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第15話「私、天使との闘い。人の慣れの果てを見届けます。」A

前回のあらすじ。

海上戦となり異種族達と赤の歩兵を倒すが、隊長であるバルトが変な物を飲んだ。

パスタは茹で上がったら油やオリーブオイルをかけるとくっつきにくくなります。

 

 燃える船体の上に落ちたバルトの身体から、まるで羽化する蝶のように6枚の羽根を持つ天使のような者が現れた。炎をものともしないその姿は光り輝き神々しい。しかしその顔は邪悪に満ちたほほ笑みを浮かべ、身体は石膏のような肌をしている。それを見た火花はなぜかはわからないが心の中から敵意と殺意が湧き上がってくる。自分でも不思議なその感情は噴火のように噴き出す。


「殺す!フェンリル!」


 フェンリルに乗って海上へ飛び出した火花は一気に天使に斬りかかった。しかし天使は右手に持つ光の剣でダークルージュを受け止めた。その衝撃はモビィディックにいた船員達がよろけるほどだ。海上で異形な者との闘いが始まった。


「あの人間、バカをやったわ。聖血せいけつを使うなんて。」


「ロードさん、あれを知っているのですか?」


「ミシロは奴隷やってたから知らなくても仕方ないわね。あれは聖女エレナの血よ。」


「それは俺も聞いたことがあるぜ。たしか200年前に突然空から王国に落ちてきた遺体だろ?今でも腐らないで残ってるとかいうカリス教のネタかと思ってたが、マジだったか」


「その血は聖血と呼ばれ、飲むと神の使いである天使になれる。けど天使なんて崇高な者じゃないわ。あれ見てわかる通りただの化け物よ」


 天使はフェンリルに乗る火花を蹴り飛ばし、火花は落下してしまうが海上ぎりぎりでフェンリルが背に乗せた。その機動性や力は先程のバルトの物とは比べ物にならない。


「うっぐ!」


 痛みでひるんだところへ再び天使は高速で剣を振るってくる。


「火花様!火花様は今不死ではありません!そんな化け物からは逃げましょう!」


「逃げない!こいつは絶対に殺さなきゃいけない!」


 ミシロの心配する声も響かないほど火花の心には殺意が燃えている。


「……火花様。ミャノン!クールブラッドを!」


「ファイ!クールブラッデュ!か、噛みました!クールブラッド!」


「うるさいミャノン!静かにして!次言ったら外して海に投げ捨てるからね!」


「アッハイ。すみましぇん」


「ミャノンつっかえな!でも冷静化魔法も効かないなんて…」


「まずは火花のあねさんを援護するんだ!大砲は当てられるとは思えねえ!鉄砲だ!」


「マーメイドさん達は巻き込まれないように船底の入り口から戻ってください!」


 フェンリルが甲板へ着地し、空にいる天使を鎖で巻き付けた。すると天使は悲痛な声を上げて苦しんでいる。


「ギィイイイイ!!」


「そうか!フェンリルの鎖は神を討つ獲物!なら天使にも効果があるってことね!あとで良いお肉食べさせてあげる!」


 火花は鎖の上を走り、一気に天使へと詰め寄った。ダークルージュが心臓へ向かって突き出される。しかし鎖からはみ出た翼で弾かれ海面へと落ちてしまった。


「やば!やっちゃった!?」


「火花様!?」


 ミシロがモビィディックの甲板から海へ飛び込み潜っていく。高所からの着水も上手く行っていた。


「グルルルル!」


 鎖ごとフェンリルは引っ張られてしまい甲板から落ちそうになる。しかしロードが斧から茨を出し、鎖を這って天使を巻き付けた。二人は全力で引っ張り、他の異種族達も不死隊も鎖とロードの手元を引き、全員で拘束する。種族も違い、昔は争ったこともある種族同士、魔と戦ったチェルノボウグ騎士隊達が気持ちを一つにして戦っているのだ。


「任せろ!はぁぁぁ~……セイッ!」


 ティガが足に力を籠めて鎖と茨の上を駆け上がり、天使を蹴り上げた。


「ハッ!セイッ!でりゃあ!」


 連続の強力な蹴りによって天使は鎖と茨から剥がれ更に空高く吹き飛ばされていく。その瞬間、海面が爆発を起こした。


「火花のあねさん!チビシロ!最後は任せた!」


 水中でスヴァローグの炎を爆発させ、その勢いで飛び上がってきた火花とミシロは炎の剣と雷の弓を構えていた。海面へ落下していくティガとハイタッチして二人は飛び上がっていき、もがき苦しむ天使を見据えた。ティガはフェンリルが海面ぎりぎりで助けていた。


「ミシロ!撃て!」


「はい!!」


 ミシロがペルーンの雷矢を放ち胴体を撃ち抜き羽が炭と化す。そこへ火花がダークルージュを天使の頭へ向かって全力で振り下ろした。


「消え去れええええ!!」


 ダークルージュは綺麗に天使を真っ二つにし、瞬時にスヴァローグの炎を纏った剣撃で細切れになるほど切り裂いた。


「か……勝った。勝ったぜ火花のあねさん!」


「やったーー!!火花様の勝ちよ!」


 甲板では全員が喜びの声を上げ、手を握りあう。いがみ合ったこともある存在達は奇妙な友情にも似た感情を感じていた。フェンリルはマーメイド族にもふもふされ、もはやただの犬のように喜んでいた。


 そして火花とミシロは海へ再び落ちた。


「「「「「あっ」」」」」


 次回、ヴェルカンディアスの港町へとたどり着いた火花達は一息つく。そして空にいる審判の女神について新たな情報が舞い込んでくる。


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