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おはよう  作者: 澄篠夜凪


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3/4

申し訳ございません

「申し訳ございません!」


「いえいえ、お気になさらずに」


笑顔で答える。

こうして僕の幸運ははじまった。



今一つ冴えなかった打ち合わせを終え、少しどんよりした気分でハンバーガーショップで食事をしながらパソコンで議事録の整理をしている時だった。

ぎゃあぎゃあと大きな声で話ながらたむろしている高校生グループ。


うるさいと言えばうるさいんだけど、楽しそうに話をしている様子はちょっとほほえましい。不調の僕には元気を分けてもらえるようでありがたかった。


食事を終えたのか、手持無沙汰な彼らのうち一人がストローの包み紙をストローにはめてふっと吹き、向かいの子に紙をぶつけて遊びはじめた。

ガーリックバター(なかなかおいしい)を食べたあとのようで、当てられた包み紙よりニンニクのにおいのついた息が臭いと大きな声で文句を言う。すごく楽しそうにしていて、僕だけじゃなくほかの客もちょっと楽しそうだ。そうこうすると制服の高校生たちはガタガタと音を立てて片付けをして帰っていった。


すると斜め向かいの女性――僕よりちょっと年下に見える、がストローの紙を半分に切って、飲んでいた飲み物から取り出したストローにゆっくりとかぶせると、トレイに向けて「ふっ」と吹いた。楽しそうだったもんね、ほほえましい気持ちになる。なんだか元気が出てきた。


少し気分よく議事録をパソコンでまとめていると、液晶画面のうえにぺとっとストローの包み紙が着陸した。


「申し訳ございません!」


高校生の真似をして包み紙を飛ばしたであろう顔を真っ赤にした女性が、下を向いて包み紙をひったくるようにとっていった。ずいぶん強く吹いたな。楽しくなっちゃったのかも。


ばだばたと鞄を向かいの椅子に置き、ティッシュを取り出すとPCを拭いてくれた。


「会社備品なので多少汚れても大丈夫ですよ」


ずいぶん焦っている様子だけど、高校生の作った和やかな空気のせいか周りの客たちもほほえましくみている。

女性はさっと会釈すると後ろ向きに数歩下がってそのままトレイを片付けて帰っていった。


鞄を向かいの椅子に置いたまま。


大急ぎでPCをたたんで片付けをして鞄を持ってあとを追う。

店を出てどっちにいったかはわからないけど、ひとまず大通りの方へ走っていくと、ちょっと猫背気味に下を向いて速足で歩いている先ほどの女性を見つけた。


追いついて鞄を渡すとまた下を向いたまま

「申し訳ございません!」


と言うので、ぜいぜいと息を切らしながら

「いえいえ、お気になさらずに」


と言えたんだか言えないんだかわからない返事をした。

一度深呼吸して会社に戻る。と、後ろから先ほどの女性が走って声をかけてきた。少し押し問答があったが結局彼女の名刺の裏に電話番号をメモした。


これがきっかけで、このおっちょこちょいですごく変わり者の恋人ができた。

時々ひどく混乱させられるけど、僕にはすっごく可愛い彼女だ。


ありがとう、うるさかった高校生たち。


最後まで読んでくれてありがとう。

起伏が少ない日常シーンの描写が苦手なので練習に書いてみました。


評価やブックマーク等していただけるととっても嬉しいです。


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