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第11話「私、ヴェルカンディアスの刺客と戦います。そしてミシロ、試練の時」C

前回のあらすじ。

ミシロ、雷の力を受け灰の弓隊を撃破する。

 

 ミシロは戦いが終わると大きく深呼吸をした。すると次に目を開いた瞬間真っ白な空間に一人立っている。


「ここは一体?」


「ここはお前の心の中だ。」


 雷を纏った金色の女騎士がミシロの前に現れた。力強いその眼はミシロの目を見て離さない。その力強さにミシロも目が離せなかった。


「あの、ペルーン様ですよね?私の試練は、どうでしたか?」


「合格だ。我が雷の力を受け継ぐがいい。しかし、今のお前には少し荷が重すぎる。半分はあの魔族の生き残りに与えさせてくれ。」


 そっとミシロの頭を撫でたその顔はほほ笑みを浮かべていた。


「あの、どうして私なのでしょうか。魔力は確かに多いですが、受け継ぐほどの身分では……」


「本来、お前達ライトニングエルフは我が洗礼を受けた存在。潜在的な魔力はもちろんのことだが、雷系の魔法は得意なはずだが?」


「わ、私は生まれた後ずっと奴隷だったので自分が得意な魔法とかは分からなくて……。実験でたくさんの魔法は覚えさせられましたが……」


 ペルーンはミシロの前に跪くと、そっと服をめくった。その幼い身体にはいくつもの傷が残り白い肌に浮彫になっている。


「辛かったろうに。幼いこの身体で。もう身体を気にすることはないようにしておこう」


 そう言うとペルーンはミシロを優しく、まるで触ったら壊れてしまうような物を大切にするように抱きしめるとミシロの身体が光った。


「温かい……」


 ミシロの身体はまるで母に抱きしめられたかのように優しく力強く温かい光に包まれた。


「我はお前の心の中にいる。安心しろ。そして礼を言うぞ?我は一人で死ぬ定めではなくなった」


 目が覚めるとミシロは火花に膝枕の状態で眠っていた。


「あ、起きた?おはよう」


「ひゃあ!?申し訳ございません!」


 飛び起きると洞窟の中にいた。先程の出来事が夢かと思い、服をめくると、今までの傷が綺麗さっぱりとなくなっていたのだ。ミシロの目に涙が溢れた。まだまだ幼いとはいえ一人の女。ずっと気にしていた傷が消え去ったのだ。


「よかったね、傷が消えて。ペルーンさんが言ってたよ。ミシロちゃんがしっかりと大人になったら力を全て譲ってやってほしいって。だから半分個だね。」


 火花は泣きじゃくるミシロを抱きしめた。


「はいっ…!うぐっ、はいっ…!」


「ミシロちゃんはちょっと洞窟で休んでて。外には遅れてきた残党が集まってきているみたい。フェンリル」


 フェンリルはミシロを守るように近くに座り、頭を垂れた。


「火花様!私も一緒に!」


「大丈夫。魔力随分と消費してるんでしょ?なんとなくわかるようになってきた。ここは任せて」


 火花が洞窟の外へ出ると先程の刺客の人数とは比較にならないほどの敵が回りを取り囲んでいた。銀色の短剣を掲げ、火花は叫んだ。


「チェルノボウグ騎士隊、来なさい!」


 その瞬間不死の騎士隊が大量に現れ、逆に敵を取り囲んだ。その恐ろしさに残党はどよめきたった。もはや逃げる場所も隙もない。一瞬で形勢逆転となったのだ。


「行け!」


 チェルノボウグ騎士隊は声をあげ戦いが始まる。不死の騎士と人間では結果は決まり切っており、次々と敵兵は惨殺されていく。槍に突き刺された敵兵達は絶叫とともに絶命していく。


「ペルーンさんの力の半分、どんな感じか使わせてもらうよ。」


 人差し指にはめられた金色の宝石がついた指輪を空に掲げると、金色の鎧が装着された。そして指輪から雷が敵に向かって正確に飛んでいくのだ。その力は人が一瞬で黒焦げになるほどで、回避できない速さで落雷していくのだ。


「ば、化け物だ。あんな魔族今まで一体どこにいたんだ。死人の目、たかが魔族と侮ってはならぬ相手のようです」


 その圧倒的な戦いとも呼べない一方的な残虐に、離れた場所で望遠鏡を通して見ていた観察係は怯えた。観察係の手にある水晶でその姿を見ていたヴェルカンディアス王も唇を噛んだ。


「我が暗殺隊がっ!全滅とは。くそぉぉおおお!」


 手に持ったワイングラスを叩きつけて怒りをあらわにした王は家臣へ向けて叫んだ。


「じいや!勇者を集めろ!その前に冒険者だ!金はいくらでも出す!」


「冒険者達ならすぐに集まるでしょうが、ゆ、勇者様達もでございますか!?今は引退して静かに暮らしているはずですが」


「人間の存亡がかかっているかもしれんと伝えろ!行け!」


「か、かしこまりました。」


「死人の目、ヒバナ。絶対に殺してやる。」


 水晶の向こうでは灰の弓隊の残存兵も全て殺され、川を赤黒く染め上げていた。


「ヴェルカンディアス王、私も撤退してよろしいでしょうか。恐ろしくて気が変になりそうで、す」


 観測係の覗く望遠鏡の先で、火花と目が合った。見えるはずのない距離だが、間違いなく気づいた顔をしている。口が動き話しかけてきた。


「つ」「ぎ」「は」「お」「ま」「え」「だ」


「あひいいいぃぃ!?」


 望遠鏡から目を離した途端、観測係は絶望した。いつの間にかすでに周りは不死隊に囲まれていのだ。


「た、助けてくれ!私はただの観測係だ!戦いには関係ない!」


 そこに不死隊の隊長が乗る馬に同乗してきた火花が降り立った。観測係の手から通信用の水晶を奪い取るとヴェルカンディアス王が見えていた。


「ヴェルカンディアス王じゃん。見えてる?久しぶり!元気してた?」


「ヒバナっ!よくも我が暗殺隊を!」


「元気みたいだねぇ。その暗殺隊は残念ながら全部みんな殺して炭か串焼きにしちゃったよ。」


「お前は必ず殺す。我が兵隊だけでなく冒険者も貴様を狙う。」


「ご親切にどうも。嬉しいから貴方は最後に殺してあげるね。あと、何を送ってきても全部こうしてあげる」


 火花は不死隊の隊長にアイコンタクトをすると、隊長はためらいもなく非戦闘員の観測係の首を跳ね飛ばした。


 そして落ちた首と血の噴き出す胴体をスヴァローグの炎で焼いたのだった。


「くっ、狂ってるぞ貴様!」


「ひどい。名誉棄損。楽に殺さないことにした。あと数か月もかからないでそっちに挨拶にいくから覚悟しててね。あ、自殺もいいよ?これおすすめ。じゃあね!」


 水晶を叩き割り、火花や不死隊は笑った。


「あっはっはっは!見たあの顔!?怒って茹でたてのタコみたいになってた!」


「火花様、さすがの宣戦布告でございます。しかし火花様もお疲れのご様子。我ら、一度剣へと戻ります。」


「はい、お疲れ~」


 火花はチェルノボウグ騎士隊を短剣へ戻すと、洞窟へ戻った。するとミシロは疲れ果てていたのかフェンリルに寄りかかって眠っていた。


「ふふ、ミシロちゃんもお疲れ。さて、私も一息つこうかな」


 次回、最後の魔族の幼女王と出会う。

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