第18話「私、ヤギョウとの戦い。そしてロード、試練の時。」A
正気に戻った火花。火花の心にいるスヴァローグとペルーンがウィンディーネと対話の末、ロードが力を受け継ぐことになる。そしてロードはウィンディーネの試練を受けるため精神世界へ落とされた。
突如足元の水に飲まれたロードは気がつくと水の中にいた。どこが上か下かも分からず水面は見えない。
「ここ、どこかしら?水の中にいるのに息ができる…」
ーさぁ、貴女の力を見せてみなさい?ー
そこに現れたのは美しい水色の鎧を着た女性の騎士だった。声から察するにウィンディーネが具現化したのだろう。
「ウィンディーネ、私の力になりなさい!それが火花様のためになるわ!」
ロードが斧を構え一気に距離を詰めた。そのまま斧を振り下ろすが水の抵抗で威力が弱まってしまう。そのため簡単にウィンディーネの水色の剣が受け止めてしまった。
ーいい意気込みね。ほら、まだ力はあるでしょう?ー
「くっ、魔族の荊!」
斧から荊を伸ばしウィンディーネを巻きつけた。
ーはいダメ。ー
突如荊は解け、逆にロードへ弾き返って巻き付けられてしまった。
「な、なんで!?」
ーロード、貴女の種族は私の加護を受けている。私の加護を受けた力を私に向けても何の意味もないわ。水と植物は切り離せない存在。ー
「ぐぁぁあ!?」
荊はロードを締めつける。自分の力で自分が追い詰められるとは思ってもみなかった。そしてその威力はロードが放った時よりも強力になっている。
ー100歳ちょっとの子どもだからと言って手加減しないわ。私の力はただの水ではないわ。ー
突如回りの水がゼリー状になり、体に絡みつくようにくっつき動きが取れなくなる。
「くっ、苦しっ!」
ー水は変幻自在。思うがままに形を変える。それを理解しなさいー
「思うがままっ……わかんないわよ!」
荊で体に張り付く水を弾き飛ばし、再び斧で斬りかかるが軽やかに剣で受け流される。
ー力を流すのもまた水の特徴。ー
「ハァ、ハァ、どうしろっていうのよ」
ロードが精神世界でウィンディーネと戦っている間、外では気を失ったロードの体を抱きかかえてミシロが心配そうに見つめていた。すると森の奥から戦闘音が近づいてくる。
「あ、そうだ火花のあねさん!アリアとかいうやつが黒いローブ達と戦ってるんだ!あねさんの場所を教えてくれたんだが、ローブの奴らの方が人数は多かったぜ。もしかしたら…」
「アリア…。フフ、また会えるんだ!ちょっと行ってくるからここを守ってて!」
「ちょっ!?火花のあねさん!?」
火花はフェンリルを召喚すると、脱兎の如く駆け出して行ってしまった。まるで遊び場へ向かう子どものような目をした火花に、ティガは一瞬恐れてしまった。
「やっぱ、魔族ってなぁ恐ろしいやつだな。」
「あ、火花様ミャノンをつけないで行ってしまいましたね」
「寂しい!!わったしは寂しいです!!」
「「うわうるさ」」
同じ頃、アリア達は黒いローブ達と激戦を繰り広げていた。一時的に巨木の裏に隠れ、体制を整えていた。しかしアリアは回復するとはいえ、他の仲間達は多少負傷しているようだった。
「くっ、ヤギョウめ。ちょこまかと森を逃げ回りやがって!」
「落ち着きなさいレイア。冷静さを欠いてここで奴らヤギョウを逃せばそれこそ無駄足。」
「へー?あいつらがヤギョウか。ブーモウ?とかって場所の人達を魔物にした奴らだよね?」
「あぁ。ん?貴様ヒバナぁ!しれっと参加してるんじゃねぇ!ジィィイザス!」
ノコギリとダークルージュがぶつかり合い鍔迫り合いが起こる。
「待って待って待って!今は貴女と戦いに来たわけじゃない。私のところにミシロ達を案内してくれたらしいね?そのお礼にきたの」
「魔族に礼を言われる筋合いはなぁい!」
「はいはい。まずはあの黒いローブ達を殺さないと。手を貸すって言ってるんだよ。それに、あの魔物を生み出してくれたツケを払ってもらわなきゃ」
火花は以前のブーモウで戦ったキメラを思い出した。胸糞悪いことをしてくれたことを根に持っていたのだ。
「勝手にしろぉ。」
「勝手にするぅ。」
アリアの独特な口調を真似ながら立ち上がった火花は短剣を掲げた。チェルノボウグ騎士隊が現れ、戦闘体勢に入る。
「相変わらず恐ろしい力だ。不死者が400人とは」
「全員黒いローブ達を皆殺しにしろ!誰一人生きて返すな!」
「待て!一人だけ捕虜にしろ!ヤギョウ本部をはかせなければならん!」
「それはそっちでやれば?人間は皆殺しにするから、私は知らないよ。ほら、急がないとウチの精鋭さん達がどんどんぶっ殺してるよ?」
まさにその通りだった。チェルノボウグ騎士隊達は手加減無く、ヤギョウの魔法で撃ち抜かれてもすぐさま再生して襲いかかっている。まるで悪夢のような光景だった。
「クソがぁ!負傷者はそのまま待機!動けるものは私に続けぇ!」
すでに火花はスヴァローグの炎の鎧を纏い、森ごと焼き払う勢いで剣をふるっていた。
「あっはっはっはっ!よくも胸糞悪い生き物作ってくれたねこのクソ人間が!」
「くっ、お礼とか言いつつ私達ごと巻き込むつもりかアホ!」
アリアは内心疑問を感じていた。以前戦った時よりも火花の雰囲気が変わっており、顔つきも性格も違ったものに感じている。しかしそんなことを考えるのをやめ、眼前の敵へと向かって行った。




