを描きたいと思います。どれだけでも修正しますから、なんでも仰ってください。あ! と、柊 壱花と言います。よろしくお願いします!」
パチパチとまばらな拍手。その拍手にヤル気は含まれていない。
(んーーー……こういうところなんだよなあ)
名古屋支社の覇気のなさが気になっている。
今回の出張は、そういった支社のぬるい経営に喝を入れ、健全な精神を叩き込むのが目的。
資料は八海が完璧に揃えてくれている。まずはその意識改革を目指したい。
「佐藤さん、森さん、あとはチーム長。午後イチで会議ね。長丁場になるから、昼メシもたらふく食べておいて」
さあ、どれだけのことが自分にできるのか。壱花とも一緒に仕事ができるし、良い所を見せなければと、自分にも喝が入る。
「その後個人面談もやるからー」
ええぇーーとのダルい返事を一蹴。
「今、えぇーって言ったヤツからな!」
あははと力ない声で、みなが笑った。




