「サムスアップorサムスダウン」 その1
「まず一つ聞く」
と、仁はロストに言う
「大人しく元の世界に変える気は?」
「無いね」
ロストは即答で、肩を竦めながら言う
今居るのは仁の館の庭 何で此処に、とも思うし、勿論此処だろう、とも思う
そんな場所で仁とロストはお互いに見つめあっている
少し遠くに心配そうな顔の刹那、無表情に見えるシザース、館の窓からは沢山の叛軍人形が顔を出しており、そしてオレはロストの少し後ろに居る
仁とロストの決闘が始まる
何でこんなことに・・ とこの無益な決闘にどうしても歯噛みをせざるを得ない
「そうか、なら」
と、脈拍も無く唐突に、
「なら死ね」
いつの間にか剣を持った仁はオレに切り掛る
・・・・・・・・え?
「させないよ」
カキン、 と言う音が何故か後ろからした
振り返ってみれば仁の剣をロストは黒い刃で受け止めていた
何故後ろに? と思ってからふと気づく、よく見るとオレとロストの立ち位置が変わっている事に
「場所移動、でいいのかな? 君の能力は偽造だったはずなんだけど」
「いや、初めからこの場所に居たよ? 場所移動じゃなくて場所誤認」
「・・・・君は本当に相手をコントロールする戦い方が好きだね 毎回ゲームでそんな立ち回りをしてるよね」
「そっちこそ 一撃必殺先制攻撃で倒そうとするの止めてくれない・・・・・ っと、」
お互いに憎まれ口を叩きながら、前の時と同じようにつばぜり合いの後お互いに距離を取って言う
「王さまは殺させないよ」
「君が折れてくれたら殺さずに済むんですがね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って!!
「い、いや待て!! 何でオレを殺す殺さないの話しになってるんだ!?」
これはロストと仁の決闘だろ!! 何でオレまで巻き込まれて、てか、何でオレが中心になってるんだ!?
「あれ、話してないんだ?」
「・・・・・・・どうせ、仁にも同じ話をしないといけないと思ってね」
「は・・・・・? 何の話しだ?」
一体、二人は何の話をしているんだ
「そうですか、ではそうお話しを聞かせて」
その言葉を言い終わるより早く
「貰う気はねぇよ」
仁はロストに切り掛っていた 仁の剣はもう既にロストの目の前
「ロ 」
ロスト! と、オレが叫ぶよりも早く 仁の剣はロストに届き、そして、
「ま、そう来るよね」
そのまま剣はロストをすり抜け、そのすきに逆にロストの刃が仁を切り裂く
「あらら、先制ダメージはオレが先か ま、予想通りだが」
「うん、予想通り、だね」
肩を切られ、半分右手がずり落ちているのに笑う仁と、仁から流れる血を鬱陶しそうに見つめるロスト
「ところど、その技は?」
「『影師の奇術』 とでも呼ぼうかな? 内容は企業秘密で」
「成る程、自分をを偽造する そこに自分が居ない扱いをする 中々不思議ですね、言葉にすれば成る程と思いますが、それ、実際に実行してみると思うと中々思い浮かべられる技じゃ無いもんだよな?」
「行き成り仕組みに気付くんだ・・・・ 生憎、本を読むのが大好きなので 実際にやってみたいって思って昔からイメトレだけはしてたから案外出来る物だったよ」
「殊勝な訓練を積んでいたと、流石ですね」
「そりゃどうも」
・・・・・もう、どこから突っ込めばいいかも分からない
いつの間にか切り口が引っ付いていて楽しそに笑う仁と、全く楽しそうじゃないロスト
その二人が物騒な物、物騒な事をしながらゲームでもしているかのように会話する
「全く、」
と、仁がひとしきり笑ったところで、
「楽しくねぇなぁ・・・」
唐突に不陰気を変え不機嫌にそう言い放つ仁
「そうだね」
逆に不陰気を変え楽しそう、ではないが、何処か苦笑いを浮かべるロスト
「どうなってんだ・・・・・・・・・・」
もう訳が分からずそう呟いてしまう
さっきから二人は辻褄の合わない行動ばかりをとっている
そんな行動をとる理由など何処にあった?
この二週間で、何が有ったっていうのだ・・・・・!
「・・・・・・・はぁ、無知って本当に素晴らしいですね」
またいつの間にか、目の前で剣を振るう仁
それを刃で受け止めるロスト
「否定は、しないけど ねっ!」
そう言いながら仁を吹き飛ばすロスト いや、仁が自ら吹き飛ばされた と言って良いだろうか
それくらい派手に、それでいて特に何ともなく音も無く仁は着地する
「この無 意味な戦いの原因はレイの願いなのにな」
「・・・・・・・・・・は?」
オレが、原因? 唐突な言葉にオレはたちろぐ
「それよりも、もう言葉隠しはさせねぇからな、ロスト」
「ちっ」
悔しそうに舌打ちをするロスト
「そ、そんなことより!」
オレはロストに、いや仁に、はたまたどっちもに尋ねる
「オレが原因ってどうゆうことだよ!!」
オレが何時、何処で、何をしたっていうんだ!!
「・・・・してるんだよ 今、此処で、反発を」
そう答えたのは、ロストだった
「え・・・・・・ どう、ゆう・・・・・・?」
「まずおかしいと思いませんか? 刹那、シザース?」
「・・・・・えっ、こっち?」
唐突に仁に名指しされて戸惑う刹那と、
「・そうゆう事か」
舌打ちでもしそうな表情を作って吐き捨てるシザース
「レイ、お前俺たちを反発、俺たちを否定してるな」
「は、え、へ? ひ、否定??」
刹那は戸惑ったように言う
「それって、レイが異端の者たちの存在を否定、嫌がってるってこと・・・・?」
「そんなこと!」
思わず声を荒げて言う そんなこと思って何かいない!
それだと仁、刹那、シザースに深月、それにロストまでもが
オレはみんなを嫌っていたって事になる
そんなことは絶対にない!!
そう思っていたが、シザースから出た言葉は全く別の物だった
「逆だ レイが、ではなく異端の者が、つまり|俺らがレイの存在を否定、嫌がってたんだよ」
「あ・・・・・・・・・・・・」
その言葉で何か思い出したように呟く刹那
「えと、どうゆ事だ?」
「・・・・・王さまは何か何時も置いてけぼり、って言うか、何も知らないって感じだね」
困ったようにため息を付いてロストは言う
「ねぇ王さま、異端郷での人間のイメージって、どうなってるか知ってる?」
「え? それは別に・・・・・・・ 人間が珍しいって、それだけだろ?」
あの街には様々な種族が居たんだ、別に珍しいだけで何とも・・・・・・
「ではレイ君、例えばこんな事があったとします 君は色々な国から来た人たちが集まるパーティーに行きました 金髪の子、黒肌の子、青目の子、様々な人間がいます そこに、明らかエイリアンな緑の肌の子が居たら、どう思います?」
「え、いや・・・・・・・・」
特に何も思わないが、 とは流石に言えなかった
その様を想像してみると、妙に何とも言えなかった
だが、そのエイリアンみたいな子と自分が仲良くしてる、と言う場面は想像できなかった、と言うより想像すると何か嫌な感じがした
緑で触覚が生えていて目が大きい子と隣で楽しくお喋りしている自分
何処か、ゾッとするような感覚がある
「お前は此処へ来た当初、そんな目で見られてぜ?」
「え!?本当に!?」
仁にそう言われて思わず刹那とシザースを見る
「実際思いっきり敵意向けてただろ」
と言うシザースと
「いや別に「怪しがって刹那はレイをボクの所へよこしました」
思いっきり目を逸らして逃げようとする刹那を逃さない仁
「ま、それくらいみんな王さまを嫌ってたって事 ・・・・・一人を除いて、ね」
つ—— とロストが見ていた先を見れば、少し照れたように笑っている仁が居た
「僕は面白い子だと思いましたよ 特にロスト、君はいいからか遊び相手でずっと此処に居て欲しいまでありますからね」
「今からかい相手って言おうと「言ってませんよ?」
二人は楽しそうだった 実際に笑っているのは仁だけだが、何処か気が合ってい居るような、凸凹コンビのような、そんな感覚
「だったら・・・・・・・」
だから、余計に疑問だった
「だったら何で「まだ分かりませんか?」
少し苛立つようにオレの言葉を遮って仁は言う
「お前はこれにも反発してるんだよ つまるところ詰まる話し、」
と、仁はオレに剣先を向けて言い放つ
「オレとロストの仲をお前が引き裂いているんだよ」
「・・・・・・・・え?」
思わずロストを見る そんな訳、無いよな と
しかしロストは
「・・・・・・・・・・・・」
目線を合わせてくれない 否定しないよ とでも言うように
「だからさ、」
オレが、オレが無意味に?
「ちょっと死んでてくれない?」
オレが生きてるから・・・・・・?
「だから同じ不意打ちはさせ・・・・・」
・・・・・・・何度目の光景だろうか、仁の剣をロストが刃で受け止め
トン
「・・・・・え?」
させなかった
オレはロストの背中を押し、バランスを崩させる
どうしてだろうか、どうしてそんな行動をしたのかは自分にもわからない
「・・・・・・残念ですが、」
どうしてなんだろうか・・・・・・・・・・・
目の前には黒髪の幼女、ロストと、剣先を向ける赤いパーカーを着た少年、仁の姿
どうしてこうなったんだろうな
「まぁ、悪く思って下さい」
仁は剣を振り上げる
・・・・悪く思わないさ
「こんな形で、君を殺すのを」
・・・・・・・・やればいいさ
「邪魔んだろ? オレが」
仁はニコリと笑いそして、仁ははオレに剣を—————————————
「やめろーーーーーーーー!!!!!!!!」
ロストの叫び声、そして——————————————