第13話「私、私と戦います。そしてロードの力。」B
前回のあらすじ。
マリアブルは暗闇に覆われ、偽物の自分と対峙する。
町の奥ではロードが真っ黒な人型の魔物に囲まれていた。一目で数を数えることをやめてしまうほど敵はおり、ロードを守るようにチェルノボウグ騎士隊達やフェンリルが応戦している。
「くっ、なんなのよもう!こんな奴知らない!」
ロードは足元の影から巨大な柄の長い斧を引っ張り出し、次々と敵をなぎ倒していく。チェルノボウグ騎士隊達も不死とはいえ敵の数に押されていく。フェンリルの鎖は効果があるようで掠っただけで消し去るが、あまりの量にさばき切れていない。敵はまるで意志のない単純な動きでただ単に攻撃をしかけてくる。
「お待たせ!」
火花が着地した途端炎が黒い敵を吹き飛ばした。その残りもミシロがペルーンの雷弓で撃ち抜いていく。
「火花様!無事だったのね!?」
火花の姿を見た不死隊もロードも安心し、不安が吹き飛んだ。
「まずはこいつら片付けるよ!」
「「ォオオオオオオ!」」
そして数分後には黒い敵は跡形もなく片付けられていた。
「ふぅ。不死隊のみんな、フェンリルは一旦戻って。」
「あ、危なかった。火花様やミシロは一体どこに行っていたの?」
「私は火花様を探して町中を駆け巡っていました。そうしたら火花様が道で倒れていて……」
「私は黒い私と戦ったの。偽物がいるみたい。魔法なのかわからないけど、声や姿はまんま私。けれど話し方は全然違った……。それに……」
私はちょっと勇気を振り絞ってダークルージュで左手を少しだけ切ってみる。するといつもは瞬時に回復する傷が治らず、血が滴る。
「不死じゃ、なくなってる。」
「そんな!?一体どんなことをされたのです!?」
「うぇ!?あ、いや、そのっ」
「ちょっと待って。何か聞こえるわよ?」
言い淀んでいると、ロードが静かに聞き耳を立てる。火花とミシロも耳を澄ますと街の奥から悲鳴や怒号が微かに聞こえてくる。
「不死じゃなくなったことはこの際どうでもいい!この町の異種族で生き残りがいるのかも!助けに行くよ!」
「火花様!無茶をなさらずに!?」
海側から聞こえる音を頼りに駆けると、そこは目を塞ぎたくなるような光景だった。浜辺では巨大な船へ乗り込もうとする異種族達が人の数倍はあるムカデのような怪物達に襲われているのだ。その中には待っていたエルフ達の姿もある。しかしすでに浜と海は血で赤く染まり、悲鳴が響き渡っている。辺りには食い散らかされた死体が散乱し、異臭を放っていた。
「あれはっ!ミシロ!ロード!あのムカデを倒そう!」
「はい!」
「お待ちを!わざわざ火花様のお手を煩わせることはないわ。あのムカデはどうやら魔法によって作られた召喚昆虫。なら私の得意分野よっ!」
ロードは斧を高く天へと構えると、手元から棘のような蔦が斧を包む。
「我が血脈の花!魔を吸い滅ぼせ!てやぁ!」
振り下ろされた斧から一気に大量の棘が砂浜を這い回りムカデ達を締め上げていく。
「わーお!やるじゃん!」
「魔族の薔薇っ!初めて見ました。」
棘に取りつかれたムカデは急激に痩せ細り、ついには灰となってしまう。砂浜にいたムカデ達はあっという間にロード一人で消し去ってしまった。
「けふっ、ごちそうさま。なかなか良質な魔力だったわ。召喚者は相当な魔法の使い手ね。」
火花は足元に近寄ってきた棘を軽く蹴ってどかした。
「さすがは最強の魔族の生き残り。魔力が元の存在を吸収するなんて……」
棘は赤い薔薇の花をつけ、薄暗闇に鮮やかに輝いていた。
「まだまだ本調子じゃないわよ。火花様、出過ぎた真似を許して頂戴。これから貴女に従う上で、私の力の一部も見てほしかったの。」
「いい仕事だったよ!犠牲者も極力減らすこともできたし」
すると三人の元へ駆け寄ってくる褐色のエルフが見えた。
「おーい!魔族のあねさん!」
「あー!メイロンドにいたダークライトエルフさん!久しぶりー!」
「借りを返しにきたつもりがまた借りを作っちまったな。助かったよ。お、仲間も増えたのか。ていうか、なんか…前と雰囲気変わったか?」
「そうかな?いろいろ新しい力も仲間もいるからかも」
「いや、そうじゃなくてなんか…まぁいいか」
この時、ミシロだけが目を細めていた。
「火花様、このダークライトエルフは?」
「ここにきているってことは、私の仲間になるってこと。あ、そういえば名前は?」
「そういやまだ挨拶してなかったな。俺はダークライトエルフのティガ。二人は知ってるが、このチビは?」
「チビとはなによ!私はロード!魔族の生き残りよ!仲間になるなら私が先輩なんだから敬いなさい!」
「あーはいはい。とりあえず船のほうに来てくれ。お礼がしたいし、何よりこの暗闇の町から出ようぜ。生き残った仲間達もいることだしな。」
「わかった。これからよろしくね?」
「おう、頼むぜ火花のあねさん!」
「ちょっと無視しないでよ!」
「まぁまぁ怒らないでください」
こうしてエルフ達も合流することができた。しかし、船の中で私はティガから信じられない話を聞くことになった。




