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第25話「私、私の正体を知る。そして全ての竜の力が揃う。」A

暴走した黒い火花に勝利した火花達。火花は、自分の正体を知ることとなる。

 私は倒れる黒い私を抱きかかえた。膝に横たわらせると、すでに身体は灰のようにさらさらと砕けていっている。念のためかミシロちゃん達は武器を構えたままだ。


「死ぬ前に答えて。私について、貴女について。」


「ゲホッ……うふっ。バカな妹を持つと苦労するわぁ。」


「貴女は私のお姉ちゃんなの?」


「そうでもあるしそうでもないわ。私は別の世界からきた貴女よ。」


「どういうこと!?」


「そのまんまよ。私はサンダルフォンという神に選ばれたの。世界を渡り、増えすぎてバランスを崩す命を喰らうために」


 別の神がいるとメタトロンが言っていたことを思い出した。違う世界の私がいるなんて話は聞いていないと文句を言ってやろうと思ったが、指にミャノンがいないためまずはこの「別世界の私」の話を聞くことにした。


「私は違う世界の私が複数いることは知っていたわ。それが順に異世界へ飛ばされることも。」


「なんで私なの?もしかして今まで異世界には……」


「直感はいいのね。貴女は三番目に異世界に飛ばされた東雲火花。私は二番目に貴女とは違う世界から異世界へ飛ばされた東雲火花よ。」


「頭が混乱してきた!つまり別世界の私は何人も違う異世界へ旅立ってるってこと?」


「いい子ね。リコリス飴あげちゃう。それも一人ひとり目的は違うわ。私はさっき言った通り、増えすぎて生態系バランスを崩してしまう生命体を喰らうの。貴女はこの世界の人間を滅ぼすのでしょう?似た者同士だったわね。貴女の記憶があやふやなのは、そっちの神様がなんかしたんでしょう」


「そんな……私…本物の私を倒しちゃったの?ご…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ」


「なに泣いてるのよ……。同じ私でも敵同士よ。私はこの異世界の生命体全てを喰う予定だったの。貴女は正しいことをしたわぁ。あと、他にも多くの私がいるはずだけれど、この異世界にはあと一人だけいるわ。桃色の私には気をつけて。彼女は別格よ」


「私、どうしたらいいのっ?これからなにをすればいいのっ」


「ふーん…答えなんて一つしかないわよ?」


「え……?」


「信じたことを成しなさい。それだけよ。私は…そろそろ貴女の中に……逝くわ」


 満月が昇り、月夜に照らされて別世界の私は息絶えた。灰は私の身体へと入ってくる。その瞬間、膨大な量の力が私の中に溢れてきた。感覚で不死の力も戻っているのがわかる。


「ありがとう、私。信じたことを成す、か。」


「火花様……」


私の正体を知って、みんなも混乱しているようだった。不安な顔が見え、私は微笑みをかけた。


「ミシロちゃん、ロード、ティガ。ちょっとだけ待ってて。私の中に入ってきたクラミツハと話つけてくる。そうしたら、旅の続きだよ」


私は目を瞑り、心の中へと落ちていく。暗い闇の向こう。更に奥深く。


深淵。


そこにはすすり泣く短い黒髪の女の子が膝を抱えて泣いていた。


「こんにちは」


ーヒィィ!?やだ!来ないで!もう貴女には従いたくない!ボクはもう食べたくない!ー


「落ち着いて。君の知ってる黒い私は死んだの。もう大丈夫。」


ー嘘だ。そっくりだもん。ー


「うーん。ほら、言葉使いとか違うでしょ?あ、スヴァローグ、ペルーン、出てきて何とか言ってやってよ」


ー久しぶりだな。お姉様。-


ー相も変わらず泣いているのかー


「えっ、お姉様?」


ーこんな形で具現化しているが、我らが竜の一番上だ。ー


ー我らの力も敵わない。最も強い闇の竜ー


「へぇ~。ほら、妹?さんたちも一緒だよ!」


ーみんなは何をしてたの?これからなにをするの?ー


「これからね、この世界の人間を滅ぼすの。」


ーもう、ボクは嫌だよ。食べたくない。ー


「いいよ。食べたくないなら食べなくても。けれど、今私達の足元にある天使が落っこちたら、全部の命がなくなっちゃう。ここみたいに何にもない世界になっちゃうよ?」


ーそれは……嫌かも……。せっかく紅蓮の騎士さんが救ったのに……。-


「君の力、私に貸してくれるかな?」


私はそっとクラミツハに手を伸ばした。


ーうん。わかった。-


弱弱しく私の手を握り返した途端、私の体の中にクラミツハの力が流れ込んできた。これで全部の竜の力が揃った。戻るため意識を外へ向けると、途絶える瞬間クラミツハが一瞬声をかけてきた。


ーでもね魔族のお姉ちゃん。なんでもう闇の力を持ってるのかなー


「え?」


気が付くと私は天使の背中に戻っていた。


「そういえば私…なんで闇の力なんて持ってたんだろう。いつから……」


私は思い出した。ダークルージュが時たま闇を纏ったり、初めて異世界で暴走した時、闇に飲まれたりしたこともある。黒い私が何かした、というわけではないはず。しかし出ない答えを模索しても意味がない。まずはできることをしなきゃ。


「よし。まずはこの天使をどうにかしなきゃ。みんな集合!」


「火花様、やっと全ての竜の力が集まりましたね!」


「あとはこの天使をぶっ飛ばすわよ!」


「ああ!やろうぜ火花のあねさん!」


「うん!どうやるんだろうね!!さっぱりわかんない!!竜のみんな!」


ー我らが主。この場所ではできない。一旦地上へー


「オッケー。ごめんティガ。乗せてって?」


「え~、三人も乗せるのか。しんどいな。」


「はい、文句言わず飛ぶ!」


火花達はティガにしがみついて遺跡の元へと滑空していく。


「わーっ!たかーーい!海見えるじゃん海!」


「火花様あっちには雪山も見えるのよ!」


「だー!もう静かにしてくれ!」


「あっ、あっちの海!あのでっかい船モビィディックですよ!戻ってきたんです!」


「わーお、マジじゃん!合流できそうだね!」


そのまま無事遺跡へと着地すると、アリアが一人だけ立ち尽くしていた。目が合った瞬間、気持ちが通じ合った。


ここで決着をつけよう。


「おうてめぇ。一人で俺らとやりあおうってか!」


ティガが堂々と進もうとしたところを私は止めた。これは私と彼女の問題なんだ。


「みんな、審判の天使をぶっ壊すのはちょっとだけ待ってて」


「ご主人さまああああ!よくぞご無事でゲハァ!」


突如岩陰から飛び出してきた騎士に蹴りをいれ吹き飛ばした。


「誰あんた。その声もしかしてミャノン?なんで人になってんの?」


「は…はなせばながく……」


「よく分かんないけれど、みんな手出し無用。不死隊も、フェンリルもここでお座りしてて。いい子にしてたら飴ちゃんあげちゃうわぁ。」


「火花様……?」


ミシロは気づいた。火花の目がギラギラと血走り、まるで血に飢えた獣のような目つきをしている。瞳の色も赤黒くうごめいていた。


「アーリア。私を待ってたんでしょ?他の人達は?」


「あぁ、待っていたぞ。部下達は王都へ走らせた。貴様が王都を襲う前に準備を整えさせるためにな。」


「ふーん。まぁそっちはいいや。アリア、決着つけようか。私は手加減しないよ。全部使う。」


「私も全て使おう。さぁ、楽しもうか死人の目。化け物同士の宴だ!」


「来い!アリアァァァア!!」


「ジィィザス!!死人の目えぇえええ!!」


二人の武器がぶつかり合い、凄まじい爆風が起きる。戦いを見つめるミシロは数ヶ月前から疑問に思っていた自分の考えが、核心に変わった。


「火花様…やはり貴女は……人間ではありません。」


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