第10話「私、傷心のためちょっと休憩。そして先輩に出会います。」A
前回のあらすじ。
火花意気消沈。
こんにちは。ミシロです。フェンリルを仲間にして町を一つまた滅ぼしてきたところですが、火花様は元気がありません。いつもは人間を殺す時には躊躇なく凛々しく炎をまき散らすのですが、先程の町ではご自身はフェンリルに乗ったままでチェルノボウグ騎士隊に殲滅を任せて空を眺めていました。
「はぁ~……」
どうにか元気にしてあげたい。私は悩む命の恩人にどう役立てばよいのか。123歳の若輩者には一つしか思い浮かびません。
「火花様!おなかすきませんか!?」
「え、どうしたの急に」
「わっ、私はおなかすきました!なので食べ物探してきますね!」
「ちょ、ちょっと!」
私は奴隷の経験で料理係をした経験もあるため、その辺の木の実や肉があればある程度美味しいものは作れる自信があった。そのため燃やした町のそばにある森へ足を運んだ。
「ずいぶん深い森……。あれ?」
しばらく歩いていると良い香りが漂ってきました。匂いを辿ると木製の小屋が見えてきました。
「こんな森の中に…。食べ物屋?」
看板が立っており、どうやら食べ物を売る店のようです。
「こ、こんにちは~?」
「おや、いらっしゃい。次の世界に行く前に最後のお客さんってとこかな。」
中に入ると白と赤のラインが入ったエプロンをした女性が掃除をしていたところでした。
「次の世界?あの、ここは?」
「ここは定食のつぶら屋。私はここの店主で黒部レナ。この世界の腹ペコさん、よかったら食べていかないかい?」
「ていしょく、どんなものがあるんですか?」
「大抵は作れるけど、ちょうどすぐ出せるのはランチセットかな。3分待っててよ」
そして本当に3分後、見たこともない料理が運ばれてきました。それは焼かれた魚と茶色いスープにパン粉のようなものがたくさん器に入ったもの。初めて見た食べ物のはずが、その香りに私のお腹は悲鳴を上げる。
「シャケの塩焼きとごはんとみそ汁。あとはおまけで茶碗蒸しもつけといた。どうぞ」
私はフォークで恐る恐るシャケという魚をほぐした。身は焼き立てであろうぷちぷちという音を立て、鮮やかなオレンジ色でほどよい海の香り。
「はむっ。お、美味しい!」
口に広がる塩気と魚の味は食べたことのない美味しさ。
「ほら、ごはんもお食べ」
「ご、はん…」
白い湯気を上げるパン粉のようなもの。それを塩気の残る口へほおばってみる。
「はふっ!あちゅ!これも美味しい!」
シャケの味とごはんと呼ばれる物が絶妙に合いフォークが止まらない。しばらく夢中で食べ続け、全て食べ終わった時、私のおなかと心は満腹になった。そして私は何をしに森に入ったのか思い出した。
「あっ!?す、すみませんご店主!まだお店は閉めませんよね!?」
「ん?あぁ、たぶんまだこの世界にいると思うよ。」
「ちょっとだけ待っててください!美味しいものを食べさせたい人がいるんです!お代はいったんここに!」
私は店を飛び出し森を駆けた。あんなに美味しいものなら火花様は絶対に元気になるはず。先に食べちゃったけど。
森を抜けると火花様がぼうっと空を眺め心配そうにフェンリルが寄り添っています。
「火花様!すぐについてきてください!ていしょくとか言うお店あります!」
「……はい?」
すぐにお店にお連れすると、火花様はすぐに何かに気づいたようでした。
「いらっしゃい。私は黒部レナ。もしかして貴女…」
「私は東雲火花です。同じ日本人…ですよね?」
「そう。私はこの店と共にいろいろな世界を旅しているの。そこのエルフの子がどうしても貴女を元気づけたいっていうから、迎えに行ってる間にいろいろ準備しておいたよ。さ、たくさん食べて行ってくれ!」




