第14話「私、戦艦モビィディックを手に入れます。そしてヴェルカンディアスへと」B
前回のあらすじ。
3年前に打ち捨てられた戦艦モビィデックを探索する火花達。しかしモビィディックはまるで昨日にでも捨てられたかのように真新しい物だった。動力室へ向かう火花達に襲い掛かる謎の黒い敵、そして…。
「「「ぎゃあああああああ!?」」」
火花とロードとティガの悲鳴から始まった。動力室の扉を開くと巨大なチェーンソーを振り回す洋風の人形が襲い掛かってきたのだ。
「アソボ、アソボ、ボオオオオオオオオ!!」
「ひいいいいい!?ティガ倒してよ!」
「無理だ!あれは人の呪いで動いているもんだ!魔法しか効かねえ!」
「ロードは!?」
「魔法は吸収できるけど使ったことなんてないわよ!この魔力は浜にいたムカデと一緒よ!ひゃあ!?角こすった!?こすってゃ!?」
「くっ、ダークルージュ!」
剣を抜いてチェーンソーと鍔競り合いになり、剣先から火花が飛び散る。
「う、ぐううううう!でりゃ!」
チェーンソーを押し返し、胴体に蹴りを入れると人形は手足がばらばらになって吹き飛んだ。その隙にチェーンソーに炎を当てて燃やす。しかし人形は身体が磁石のように引き合い回復してしまった。手には燃やしたはずのチェーンソーがまた握られている。
「はぁ、はぁ、不死身?あっ!私今は不死じゃなかった!?やっば!!」
とっさにチェルノボウグ騎士隊を呼び出してしまい、狭い通路がぎゅうぎゅう詰めになってしまった。
「ご主人様、我らいつ何時でも参上仕りますが、場所をお考え下さいっ苦しっ」
「隊長、ご、ごめ。戻ってっ」
瞬時に短剣へと戻し、急いで通路を駆け抜ける。魔法ならミシロの特技。倒せるはずだと考えていた。しかし。
「アソボ?」
「アソボ?」
「アソボ?」
「アンコ?」
「アソボ?」
「アソボ?」
「アソボ?」
先程まで何もいなかったはずの通路に同じようなチェーンソー人形がわらわらと集まっていた。
「なぁぁぁあああ!?」
火花は頭が真っ白になりスヴァローグの炎をまとったダークルージュを全力で振り下ろそうとした途端。
「サンダーブレス!」
地面を這うような雷魔法が人形達を感電させていく。そして人形達は煙をあげ燃えた。
「「「アババババババババ!?」」」
混乱していたため見事に三人とも雷をもらい、敵もろとも感電した。
「あ……やっちゃった。てへっ☆」
火花が目を覚ますと先程の食堂にあったソファの上だった。他二人はまだ眠っている。
「あ、お気づきになられました?」
「うぅ~、何が起きて……。あっ!ミシロちゃん、やったなぁ?」
「す、すみません!お食事の準備ができたので呼びに向かったら恐ろしい敵が見えてとっさに…」
「うっそ。助かったよ、ありがと」
火花はそっとミシロの頭を撫でると、顔を赤らめて嬉しそうにほほ笑んだ。ちょうどロードとティガも目を覚ましたようだった。
「い、つつつ。まだ身体がしびれやがる。」
「ぼぇ~…目が回る~。」
「皆さま申し訳ございません!あの、どうかこの食事でお許しを…」
食堂には大量の豪華な食事が準備されていた。どうやら他の異種族達と協力して作ったようで何人か厨房に見えた。
「うっひょお!チビシロやるじゃねえか!」
「許すには早いわっ!大事なのは味よ!」
二人が手に取ったのはテーブルにあった丸い揚げ物。それは油断して食べるとどうなるか火花もミシロも知っている物だ。
「「いただきます」」
「「んはぁ!?んまいぃぃいい!」」
二人の口から旨み汁が飛び出していった。
「さぁ!甲板の皆さまも来てください!」
「よし、これを食べたら動力室へ再突入!いただきます!んはぁああ!んまぁい!」
食事を済ませた私達は改めて動力室へと向かうことにした。
次回、モビィディックの秘密へと迫る。