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青春聖戦 24年の思い出  作者: くらまゆうき
29/140

第29話 食って寝て走れ

夕食開始から5分。



山盛りご飯を半分まで平らげたが既に満腹。



かなりの量を食べた気がしたがまるで減っていない。



吐きそうになりながらも口になんとかして入れる。





「エースになるならもっと体を太くしないとな。」

「はひ・・・」

「食べ物を粗末にするなよー。」

「は・・・はひ・・・」





既に健太もエルドも放心状態。



祐輝はそれでも高田コーチと共に食べ続けた。



目の前にあるスープにご飯を入れてリゾットの様にしてかき込んだ。



スープがなくなればお茶まで使った。



1時間もかけて何とか食べきった祐輝の腹は膨れ上がっている。





『ごちそうさまでした!!』





口を抑えながら祐輝は部屋へと戻る。



コーチ陣は楽しげに酒を飲み始めている。



楽しげな笑い声とは裏腹に祐輝は悲痛の表情で歩いていると後ろから名前を呼ぶ声が聞こえて振り返ると高田コーチが歩いてきた。






「任意トレーニングです! 食後に一汗いかがかな!?」

「は、はい!?」

「捕球姿勢5分3セット!! いきますか!? しかしやるかやらないかはあなた次第!!」

「やります・・・」





この合宿に安息はないのかもしれない。



夕飯も地獄、そして食後も地獄。



終わる事のない地獄だ。



しかし祐輝に迷いはなかった。



エースになって母の真美に恩返しをしたい。



それだけが原動力だった。





「夜間だから叫んじゃダメだぞー。」

「タオル口に咥えていいですか?」

「男だねー。 いいよーさあ頑張れー!!」





疲れたももに更にのしかかる疲労。



もはや激痛にも感じる。



ももの中が燃えている様に熱い。



捕球姿勢で大切なのは精神を統一する事。



別の事を考える様にした。






「んんんんんんんんん!!!!!!!!!!!」

「はい頑張れーあと3分。」






人をいじめるのが好きなのか?



いやそれ以上に大きな疑問がある。



佐藤コーチ含むコーチ陣は酒を飲んで宴会騒ぎだ。



それなのに高田コーチは何故ここにいて自分をいじめている?



一番若いからか?



合宿しか来ないからか?



健太とエルドは何故呼ばれなかった?



いじめる事が好きなのに随分だ。





「んんんんんんんんん!!!!!!!!!!!」

「はい1セット終わりー。」

「はあ・・・はあ・・・高田コーチは酒飲まないんですか?」

「酒は美味いよー。 お前もいつかわかるよ!」

「飲まないんですか?」






ニヤけた表情で祐輝を見ている。



どこまでSっ気の強い人なんだ。



酒よりいじめか?






「酒はさー。 別に東京帰って仕事終わりにでも飲めばいいよ。 でもお前をいじめるのはここでしかできないからね。」

「あ、はい・・・」

「はい2セット目ー!!!」






やはり普通じゃない。



祐輝は高田コーチが怖かった。



目を合わせるだけで何をさせられるかわからない。



屈強な体だし戦っても勝てそうにもない。



つまり屈する他ない。



この地獄の門番から逃げる事はできない。



ならやってやるよ。



限界まで。





「はいお疲れさまでーすっ!!!」

「3セットじゃ?」

「特別に終わりでーす!! 頑張ったら明日いい事あるかもなー!!」





3セットやるつもりだったからとても楽に感じた。



そして1人で風呂に入った。



先輩も健太とエルドも部屋に戻って眠っている。



風呂に入っているとまたしても高田コーチが入ってきた。





「まさか・・・風呂でもですか・・・」

「いやあ男の裸の捕球姿勢は見たくないなー。 女の子だったら最高なのに。」

「よかった・・・」

「おおやってるな!!」

「佐藤コーチ。」

「いいぞお祐輝。 しっかり鍛えてもらえ!」

「はい!」






普段は厳しい佐藤コーチが妙に優しく感じる。



考えてみれば合宿に来てから一度も佐藤コーチと話していなかった。



早く佐藤コーチが指揮する全体練習に入りたい。



そのためにはこの地獄の門番から許可をもらわないといけない。



少年は小麦色に焦げた肌をこすり湯船に入って束の間の休息を取るのだった。

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