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第24話「私、舞い戻ります。そして黒い私との最終決戦」B

黒い火花が召喚した猛毒を持つゾンビィに蹂躙されていくミシロ達。


死の直前に彼女が帰還した。

 

 砂漠上空。そこを滑空している影が三つ。火花、フェンリル、ティガであった。なぜ上空にいるのか。


 凄まじい速度でフェンリルは砂漠まで駆け抜けてきたが、ゾンビィの大群によって近づけなかった。そのため火花は


「よし、スヴァローグの炎ゾンビにぶつけて爆発させて、その爆風の勢いで上から突っ込もう!」


「えっ、待ってくれちょっと火花のあねさん!?」


 有無を言わせず火花とフェンリルはゾンビィの大群の上へ飛び出すと、真下に向かって炎を纏った拳を「手加減して」突き出した。


「うぉおおりゃあああああ!!!」


 凄まじい爆発が起き、フェンリルは爆発に乗って空高く吹き飛んで行く。予想以上の勢いに火花とティガはフェンリルの背中で風圧に押しつぶされた。はるか上空まで飛び上がるその威力は凄まじい。


 というわけで二人と一匹は上空高く打ち上げられたのだった。


「うぐぐぐっ!予想以上だったー!」


 私は手加減したはずだった。なのにここまで威力があるなんで知らない。


「あねさんバカだろっ!なぁバカなんだろ!ってうわぁああ」


 ティガは空中でフェンリルの背中から弾き飛ばされ、アマテラスを装備してなんとか滑空していく。


「死ぬかと思ったぞおおお!」


「余裕じゃん。あ、アリアみっけ。」


 真下ではアリアがゾンビィの海へと落ちていき、ミシロ達が噛み殺されそうになっていた。


「ティガ!ミシロ達の方へ行ってーー!スヴァローグ!」


 まずはもはや死ぬ手前のアリアの真横へ炎の渦ごと着地した。着地した途端ゾンビィの大群は燃え、吹き飛んでいく。


「ふぅ、間に合った。」


「し…にんの……め…?」


「こんなところで死なないでよ。貴女は私が殺すんだから」


 私の手の中でアリアは気絶した。近くには黒い私がいる。どうやらこの黒い私が、「私の獲物」を獲ろうとしたらしい。気に食わない。


 ミシロ達の方はティガが一気にゾンビィを蹴散らしていたため安心した。


「おかえり私?死んで強くなれたかしらぁ?」


「わーお、久しぶり。結局誰か知らないけれど今日こそ貴女殺すね。」


「フフッ、三番目のくせによく言うわぁ……。」


「三番目?どういうこと?」


「あらあら、自分の本当の生まれも忘れちゃったなんて、相変わらずのおバカさんね。仕方ないから、[お姉ちゃん]が思い出させてあげるわ!」


 黒い火花が翼を広げた瞬間、悪魔のような角が二本生え、闇が身体からあふれた。火花が剣撃を鎧の籠手で受け止めると、そのまま上空へ引き上げられる。


「うっぐぁ!お、お姉ちゃんっ!?待って、私は一人っ子……あれ?」


 戦いの中、私は自分の記憶がおかしいことに気付いた。


 私……お母さんとお父さんの名前覚えてない……。お母さんですら記憶の中で霧がかかったように曖昧な姿しか思い浮かばない。姉妹きょうだいがいたかどうかもわからない。


「今頃気付いた?ばぁか」


 集中の途切れた火花は茫然とし、黒い火花の大剣をもろに受け続けてしまう。


 下の砂漠ではミャノンがティガに瓦礫から助け出されたところであった。その時、ミャノンの脳内にメタトロンの声が響く。


 ーやっと届いたわね。ミャノン、聞こえるわね?-


「は、ハイッ!メタトロン様!今までなぜ連絡が!?」


 ー説明はあとよ。早く黒い火花を止めて。でないと、火花が壊れてしまうわー


 上空では火花の防戦一方であった。自分の記憶が曖昧なことに意識を持ってかれている火花は攻撃が容易く避けられてしまっている。


「ウフフフッ。ほらほらほら!今度は本当に死んじゃうわよぉ!」


「わ、私はっ……誰なの!?私の何を知ってるの!?」


「お姉ちゃんに勝ったら教えてあげるわぁ!場所はあそこにしましょ?」


 黒い火花の剣撃を防ぐ勢いで無理矢理更に上空へ飛ばされていき、ついに二人は審判の天使の背へと降り立ってしまった。


「はぁ…はぁ…ここ、石みたい…」


 降り立つと、イメージでは人のように柔らかいのかと思っていたが硬い石のような物質で出来ていた。


「懐かしいわぁ。前にもここで戦ったわね。覚えてるかしら?」


 黒い私がそう言った瞬間、私の記憶の中にまるでノイズが掛かったような映像が浮かんだ。身に覚えがないはずなのに、私はこの場所を知っている……みたい。そのノイズの中で私は光り輝く何かと斬り合っていた。


「私……ここで戦ったことがある…?でも、この異世界なんて……知らない…」


 火花は完全に困惑し、集中を乱してしまっていた。


「思い出させてあげるわぁ!」


 大剣が目の前に迫り、斬られる直前。


 時間が止まった。心の中から声が響いてくる。それは私の心を奮い立たせるもの達の声。それが具現化する。


 ー我が主様よ。情けない!我がいなくてはなにもできないのか!ー


 ー我が主。世迷言を言う偽物なんて撃ち抜いてしまえー


「スヴァローグ、ペルーン!私っ、私がなんなのか分からないっ!記憶が、ないの!どうすればいいの……」


 ー迷えばいいー


「え?」


 ー迷うことが進む道だ。主よ。我ら竜は迷ったりはしない。思うように生き、思うように戦ってきた。-


 ーうむ。だから迷いながらも進むがよい。答えなんぞすぐさま出るような主様ではないであろうー


「あ、あははっ!そうだよね!迷っても仕方ない!あいつをぶっ飛ばして答えを見つける!見つからなかったらまた探す!スヴァローグ!」


 消えかかっているスヴァローグがそっと私の右肩に手を置いた。その瞬間、私の心が熱く燃え上がる。


「ペルーン!」


 ペルーンが私の左肩に手を置いた。その瞬間、私の心が鋭く引き締まる。


 もう迷いはない。


「行くよ!!!」


 時が動き出し、火花から炎と雷の爆発が起きた。


「なっ、なに!?」


 爆風に吹き飛ばされながら黒い火花は驚いた。そこにいたのは赤と金の色合いをした鎧を着た火花が立っているのだ。炎と雷が渦巻き、凄まじい力が溢れていた。


「二つの力を合わせた!?貴女…そんなことできたのね……」


「来い!決着をつけてやる!」


次回、黒い火花との最終決戦


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