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第18話「私、ヤギョウとの戦い。そしてロード、試練の時。」B

ウィンディーネの試練を受けるロード、そして火花はアリアと共にヤギョウとの戦闘となる。


聖域の森は火花の圧倒的な炎で燃やし尽くされていき、ヤギョウ達は戦闘どころではなくなってきていた。


「バケモノだぁ!」


「殺せー!」


恐怖による悲鳴と絶叫が森に木霊する。燃える森の中を火花は悠々と歩いてヤギョウ達を殺していく。


「いっちにっちいっぽ〜みっかでさんぽぉ〜さぁんぽ進んで人殺す〜」


奇妙な歌交じりに笑いながら殺すその様はまさに化け物と呼ばれるに違いはなかった。


「貴様ヒバナぁ!なにしてんだテメェェ!」


そこにはヤギョウ数人を捕らえたアリア達神罰隊が炭汚れだらけになって立っていた。


「ん?アリア、そっちは終わったの?んじゃあーさっさとどっかいったら?今回はミシロちゃん達の件で見逃してあげる」


「チッ。今はこのカス達の拷問が先だ。次会った時は必ず貴様らを滅ぼしてやる。覚悟しておけい!」


「はいはい。」


「一つ、ヤギョウを捕らえる事に成功した礼に一つ助言してやる。貴様を殺すために王都から勇者が向かってきているという。私が殺す前にお前は死ぬかもしれないな」


「勇者?へー、そんなのいるんだ?あ、なんかどっかの村の人間が殺す前にそんなこと言ってたかも」


「魔王を打ち倒した勇者だ。一度手合わせしたが、あの勇者は化け物だ。私が殺すか勇者が殺すか、それだけだ」


「言ってろバーカ。」


「「フンッ!!」」


二人は同時に頭突きをかまし、額から血が噴き出した。この頭突きの後まで火花は自分が不死状態では無くなっていることを完全に忘れていた。


「隊長!いい加減おやめください!」


二人共倒れ、アリアは仲間に引きずられて撤退していった。


「いてて…ん?魔王ってことはロードのお父さん…そういえば勇者に倒されたんだっけか。」


その頃ロードの修行は佳境を迎えていた。水中をまるで飛ぶように泳ぎ回る二人は剣を交えていく。二人の力は拮抗し互いにぶつかり合う。そんな時、ロードは違和感を感じ始めていた。


おかしい。先程までは手も足も出なかったほど実力差があった。たしかにあった。しかし今はウィンディーネと互角に渡り合えている。


「ちょっとあんた!手加減してるでしょ!」


「ん?ハハ!手加減してるように感じたのね?なら不正解。私が力を抜いているわけじゃない。貴女が力を増しているのよ」


「私の力が?」


「さぁ、水の力の本質を見抜きなさい」


水の力の本質。ロードの思考には水のイメージが溢れる。穏やかさと激しさ、力と無、変幻自在。


「答えは、出たわ!私は私の直感を信じる!」


ロードは斧から荊を出すと自分自身に纏い周囲の水を取り込んでいく。凄まじい水と魔力の量にロードの身体は悲鳴を上げていく。痛みを堪え水と魔力を身体に取り込んでいく。


「ぐううううっ!」


全てを吸収した瞬間、世界は光に包まれた。


「正解、したようね。さぁ、あとは飲み込めるかどうか」


ウィンディーネが微笑むと同時にロードは水色と翠色の美しい鎧を纏っていた。


「ぷはぁぁあ!?はぁっ!はぁっ!す、凄い力を感じる」


斧も姿を変え、鈍重な鉄の塊ではなく美しい水色と翠色へと進化している。まるで手に吸い付くように、今まで重かった斧が軽く感じられた。


「お見事っ!さぁ、あとは私を切るだけよ」


「力は得たんでしょ!?なぜ貴女を切る必要が!?」


「私は水を司る竜。でももう命が尽きる。だからこの力を貴女に継承させるのよ。私が死ねばこの力もこの世界から消えてしまう」


「わ、わかったわ。」


「さぁ、一思いに」


ウィンディーネは優しく微笑むと両手を広げ、斧を受ける


「フッ!」


ロードの斧がウィンディーネの胴を斬り裂き、水飛沫のように散った彼女はロードの身体に飲み込まれていった。


「大丈夫。私は貴女の心にいるわ。本音を言うと、あの魔族の女には継承させたくなかったの」


「どういうこと?」


「あの魔族の女、火花だったかしら?あれは危険よ。どちらに転ぶかわからない。さぁ、目が覚めたら力を使ってみなさい。」


「ちょっと!詳しく教え」


光が体を包み、眼が覚めるとミシロに膝枕された状態で横になっていた。周りではティガや火花が心配そうに覗き込んでいる。


「あ、目が覚めました?試練、どうでしたか?」


「ふぅ、ただいま。しっかりウィンディーネの水の力を継承したわ。気になることもあったけど。」


起き上がったロードが左手の中指にある水色の指輪を眼前に構えると鎧と斧が装着された。背後に倒れるウィンディーネの亡骸に静かに頭を下げた。


「私の心の中で生きてね」


「おー、馬子にも衣装ってやつだな!いい面構えになったじゃねぇか」


「うっさいわね!」


「ねぇロード、試しに軽く勝負してみようよ」


「えっ!?火花様!?」


「練習練習!どんな力かわからないとさ!」


嬉々として火花はスヴァローグの鎧とダークルージュを装備してしまう。ティガもミシロも止めようとするが、ロードの魔族としての本能か好奇心か、戦いたくなってしまった。


「行くわよ火花様!」


「こい!」


ダークルージュとロードの斧がぶつかり合い衝撃波が走る。


「でやぁ!」


水を纏った斧が振り下ろされ、それを回避すると斧から出た水がまるで刃のように飛び、木を切断した。


「わーお、すごい!」


「まだまだぁ!」


二人は鍔迫り合いになるが、力では圧倒的に火花が強く余裕を持って止められている。


「あ、そういえばその斧って名前あるの?」


「うぐぐぐぐ!名前はないわよ!ただの斧だったんだから!」


話す間も隙なくダークルージュの剣撃と炎が攻め立ててくる。火花が手加減しているとは全く思えない。一旦離れた二人は間合いを取る。


「なら決めよ?」


「ん〜、水……水…。アクアスラッシュ!そうよアクアスラッシュがいいわ!」


「水で切り裂く、アクアスラッシュ。カッコいいなぁ!決まったところで、そりゃ!」


火花が先制で蹴りをかます。ロードは完全に油断しており、ガードが全く出来ていない状態だった。


「わっ!?」


火花の右足がロードの腹部へと直撃した瞬間、足が貫通した。まるで水面を蹴ったかのようになんの衝撃も手応えもなかった。


「なにっ!?」


再び火花の回し蹴りが顔に向かって直撃する、がそれもまた水のように貫通していく。


ロードの身体と鎧は水のような物質で構築されているのだった。


「水の受け流す力、これが…」


「いい力もらったね!じゃあ…これはどうかなぁ…」


「っ!?火花様っ!そこまでに!」


ミシロが叫ぶがすでにダークルージュの刀身に炎が上がっている。ミシロは火花の目の色が変わったことに気づいて止めようとしたのだった。


「ヒッ!?」


「うぉりゃぁぁぁあ!!!」


雄叫びと共に頭から袈裟斬りにする勢いでダークルージュは振り下ろされ、ロードの頭上数センチで止まった。


「は…はひっ…ひん……」


ロードは腰を抜かして気絶し、水色の鎧が解除された。


「お、おいおい火花のあねさん、やりすぎじゃねえか?」


「まぁまぁ、本当に殺す気だったわけじゃないし!無事でよかったじゃない。さて、ロードの力もわかったことだし、次の竜の場所へ行こう!」


歩き始めるその姿にミシロは微かな疑問を感じていた。先程の剣撃は本気で殺しにきていたのではなかったのかという疑問だった。


そんな疑問を感じながらも、歩みを進めるしかなかった。信じると決めた主人のために、そして人間への復讐のために。


次回、最強の勇者と出会うこととなる。

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