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55. ガートラ大ダンジョン

お待たせしました!

本編再開です!

 ───ゴーン、ゴーン、ゴーン


 朝、街の一角にある時計塔が重厚な鐘の音を響かせる。


 時刻は6時。


 『トリワル』で6時間おきに鳴っていた鐘はこの世界でも健在らしい。


「ふわぁ~。」


 大きな欠伸をし、名残惜しさを感じながらもベッドから起き上がる。


 3日間の馬車の旅を経て王都に到着したのが昨日のこと。


 今日からはいよいよ新しいダンジョンへの挑戦が始まる。


 ただ一つ違うのは、1人《ソロ》ではなく2人(デュオ)での攻略だということ。


 PT(パーティ)を組んだのは同じ馬車に乗っていたCランク冒険者の少女───『ハクレシア』。


 彼女も俺と同じで長らくソロで活動していたらしいが、どういう訳かPTを組むことになった。


 まぁ、これから挑む『ガートラ大ダンジョン』は今の俺のレベルではかなり厳しい道のりになるため、彼女からの提案は俺としても都合が良く、断る理由なんてなかったが。


 この世界に来てから初めて他人とダンジョンに行くので多少の緊張感はあるが、それよりも彼女の腕がどれ程なのかという興味の方が強い。


 俺は緊張と期待でソワソワとしながら朝の支度をしていった。






「《転移》っと。」


 王都のギルドが開くと同時に手頃な依頼をいくつか受けた俺は、人目に付かない場所で

『転移魔法』を使用し、集合場所である『ガートラ大ダンジョン』へとやってきた。


 この転移魔法は一度行ったことのある場所にしか行けないという制限はあるが、昨日下見に来ていたためその条件は既にクリアしている。


 ダンジョンロビーの入り口で待つこと数十分、見覚えのある少女が遠くに見えた。


 全身を覆うサイズの外套を羽織り、上は革製のベストタイプの防具、下は白い素足の映えるホットパンツを履いていた。


 ソロと聞いて予想していた通り、彼女の戦闘スタイルは速度重視の軽戦士タイプだろう。


 手を振ってアピールするとハクレシアもこちらに気付いたようで、駆け足で寄ってきた。


「おはよう、ハクレシア。」


「……おはよう。もしかして、待った?」


「いいや、俺も今来たばっかだよ。それじゃあ行こうか。」


 そう言って俺達はロビーに入り、列の最後尾に並ぶ。


 朝早い時間帯ではあるが既にかなりの人数が集まっており、改めて大ダンジョンの人気ぶりを実感する。


 今日の目標やら攻略の方針やらを話しながら待っていると、すぐに順番がきた。


 駅の改札のような魔道具を通って転移用の魔法陣に乗り、ハクレシアが頷いたのを確認して唱える。


「一階層に《転移》」


 視界が光に染まり、僅かな浮遊感の後に足元に着地の感触が伝わる。


 目を開けると、そこには開けた草原が広がっていた。


 空は晴れ、どこからともなく吹いた風が頬を撫でる。


 『ロックストンダンジョン』は『迷宮型』と呼ばれるダンジョンタイプだったが、ここ───『ガートラ大ダンジョン』は『フィールド型』と呼ばれるタイプのダンジョンだ。


「う~ん、空気が美味い!」


 今までいたのが人の多い空間だったこともあり、澄み渡った空気が心地良い。


 暫くの間両手を広げて堪能していたが、背中をつつかれたことで意識が現実に引き戻される。


「……そろそろ、行こう。」


「おっと、ごめんごめん。つい気持ちが良くてリラックスしてたよ。」


「……大丈夫。それじゃ、さっき話した通り、手分けして探そう。」


「了解。」


 迷宮型とフィールド型の違いは多々あるが、その一つに次の階層への行き方が挙げられる。


 迷宮型はその階層のどこかに階段があるが、フィールド型には階段がない。


 その代わりに、階層のどこかしらに来た時とは違う魔法陣があり、それに乗ると次の階層に転移できるというシステムになっている。


 そのため、出てくる魔物が弱い浅層の内は手分けして魔法陣を探そうとハクレシアと打ち合わせていたのだ。






 ハクレシアを見送り、俺は逆方向へと進む。


 開けた草原とはいえ足元には草が生い茂っており、視認できるのはせいぜい数メートル程度。


 もっと背が高ければ見える範囲も広がるだろうが、人間である以上、結局のところできることには限界がある。


 だがしかし、この世界は魔法という便利な力のあるファンタジー世界。


 人の身だけでは困難なことも、魔法を使うことで実現できるようになる。


「ハクレシアは……よし、かなり遠くに行ったな。それじゃあいっちょやりますか!」


 ハクレシアとの距離が十分に開いたことを確認して、俺は魔法を唱える。


「《エア・フロート》」


 すると、膝下あたりに1メートル四方の半透明なガラス板のようなものが現れた。


 感触を確かめるように片足ずつ乗せていくと、板は崩れることなく俺の体重を支えてみせた。


「ふぅ、大丈夫そうだな。」


 一見すると大したことのないように見えるこの魔法だが、これの真価は複数展開して初めて発揮される。


「とりあえず10段でいこう。《エア・フロート》」


 今度は一気に10枚の板を階段状に出現させ、落ちないように気を付けて上っていく。


 暫くして最終段に到達するとその高さは5メートル以上。


 地上にいた時と比べて、格段に視認できる範囲が広がっていた。


「かなり見えるようにはなったけど……もう少し上がるか。」


 もう一度10枚の板を出現させ、手すりのない空中階段をゆっくりと進む。


 そうして頂上に着くと、高さは遂に10メートルを超えた。


「うわ、結構高いな。でも良い眺めだ。」


 今見える範囲には魔法陣が無さそうだが、この高さで探索を続ければじきに見つかるだろう。


 ふとハクレシアの歩いて行った方向を見ると、何やら忙しなく動いていた。


 恐らくは戦闘をしているのだろう。


「ここで出る魔物は『ゴブリン』か『スライム』か『ホーンラビット』だけど……あの感じは『ホーンラビット』かな。」


 『ホーンラビット』はその名の通り、頭に鋭い角が生えた兎だ。


 攻撃方法は角を使った突進攻撃だけだが、中々速度が速いため舐めていると痛い目に合う魔物である。


 遠目からなので細かいところまでは見えないが、複数匹の『ホーンラビット』を相手に苦戦することなく戦っているようだった。


 暫く眺め、援護に向かう必要はなさそうだと判断し探索を再開する。


「っとそうだ、そろそろMP回復させないとマズいかも。」


 この『エア・フロート』という魔法は非常に便利な魔法なのだが、出現させている間は常にMPが減り続けるというデメリットがある。


 ステータスを確認すると既に残量は2割を切っていた。


 慌ててポーションを飲み、MPに余裕ができたのを見て次の足場を出現させる。






 それから数分後、ピピーという笛の音が草原に響き渡った。


 これは事前に決めていた、魔法陣を見つけた時の合図だ。


 音のした方へ振り向き、反射的に口が開く。


「いや、そっちが見つけるんかい。」




第3章のタイトルから既に察した方もいらっしゃるかもしれないですが、今章からはいよいよ本作のキーワードにある「自作キャラが仲間に」の部分を書いていきます!

どんなキャラが登場するのか乞うご期待です!

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