124、ノーマルエンド※胸糞注意、前書きあり
※今回は少しゲスい感じのお話になります。
一話で読み切れるようにしましたので、苦手な方はご注意ください。
また、次回更新からでも話が繋がるようにしますので、この話は飛ばしていただいても大丈夫です。
これは現実なのだろうか。
蝋燭の炎が微かに揺れ、湿った地下室は独特な臭いが充満していた。
ベアトリーチェは冷たい床の上に体を横たえ、尋問という名の拷問に耐えた体を休めていた。
コツコツコツ、と靴音に気付き、ベアトリーチェは恐る恐る目の前に立つ男を見上げた。
酷い尋問に耐え抜いた体は、もう指一本動かすことすら思い通りにならない。
『お可哀想に……ベアトリーチェ嬢。かなり酷い目に遭われてしまいましたね……』
頭上からの声は王太子の側近として聞き慣れていた、アルロの優しく甘い声だった。
アルロはベアトリーチェの前にしゃがみ込むと、汚れてしまっている頬を優しく指先でなぞる。数日ぶりの優しい言葉と手に絆され、ベアトリーチェの瞳から涙が零れ落ちた。
『聖女アンナを傷つけようとした罪は重い……。でも、私はベアトリーチェ嬢、あなたをここで死なせたくない。牢番たちを買収しましたから、ここから逃げるには今しかありません。私を信じてくれますね?』
『あ、ある、ろ……っ、ありがと、ござ……ます……』
掠れた声で感謝を告げるベアトリーチェを、アルロは優しく抱き上げた。
アルロの顔には、過去に虐げられてできた傷跡で覆われている。誰が見ても怖がるその顔を、ベアトリーチェは今まで怖がったことはない。
『あなただけでした……私の存在を無視したのはね』
『……』
この場から逃げられることに安堵し、これで助かると気が緩む。
公爵家は没落しても、命さえあれば巻き返せると安堵して眠りについてしまった、ベアトリーチェ。
それが最後の外の風景になることなど、思いもしなかっただろう。
が連れて行かれたのは、王都の端に位置する検問所の近くにある薄暗い商業地だった。
『新しい女か?』
『あぁ。お前たちが一生触れることも許されない女だよ』
『ふぅん……そりゃあ、いい。教育のし甲斐があるな』
商業地の中にある娼館を取り仕切っている男と数度言葉を交わし、アルロは娼館の一室へと入っていく。
ギィと建付けの悪い音を出して扉が閉まり、鍵が掛けられる音が部屋に響く。
その音でベアトリーチェは、ハッと目を覚ました。
『……ある、ろ? ここは……』
狭い部屋の大半を占める酷く汚いベッド。
困惑し、身震いするベアトリーチェを、まるで好いた者を優しく組み敷くようにアルロはベッドの上へ下ろした。
『言っただろう? 死なせたくないって。それは簡単に死なせはしないっことで、助けてやるって意味じゃない』
『な、にを……いや、いやよ! だ、れ……だれかっ、離して……っ!』
立ち上がることもできず、尻と足だけで後ろに下がりベッドから逃げ出そうとするベアトリーチェの傷付いた手首を強く掴み、アルロはベッドの中央へと突き飛ばした。
『ぎぁっ』
『うるせぇ女だな。大人しくしてろ』
アルロはそれだけ言うと、ベアトリーチェを睨み付けた。
懐から小瓶を取り出すと、恍惚とした表情を浮かべ、空いた手でベアトリーチェの首を掴む。
『……ぅぐっ』
『アンナを苦しめた罪の償いが、爵位剥奪、国外追放だけだと? この国はとんだ馬鹿ばかりだな。お前のような高貴な令嬢様は、プライドが高い分辱められることが嫌なんだろう? だから、尋問と称して牢番たちに犯されて……王家や名門貴族に嫁ぐはずだった体を弄ばれたのさ。くく、尊いお方を相手にするよりも、お前はこういうところでくっせぇ男を相手にするのがお似合いだ』
ぱしぱし、と力の入らない手で抵抗するベアトリーチェを、アルロは目を細め見つめる。
見せびらかすようにアルロはベアトリーチェの目の前で小瓶を揺らした。
薄気味悪さと苦しさ、そして恐怖にベアトリーチェの目からは涙が零れ落ちる。
『大人しくこれを飲むんだよ。頭がとろとろになって、令嬢なんてやってたのが馬鹿みたいに思えるぜ? まあ、ただし、その代償が常に男の相手をしていないと、頭がイカれちまうことなんだけどな』
『んぐ、ぅう……っ!? いぁ、いやぁあ! 飲みだぐ……なぁ……ぃあぁあっ』
細い首から手を離し、アルロは無理矢理顎を掴んで抉じ開けようとするが、なかなかベアトリーチェは口を開かない。それに焦れたようにアルロはベアトリーチェを抱きしめるような形に抱き起こすと、傷つけられた背中の傷に指を押し付けた。
『いぅっ……ぎぁっ! んぐっぅぅううぇ』
声を上げた瞬間、小瓶が唇を閉じられないように押し込まれ、トロリとした液体が喉の奥へと流し込まれた。
ベアトリーチェが激しく咽せ返る中、アルロはその様子をうっとりと見つめた。
嫌いな女が苦しむ姿は、何よりも興奮と快感を覚えさせてくれる。
『あぁ、良い表情だ。俺のこの醜い顔を見ても無視する女なんて……お前ぐらいだったよ……。俺の存在すらなかったことにするなんて……これだから高貴な女は嫌いなんだ……』
アルロはブツブツと独り言ちながら、ベアトリーチェの汚れた衣服を一気に引き裂いた。
ドレスは尋問される際に奪われ、牢屋に入れられた時に、擦り切れた布切れのような服を纏わされただけだった。
そのため、服は簡単に引き千切られ、裸体を晒すこととなった。
『ぇ……ぁぇ……』
布が裂ける音が部屋に響き、内出血や傷つけられた白い肌が薄暗い室内に露わになる。
『ハハハ、良い体をしてる。これならここの客たちも大喜びだ。ここは王都から出て行く検問所の近くだから、安い金でさっさと済ませたい男が多く来るだろうな。王都を出ちまえば、次の大きな町までは三日はかかるから、毎日、何十人もの男たちにその体をめちゃくちゃにされるぞ』
『ぃゃ……ゃら……っあぁ……かへる……あた……おかし、ぃ……』
『あぁ、そうだな……他にも王都に入ってきた男たちも、かなり溜まった状態でここの商業地へやってくるから……出ていく男たちより、酷く乱暴に欲を吐き出されるだろうなあ。貪ってもらえよ、こんないいからだなんだからさ』
『ゃ……ゃぁっ……!』
『いや? おいおい、こんなにいい体をしていても、王太子殿下には指一本触れられなかったんだろう? 尋問した兵士たちもあの体が、手付かずだったと喜んでたぞ?』
ぐちゃぐちゃになる頭で、ベアトリーチェは叫びたかった。
王家に嫁ぐ際の初夜での儀式。
それはただの快楽のための営みではない。王族の子を孕む前に不義がなかったか、そして別の種を宿していないかの確認がある。近くで見守られながら、初夜に挑む屈辱。
貴族の女性はそれを守る。
ただし、そうでなかった場合の手立てもあるが、ベアトリーチェは嫁ぐために純潔を確かに守り切ったのだ。
処女性を大事にしている国のため、シーツに血が付くのを翌朝確認される。もちろん、出ない者もいるが、それは不義があったなどではなく、体の成長のことなどもある。
そんな中、ベアトリーチェは無理に体を開かされ、出血した。
それを見て、兵士たちは囃し立てた。
恥ずかしいとか、屈辱などでは言い表せないほどの絶望と恐怖をベアトリーチェは感じた。
『公爵令嬢が泣き叫びながら、震える姿が最高に良かったってさ。それに、次第に感じてたそうじゃねぇか。快楽に溺れていく姿を想像するだけで、たっちまいそうだ……。はは、先っぽが触ってほしそうに立ち上がってるじゃねぇか』
見下ろした先にあった胸の先端を見て、アルロは歪んだ笑みを浮かべた。
『ぁ、あ……あつ、い……あちゅ……あへ、ま、おかし……な、る……』
薬が体中を駆け巡り、ベアトリーチェの視界がぐにゃりと歪む。
恐怖や拒絶の感情が、体を触れてほしいという欲情に書き換えられていく。
自身の意志とは裏腹に、体は敏感になり、熱い吐息が溢れ出始める。胸の先端も、下腹部も見られるだけでじわじわと熱が這い上がってくる。
体から離れたアルロがニヤニヤと視線だけを寄越す。
その存在すらも忘れたようにベアトリーチェはおもむろに指を下へと伸ばした。
『そう、その調子だ。王太子殿下の婚約者で、名門公爵家の令嬢だった女が、自分自身の手で慰めようとしているなんて……いい光景だな。ほら、自分でやっちまえよ。溺れろよ、快楽に。それをしたが最後、お前の頭は最高に飛んじまって、ここから逃げ出すことも、まともに喋ることもできなくなるぞ? お、いいのか? 本当にやっちまうのか? あぁ……もう少しで指先が触れちまいそうだ……! 狂えよ、ほら! 触れって! 令嬢がそんなに足をおっぴろげちまっていいのか!? アハハハハッ……ピクピクしてんぞー、濡れてんぞー……さっさと触っちまえよ……なあ?』
アルロはベアトリーチェの髪を掴み、涎を垂らしながら会話もまともにできないその顔を見下ろした。
『ゔぅ……へぁ……ぁあ……』
ぬち、と水音が響く。
その瞬間、この部屋に高貴な令嬢はいなくなった。
『一人で勝手にイッてろ』
ベッドに向かって落とすように髪を離すと、自身の衣服を整え立ち上がる。
ドアへ向かうアルロには、喘ぎ声にも似た意味をなさない言葉を喚くベアトリーチェのことなど頭にはない。
ただ、脳裏にあるのは清純で可憐なアンナの笑顔だけ。
『これでアンナを害するゴミは消えた。俺はアンナを幸せにするためなら、いくらでも汚れてみせる。アンナ、愛してる。何も知らないまま、これからは誰にも虐げられることなく、美しいものを見て、笑ってくれ』
薬に侵され、快楽の波に襲われながら喚きながら身悶えするベアトリーチェを背に、アルロは部屋の扉の鍵は閉めなかった。
何事もなかったように部屋を後にし、最初に話した男に鍵を渡した。
『鍵は閉めていない。もし逃げ出そうとしたら、仕置きでも何でもしてくれ』
『おいおい、もう薬……使っちまったのか?』
『ああ。何か問題でも?』
『い、や……別にないが……』
『最高の女だよ、あれは。今頃自分でヤッてるかもしれないから様子見がてら、部屋にでも行ってみろよ』
この日、ベアトリーチェが牢屋から消えたことは秘密裏に処理された。
婚約者であったディエゴは、元々ベアトリーチェを忌々しく思っていたため、問題にも上がらなかった。誰がベアトリーチェの存在を消したのかを知っていたからだ。
そして、聖女アンナは王太子ディエゴの妻となった。
アンナは愛するアルロに見守られ、幸せな物語を描いていくことになる。
その実、ベアトリーチェは二度と覚めることのない、地獄の夢を見続けることとなった。




