episode 20
言葉を選ぼうとしているが、言いたいことはよくわかる。いつも連れてくる女性たちとは、かなりかけ離れた雰囲気の少女を連れてきているのだから、担当の美容師が戸惑っているのは仕方がない。
「えっと、どうしましょうか?」
美容師がブラッシングをしながら、鏡越しにジェインへと視線を流す。
「カットはしなくていいから、可愛くまとめてあげてくれ」
「あ、はい。そういうことね」
これからデートだと判断したのだろう、美容師は、バックヤードからビジューのついたバレッタを持ってきた。
「あ、あの、わ、わたし」
白いケープでマシュマロのような当の壱花は、ジェインと美容師を、さも不安げに見上げている。その視線に笑顔で返す。
「大丈夫だよ、彼に任せて」
ハサミを取り出した美容師は、「ちょっとだけ前髪切ってもいい?」と、覗き込む。そのヒゲ面に圧倒されたのか、観念し、はい、と小さく答えた。
「じゃ、メガネ外してくれる? 安心して。前髪カットだけだから」
すいすいとハサミを入れていく。艶のある黒髪が細かく裁断され、パラパラと落ちていった。こめかみ辺りのサイドの髪を後ろでまとめて、バレッタを添える。
「わお!」
ジェインが感心した声を出した。
「少しおでこが見えるようにして、サイドをまとめただけでこれかあ」
「ほんと可愛いね」
美容師の感嘆も聞けた。やはり想像していた通り。もちろん、ちゃんと髪を切ってもらい、ゆるくパーマをかければ、ゆるふわ子ネコのできあがりだぞ。ジェインは自信に満ちた顔を見せた。今日はここまでだが、見立ては間違っていなかった、と。
「壱花ちゃん、さあ行こう」
取ったメガネを、壱花にそっと掛けた。
「あの、ジェインさん、今度はどこへ?」
「ふふふ、なーいしょ」
楽しげな気持ちを隠しきれなかった。ジェインは美容院のドアを開け、壱花を外へと促すと、そのまま壱花の手を攫った。




