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44. ランクアップ

 『ロックストーンゴーレム』の怒りモードが始まってから約2分半。


 俺の体内時計ではそろそろ支援魔法(バフ)の効果時間が切れる頃だ。


「《AGIブースト》!」


 繰り出される高速のパンチを躱しながらまずは1つ重ね掛けに成功し、3分間効果が延長された。


 とはいえ、本当に大変なのはここからだ。


 今まで俺は『INT(知力)』、『STM(持久力)』『AGI(敏捷)』、『DEX(器用さ)』の4つのステータスを5つの魔法で強化していたが、これらの魔法はMPの消費が激しく、今のMP量では連続して使うことができない。


 強化するステータスをAGIだけに絞るとしても、『シルフィードダンス』の補助なしでは残り2分を耐えることはできない。


 即ち、どこかしらでMPポーションの回復ができなければ俺の負けということだ。


 刻々と迫るタイムリミットを前に逸る気持ちを抑え、ゴーレムの一挙手一投足に集中する。


 ゴーレムは伸びた腕を元に戻しながらこちらへと迫り、右足を大きくしならせてローキックを放つ。


 これをジャンプで躱すと、驚異の体幹でバランスを保ったゴーレムが追撃の左ストレートを繰り出す。


 体勢を変えられない空中を狙った絶妙なコンボで、敵ながらあっぱれと言わざるを得ない。


 ───だが。


「ここだ! 『パリィ』!」


 ここまで使わずに温存していた奥の手の防御スキルを発動する。


 普通であれば踏ん張りが効かず吹っ飛ばされるだろうが、ここはスキルや魔法のあるファンタジー世界。


 たとえ空中であっても、スキルの恩恵があればゴーレムの鈍重な一撃を弾くことができる!


 片足という無理な姿勢だったこともあり、ゴーレムがバランスを崩してダウンする。


 着地した俺は急いでMPを飲み干し、『シルフィードダンス』を再び発動する。


「ふぅ、時間ギリギリだったけど何とかなったか。一番の難所も無事に突破したし、ここからあと2分踏ん張りどころだ!」


 パンと両頬を叩いて気合を入れ、ダウンから復帰したゴーレムと対峙する。






 そこからの2分はあっという間だった。


 少なくない思考リソースが解放されたのと『パリィ』を解禁したことで、目に見えて対応力が上がったからだ。


 見慣れた攻撃の一つ一つを冷静に対処していくと、ある時ゴーレムが膝立ちになって(うずくま)る。


「オラオラ反撃の時じゃー! 《INTブースト》からの《ウォーターアロー》!」


 まずはバフを掛け、そこからは今までの鬱憤を晴らすかのように魔法を連射していく。


 怒りモード後の硬直時間は1分程度だったが、1.2倍されたINTから放つ魔法の威力は凄まじく、硬直が終わって動き出したところで遂にゴーレムの体が光の粒子に変わっていく。


「よっしゃー! ソロでダンジョンクリアだー!」


 両手を掲げて喜びを表現し、そのまま背中から倒れる。


「いやー流石に疲れた。……でもこの達成感は何とも言えない気持ち良さがあるな。」


 ゲームでは数えきれないくらい倒したことのある魔物だが、画面越しではなく自分の手で成し遂げたというのが感無量だ。


 暫くの間仰向けで勝利の余韻に浸る。


「あ、そうだ。ダンジョンクリアしたならもしかして───」


 そう呟き、ステータス画面を開く。


 レベルは上がっておらず、それ故スキルや魔法の欄にも特段変化はない。


 ───ある一点を除いて。



────────────────────


《称号》

準中級冒険者


────────────────────



「よしよし、ゲーム通りで良かった。これでランクアップできるな。」


 冒険者ギルドのランクアップには、この『~冒険者』という称号が大きく関わっている。


 『準中級冒険者』であればDランクに昇格でき、これが『中級冒険者』になればCランクに昇格できる、という仕様だ。


「さてと。多少疲れも取れたし、混まない内にランクアップしに行きますか。」


 震える足に鞭を打って立ち上がり、素材を回収して魔法陣の上に立つ。


「《帰還》」






「ランクアップをお願いします。」


 所変わってここは『ネゴノーバ』の町にある冒険者ギルド。


 時刻はお昼を少し過ぎたところで、午後からダンジョンに向かう冒険者達で賑わっていた。


「かしこまりました。ギルド証お預かりします。」


 そう言って奥に入っていく受付嬢さん。


 暫く待っていると、どこかソワソワした様子で戻ってきた。


「確認いたしました。クロトさんのDランクへのランクアップを承認いたします。」


「ありがとうございます───ん?」


 返されたギルド証を受け取ろうとしたのだが、何故か受付嬢さんが離してくれない。


「あの、何か?」


 ジロジロと観察するような目で見てくる受付嬢さんを不思議に思いながら声をかける。


「……クロトさんってギルドに登録してからまだ2週間経ってないですよね? 不正ではないのは分かるんですけど、どういうマジックなのかなと思いまして。」


 これは……もしかして怪しまれている?


 明日でギルドに登録してからちょうど2週間なので、確かに受付嬢さんの言う通りギリギリ2週間は経っていない。


 そこまで意識していなかったけど、言われてみれば結構早い方かもしれない。


 RTA勢程ではないが、マネーパワーで攻略の速度が早まったことで結果的に自己ベストは更新している。


 この世界ではどれくらいが一般的なのか分からないが、プレイヤーとしても見ても早い方なのにNPC……この世界の人からしたら明らかに異常な速度でのランクアップだろう。


「……あー、なんと言いますか。ギルドに登録する前にある人から指導を受けてまして。戦闘経験があったのが功を奏したのかもしれません。」


 何ともまぁ苦しい言い訳だが、2週間も経っていない新人がソロでダンジョンをクリアしたと言えば更に話が大きくなってしまいそうだし、本当のことを伝える訳にはいかない。


 その言葉で納得まではいかずとも多少理解はしてくれたのか、ギルド証を持つ力が緩んだ。


「余計なお世話かもしれませんが、くれぐれも無理はしないでくださいね。」


 本心からであろう言葉に、「分かりました」と大きく頷く。


「ご心配ありがとうございます。無理しない範囲で頑張ります。」


 無難な返事を返してその場を後にする。


 思いがけず時間を取られたりもしたが、これで遂にDランクだ。


 Eランクではダンジョンには入れる時間が制限されていたが、Dランクからはその制限がなくなる。


「今日もまだ半日残ってるし……もう1回ダンジョン行くか!」


 ゴーレムとの激闘での疲れがすっかり回復した俺は、レベル上げのために再びダンジョンに向かうのだった。




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