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早く婚約しろや案件多発…1人ついていけないジニア

 そして満足気な顔をして奇跡を起こした幼く強い少女は、自分を抱え上げたままポカンとしている先輩七賢人の方をキラキラした目で見つめる。


「いや、本当に貴方はいろんなことをやらかしますね…すごい綺麗です」


 褒めているのに何故か下方から目線が感じるため、抱き抱えている幼いバケモノ少女の方をゆっくりと向いた。


 するとすごい覇気でこちらを上目遣いに見つめるライラックがいたのであった。


 その覇気に気圧され何も身動きが取れなくなったシュクルに、ライラックは徐々に涙目になっていく。


 とうとう目が涙でいっぱいになると、それに気づいたシュクルがオロオロしながらも優しく頭を撫でてやると、ライラックの今までが嘘のように涙が引っ込み、嬉しそうにシュクルの手に擦りよった。


 その隙を突いてユニバースもソワソワしながら後ろから頭を撫でようとすると、弾丸がユニバースの手に当たり、手が氷ついてゆく。


「わあっ!?ツッベタいったいーー」


「自業自得だろうが。シュクルとの時間を邪魔するな」


 そう言いながらライラックは氷でできた銃を雪吹雪で浮かせ、ユニバースに狙いを定めている。


「まあまあ、皆様少し落ち着きなさって?私たちもパーティで挨拶しなければなりませんから、今のうちに身嗜みなどを整えなさってはどうかしら」


 優しく微笑んで場を制したのは、ミラクルム王国第二王子ユニバース・ミラクルムの婚約者、ライラックとな軸公爵家の長女、セイラ・アリエス。


 おっとりした性格でありながらも凛としているかっこいい美少女だ。優しく、凛としているセイラにユニバースは溺愛しまくりである。


「せぇーいーらぁ〜。これからいくの面倒くさいから一緒に駆け落ちしないかい?」


「ダメに決まっているでしょう。仮にも第二王子と七賢人の1人という肩書きがあるのですから。…わたくしも婚約者ですから近くにはいます。七賢人ではないですから隣にいることはできませんが」


 少し照れながら言ってくれる可愛い婚約者を抱擁し、やる気を漲らせてユニバースは一足先にセイラと共に先にパーティ会場へと向かった。


「シュクルシュクル。私たちも早く行こう!お菓子とか食べたい」


「ええ?お菓子なら私がいくらでもあげますよ…?飽きちゃいましたか…?」


「ちっ、違う違う!甘いもの、食べたくなっただけだ」


「なんだ、びっくりしたじゃないですか…はい、棒付きのあめちゃんあげます…他にもたくさんお菓子あげます」


 あ、ありがとうと冷や汗をかきながら笑顔でお礼をいい、ライラックは早速飴を口の中に転がす。


 美味しすぎないかこれ…!と1人感動し、飴を口の中で楽しそうに転がしているライラックは、シュクルに優しく抱えられたままパーティ会場へと消えていった。


「なあ…七賢人の中で2番目に強い奴と奇跡を扱う伝説の魔法使いと七賢人の中で最も守りに長けたやつ…この3人がデレデレになるのって、婚約者とかがいるからだよね…うらや…んん゛っ」


 ジニアが羨ましいと言いかけて止めた。そしてそれに続いて七賢人が1人、レイラ・アクエリアスが言う。アクエリアス侯爵家の次女である。


 商売に長けたアクエリアス家は、現在元アクエリアス侯爵家当主、ラパール・アクエリアスの長女、レン・アクエリアスが当主に就任し、新たな美容品の数々を七賢人であるレイラが使うことによって宣伝はばっちり。


 というわけでレイラの協力もあり、アクエリアス侯爵家は潤いに潤いまくっている。


「いやあ、うちは1人でもいいからどうでもいいっちゃ。恋愛ちゅうもんがうちの人生に加わったら嬉しいけど、恋愛っちゅうとドロドロやろ?巻き込まれたくはないわ」


「…ユニバースは婚約者とだからいいかもしれないけど、ライラックとシュクルは別じゃない?こっちから見ると早く婚約結んでよって感じなんだけど」


 レイラは実は生粋の関西弁だ。ご令嬢な割に関西弁なのは彼女が属してる組織が関わってくるだろう。


 レイラの魔術は付与魔術・身体強化魔術だ。


 そこで、少々レイラについての話をしよう。〈マフィアの魔術師〉レイラ・アクエリアスのことについて─


 レイラ・アクエリアスが魔術の際に目覚めたのは、彼女が八歳の時だった。


 レイラが十歳の時、家に魔物が大量に入り込んできてしまう。


 そしてレイラは家族や使用人たちに物置の中に隠され、震えながら大好きな使用人たちや家族を想って泣いていた。


 ─お母様、お父様、お姉様…ご無事かしら…それに


 ──最近は世の中物騒だって聞いたし…ボウソウゾク…だったかしら


 すると大きな悲鳴が次から次へと聞こえてくる。そしてその中に、レイラの姉・レンの悲鳴があったのだ。


「お姉様…っ」


 レイラはすぐに顔が青ざめた。姉に何かがあったと思ったからだ。アクエリアス家はいわば商家だ。商家と言うだけあって倉庫には強い見張り番がいるから、とりあえず商品は無事であろう。けれども侯爵家といえども護衛なんぞたくさん揃えられるものではなく、数少ない優秀な護衛たちは最前線で手一杯だろう。それこそ公爵家の人間に構っている暇はない。


 この時レイラは洗礼前でまだ魔術に覚醒していない。ということは、レイラは戦闘には関われないと言うことだ。その点使用人らは使えなくともレンや父、母は洗礼の儀を受けて少しなら戦闘魔術が使える。だからこそレイラは物置の中に隠されたのだ。


「いや、お姉様、お母様、お父様っ…」


 とうとう悲鳴を聞いて耐えきれなくなったレイラは物置の中に入っていた大量のピンポン玉の入ったカゴを掴み、家族が戦っている場所へと拙い走り方で一生懸命駆けた。


「お姉様!!」


 大声で叫びながら片手で一生懸命ドアを開け放ったレイラは、目の前に広がる光景に絶句した。それは、魔物やグロいものに一切耐性のない八歳が見てしまったのが悪かった。


「おね…さ、ま…?おか、あさま…どうして…」


「レイラ…?逃げなさいっ、ここは危険だ!」


 レイラの目の前に広がっていた惨状は酷い、グロいの一言に尽きた。母は魔力を使い切って真っ青になって倒れ、レイラによくしてくれていたメイドは片目を失い血だらけ。姉のレンは指を数本失った。皆それぞれひどい怪我をしていた。ほんわかして落ち着く空間だった居間は、血で真っ赤に染まり、家具はぐちゃぐちゃで、魔物は涎を垂らしてレンたちを見ている。


 いやだ、いやだいやだいやだ…どうして、どうしてどうしてどうして。


 ─何も悪いことしていないでしょう?どうして神様は…なんで助けてくれな…


 ──誰も悪いことをしていないのに、神様は無慈悲で何も助けてくれないのですか


 自分でどうにかしなくては生きてゆけないのなら。神様が無慈悲で、何も助けてくれないのなら。


 もしもこれが私の最後になるならば、ここで家族みんな死んでしまうならば。


 ──少しくらい、悪あがきしても罰は当たらないでしょう?


 レイラは咄嗟に持ってきていたピンポン球を三つ持って思いっきり振りかぶった。レイラの父の雄叫びのようなレイラを止める声が響いたが、レイラはお構いなしにもう片手に三つピンポン球を持って振りかぶった。


 その時レイラの瞳が爛々と紫色に輝いた。その紫色に輝く瞳が、彼女の魔力の多さと適性を物語っていた。


 レイラは無意識に溢れんばかりの魔力を目覚めさせ、それと同時に彼女の本当の性格を引き出した。


 器用でもあり、慈愛もあり、腹黒い彼女の眠っていた生来の性格を比嘉出したのだ。


 強く握ったピンポン球に、覚醒した魔力と魔術を使って、知らないはずの詠唱をしまくってしまくってしまくって、魔術を付与した。付与した魔術は、飛行魔術、追尾機能魔術、強固魔術、殺傷能力強化の魔術をかけてかけてかけてかけた。数十重ねの付与魔術。付与したピンポン球を姉たちに向かっていく魔獣たちに渾身の力で投げつける。


 付与されたピンポン球は投げられた勢いをそのまま、追尾術式の組み込まれた通り、魔獣たちに一直線に向かってゆく。そして魔物を貫通し、倒し終わったピンポン球たちは次の魔物(獲物)へと向かってゆく。


 次々にピンポン球たちは魔物を倒していったも、魔物数は圧倒的に多く、見渡す限り尽きるめどは立っていなさそうだ。


 幼いながらも頭の回るレイラは、さらにピンポン球を六つ持ち、今度はきちんと自分の実力を知った上で付与を施した。開けた付与魔術は、先ほどと同じく飛行魔術、追尾機能魔術、強固魔術、殺傷能力強化魔術、熱への耐久性強化魔術などだ。


 そしてまた付与魔術を施したピンポン球を魔獣たちに投げつける。


「おっらあああああああ!!!!」


 淑女ならぬ雄叫びをあげながらピンポン球を投げつけ続けるレイラは、その紫の輝く瞳面白いものを思い出して映す。


 そしてあら方ピンポン玉を投げつけ終わり、魔物たちを無差別に攻撃していくピンポン球にいっとき任せ、レイラは家族の元へと走─


 ─らなかった。


 家族の元へと走るのかと思われたが、レイラの目的は家族ではなく、家族の後ろに刺さっていた錆びきった剣だった。よく切れもしない剣をどうするのかと思われたが、体に身体強化魔術を幾重にも重ね、剣を軽々と持ち上げて付与魔術をありったけかけた。


 すると剣の錆は取れ、瞬く間に輝く銀色の美しい剣へとなった。だが付与魔術はそれでは終わらず、さらに精密な付与魔術をかけた。今度は剣の取手の部分の素材と剣身の部分の素材に分かれ、剣身の部分の素材が目まぐるしく姿を変え、Lを左側に倒したかのような筒が現れた。その筒に取手の部分の素材が分割されてそれぞれの場所に張り付き、付与魔術は終わった。=完成したと言うことだ。


「はああできたわ。随分と苦労したけれど」


  そう言って出来上がったのは、この世界にはまだない武器、銃だ。


 なんでこんな物を作れたのかというと、レイラは実は転生者だったのだ。それも、地球の日本でマフィアというヤクザたちをまとめる役割を持っていた。


「さあお前たち。家族を傷つけた報いはしっかりと受けてもらうわ」


 そう言ってレイラは両手で銃を構えた。五感強化の付与魔術を幾重もかけ、紫色の眼を凝らす。


 レイラは一瞬床を見た後、銃の引き金を素早く引いた。


 甲高い銃声が響く。同時に魔物が数匹悲鳴をあげて倒れた。その間にも銃の引き金を何回も引き、次々と魔物を倒していく。ピンポン球に加えて銃まで加わったので魔物はあっという間に減り、残り十匹となった。


 レイラは魔力切れを起こした。魔力切れというのは貧血のような症状で、ひどい時は失神や気絶するのだがレイラはもうすでに意識を失っている。けれども頭の中に流れてきていた魔術式の構築の詠唱をずっと唱え続けている。それにレンたちはもうドン引きしている。


 そしてもう意味がないとわかったのか気を失ったままのレイラはゆっくりと魔獣たちの元へと近づき、殴り倒した。


 ─令嬢が。魔物を。殴り。倒し。た。


 ええーおほん。ナビゲエタア(ナビゲーター)の私の個人的な意見ですが。この世界では普通にご令嬢はのほほんとしてたりお淑やかだったりするはずなのですが、レイラとライラックは異常です。普通のご令嬢が今の所セイラ・アリエス嬢しかいないからわからないかもしれませんが、『レイラとライラックが異常なんです。』ええ。では、水をさして申し訳ありませんでしたあ、それでは続きもナビゲートさせて頂きます。お楽しみくださいな!


 次々と殴り倒していくレイラだったが、流石に最後の一匹あたりで限界が来たのか、足の力が抜けてしまう。


 足から崩れ落ちて失神したかと思えば、レイラに飛びかかろうとした魔物が吹っ飛んだ。


 何事かとレンたちが目をむけた先にいたのはスーツを着て、真っ黒なサングラスを掛けていて、タトゥがたくさん入っている男が、足を振り上げていた。


「あ、ああっ」


 レンは言葉にならない声をあげて泣いてうずくまってしまった。


「ありゃ?この子手が腫れとるやないか。それに…魔力欠乏を起こしとるな…一旦組に戻って手当てしてあげなあかんなあ…お前らはこの屋敷の人ら手当てしとけ。ちゃあんと優しくせなあかんぞ?」


「「「へいっ、お頭っ!」」」


 元気の良い返事と共に、後ろにひかえていたガタイのいい男たちが可愛らしい救急箱を大量に取り出してレイたちの怪我の手当てをしていった。


「さてと。この強いお嬢さんを一旦持ち帰ろうかね」


 そう言って傷だらけのレイラを軽々と抱え上げた男は来ていた上着を脱いでレイラを包んだ。


「ほんならちょっくら娘さん借りるわアクエリアス侯爵」


 アクエリアス侯爵はポカンと口を半開きにして虚な瞳でレイラを見ていた。


 言うだけ言ってレイラを持ち帰って治療した男は、レイラに随分と懐かれ、付与魔術や武術、護身術を教えた。


 結果レイラが懐きまくって助けてくれた男たちの組が実家でアクエリアス家が第二の実家みたいになってすっかり関西弁が定着した。



めでたし めでたし


 そして話は冒頭に戻り…


「そうだねえ、僕も早くくっつけばいいのにとは思っとるよ〜…まあ、2人ともそういう感情なさそうだし、歳の差がだいぶキツいと思ってるんでないかねえ」


「まあそれが一番あるやろなあ……ってはあ!?『キキョウ』!?」


 耳に軽やかな間伸びした言葉が響く。その言葉にいち早く反応したのはレイラだった。


「やあ」


「やあ、じゃあないやろが!組はどないしたんやっ」


「ああ、言うてなこうたっけ?組レイラに譲ろう思うとるって」


「言われてへんわ!組譲るとかめっちゃ重要やないの!!そうゆうのは早う教えてくれへんと…!そもそも私は組継げへんて…七賢人になってしもたからには公務が忙しいんやて…付与魔術の最高峰やから仕事が多いんやよ…キキョウがこのまま組回してくれはればええやないの」


 先ほどからレイラと話しているこ黒いサングラスにスーツの男は、『キキョウ』だ。


 キキョウはアクエリアス侯爵家の隣の小さな土地を納めている『ヤクザの親玉』だ。けれども悪いヤクザの親玉ではなく、領民のために金を使い、経済を回し、取引をして、取り締まりをきちんとしている。


 キキョウの治める領地は高位付与魔術師を鍛えるのが得意とかで繁栄している。何より付与するものも豊富なのだから高位付与魔術師を多く輩出している。


 さらには付与魔術の頂点、七賢人であるレイラの師匠がその領地の親玉やってるのだから繁栄しないわけがない。


 というのが、キキョウの身元である。


 レイラとキキョウはとても仲がいい。舞踏会にもきっと共に出席するのだろう。


 こちらもさっさと婚約しろや案件なのだが、下手なことを言ったら2人に殺されるので、誰もそんなことは口走らない。


 ライラックの周りは賑やかである。日常は続く。

次回は舞踏会での話を書くつもりです!

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