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第202話 外伝・通信ログ② 件名:指輪の誤用疑惑について。

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【通信No.007】


 送信者:ギルベルト・ラノリア


 受信者:ミリア・コーンフィールド


 件名:Re: 業務報告(喜んで)


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 ミリア殿。


 心中、お察しする。


 あの二人にとって「愛」とは「闘争」であり、「信頼」とは「放置」なのかもしれないな。我々には理解し難い高みだ。


 飲み会の件、喜んでお受けしよう。


 ラノリアの最高級ワインと、君の好きな「聖都まんじゅう(新作・ココア味)」を持参する。


 仕事も大事だが、君が倒れては私が困る……いや、商会が困るだろう。


 私の筋肉と、君の計算で、この嵐を乗り切ろうじゃないか。


 二人が再会し、世界が揺れるその日まで。


 追伸:


 姐さんがドラゴンを狩りに行ったか。……アレクセイ殿の無事を(物理的な意味で)祈っておこう。彼なら、姐さんの「愛の鉄拳」も受け止めきれると信じている。



【極秘扱】大陸横断プロジェクト・裏面通信ログ保存記録 Vol.2


 ~案件名:指輪の誤用疑惑および、宰相の胃壁崩壊カウントダウン~


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【通信No.008】


 送信者:ミリア・コーンフィールド(ヴィータヴェン・アクシス連邦皇国宰相)


 受信者:ギルベルト・ラノリア(ラノリア王国国王)


 件名:【悲報】プレゼントの「用途」について


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 拝啓 ギルベルト陛下。


 先日は、東西の中間地点での視察(という名のヤケ酒の会)にお付き合いいただき、ありがとうございました。陛下が持参された「聖都まんじゅう(プレミアム味噌味)」が、荒んだ心に沁みました。


 さて、アレクセイ様から極秘裏に送られてきた「星屑金スターダスト・ゴールド」の加工品――つまり「指輪の台座」について、事後報告です。


 ガンテツ親方に無理を言って、一晩でサイズ違いのいくつかのシンプルなリングに加工してもらい、「東方で見つかった未知の硬質金属サンプルです」としてレヴィーネ様にお渡ししました。


 結果をご報告します。


 レヴィーネ様は、それを「メリケンサック」だと認識されました。


「あら、素晴らしい硬度ですわね。これならドラゴンの鱗もいけそうですわ」と仰り、親指を除く4本の指に指輪を装備するや、試し打ちと称して部材室の古代樹や岩石のサンプルを粉砕されました。


 指輪は無傷。部材室のサンプルは木っ端微塵。


 レヴィーネ様は「良い武器(サンプル)ですわ」とご満悦です。


……もう駄目です。あの二人の間に、ロマンチックな空気など存在しません。あるのは物理的な破壊力だけです。


 アレクセイ様には、「渡しました」とだけお伝えください。一応左の薬指のサイズも。「凶器として愛用されています」とは、私の口からはとても言えません。


 敬具




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【通信No.009】


 送信者:ギルベルト・ラノリア


 受信者:アレクセイ・ガルディア(帝国道路公団・現場監督)


 件名:Re: 経過報告(という名の警告)


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 アレクセイ殿。


 君からの贈り物は、無事にレヴィーネ姐さんの手に渡ったそうだ。


……詳細は伏せるが、彼女はそれを「実戦的な装備」として大変気に入っているらしい。君の選んだ素材の頑丈さは証明されたわけだ(ミリア殿の胃薬の量は増えたようだが)。


 さて、冗談は置いておいて、忠告だ。


 最近、東方からの魔力振動が強くなっていると、我が国の宮廷魔導師団が感知している。


 君たち、相当無理なペースで工事を進めているのではないか?


「氷壊槍」と「焔創剣」を土木工事にフル稼働させているそうだが、君自身の体が心配だ。


 レヴィーネ姐さんの前に立つとき、君が倒れていては元も子もないだろう。


 姐さんは最近、西の空(君がいる方向)を見ては、鉄扇をバチバチと鳴らしているそうだ。


「既読スルーの罪は、万死に値しますわ」という独り言を、イリス殿のマイクが拾っているらしい。


 再会の瞬間、君が物理的に消滅しないよう、防御魔法の重ねがけをしておくことを強く推奨する。




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【通信No.010】


 送信者:アレクセイ・ガルディア


 受信者:ミリア・コーンフィールド


 件名:工事進捗と弁明


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 ミリア殿。


 指輪の件、感謝する。


……武器として使っている? ははっ、想像通りだ。


 それでこそ私が惚れた女だ。軟弱な宝石などより、共に戦場(現場)に立てる実用性こそが、彼女には相応しい。


 その指輪が砕けない限り、私の愛も砕けないと伝えて……いや、やはり言わなくていい。


 どういう意図かは敢えて確認しないが、左の薬指のサイズについても大きな感謝を。


 さて、工事のペースを上げているのは事実だ。


 我々の目の前に、最大の難関「神代の岩盤」が立ちはだかった。


 通常の重機では歯が立たない。だが、ここで止まるわけにはいかない。


 魔導師団とソレン、そして私の全力をもって、この壁をブチ抜く。


 計算では、あと数日で貫通するはずだ。


 その時こそ、私は彼女に会いに行く。


 ミリア殿、最後の詰めだ。


 貫通の瞬間、衝撃波と粉塵が発生する可能性がある。レヴィーネ周辺の安全確保と、できれば……彼女の機嫌取りを頼む。


 再会した瞬間に殺されたくはないからな。


 追伸:


 胃薬の代金は、開通後の通行料収入から「帝国特別枠」として上乗せして支払う。今は耐えてくれ。




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【通信No.011】


 送信者:ミリア・コーンフィールド


 受信者:アレクセイ・ガルディア


 件名:【緊急】イリスからの警告アラート


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 アレクセイ様。


「耐えてくれ」ではありません! 耐えるのは私の胃ではなく、大陸の地盤です!


 たった今、イリスから緊急アラートが発令されました。


『警告。東方より、戦略級魔法に匹敵する熱源と冷気の衝突反応を検知。地殻変動レベルの振動が接近中』


 貴方達、岩盤に対して何を撃ち込んでいるのですか!?


「熱膨張と急冷による破砕工法」だそうですが、規模が大きすぎます!


 レヴィーネ様が「あら、東の方で喧嘩かしら? 楽しそうですわね」と、戦闘ドレスに着替え始めました!


「仲裁(物理)」に向かおうとされています!


 もしこれが、貴方達の工事によるものだとバレたら……いえ、もう手遅れです。


 レヴィーネ様は『漆黒の玉座』を担いで、東へ向かいました。


「3年間も待たせた挙句、騒音で安眠妨害までする不届き者はどこのどいつかしら?」と、笑顔ですが目は笑っていません。


 アレクセイ様。


 どうか、生きてお会いしましょう。


 貫通の瞬間、そこにいるのが「愛しい婚約者」か「処刑人」か、それは貴方の運次第です。




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【通信No.012】


 送信者:ギルベルト・ラノリア


 受信者:ミリア・コーンフィールド


 件名:私にできること


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 ミリア殿。


 状況は把握した。いよいよ、クライマックスのようだな。


 君の心労、察するに余りある。


 だが、安心してほしい。


 私がラノリアから、精鋭の聖騎士団と「回復魔法部隊」を国境付近へ派遣した。


 万が一、アレクセイ殿が姐さんに殴られて瀕死になっても、即座に蘇生できるよう待機させてある。


 それと……これは個人的な話だが。


 この大工事が終わったら、少し休みを取らないか?


 ラノリアの離宮にある温泉は、胃痛と神経痛によく効くそうだ。


 君は働きすぎだ。レヴィーネ姐さんを支える君を、支えるのが私の役目だと思っている。


……嫌でなければ、だが。




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【通信No.013】


 送信者:ミリア・コーンフィールド


 受信者:ギルベルト・ラノリア


 件名:Re: 私にできること(と、予約のお願い)


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 ギルベルト陛下。


……ずるいです。


 そんなタイミングで、そんな優しい言葉をかけられたら、張り詰めていた糸が切れてしまいそうです。


 蘇生部隊の派遣、感謝します(本当に必要になりそうです)。


 温泉の件、謹んでお受けします。


 ただし、条件があります。


「視察」ではなく「休暇」として。そして、仕事の話は抜きで。


……プロテインではなく、たまには甘いお酒でも飲みながら、愚痴を聞いていただけますか?


 PS:


 レヴィーネ様が、現場に到着されたようです。


 モニター越しに見えます。


 壁の向こうのアレクセイ様(とソレン様)の気配を察知して、振り上げた拳を……あ、止めました。


……どうやら、殴り込みではなく、「お迎え」に変更されたようです。


 私の胃も、ようやく平穏を取り戻せそうです。


 これにて、通信ログを終了します。


 あとは、あのお二人の「物理的な愛の物語」を見届けるだけです。


 ミリア・コーンフィールド


(V&C商会代表・兼・アクシス連邦皇国胃痛宰相)


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