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短編集 冬花火

寂しがり屋の朝

作者: 春風 月葉

 子供の頃から一人というのが苦手で、いい歳になり妻を持ってもそれは治りませんでした。

 今日もいつものように妻と酒を飲み、もうそろそろ結婚から二年が経つなどという話しをしてから二人で寝室へ向かい眠りにつきました。

 おやすみと妻に一声かけ、目を瞑りますが、あまりすぐに寝たい気分ではありません。

 今は布越しに妻の温度を感じますが、一度眠りについてしまえば夢の中に堕ち、一人になってしまうからです。

 恥ずかしい話、夢の中でまでも妻と一緒にいたいとすら思っています。

 あぁ、早く朝にならないかと思いながら明日を待ち、夢の中で妻の姿を探し続け、はっと目が覚めると隣でまだ眠っている妻の横顔を見てほっとする。

 もう三十になろうという歳なのに恥ずかしいことですが、これがいつもの私の日常です。


 しかしある日、例の如くはっと目を覚ますといつもは寝起きが悪く寝ているはずの妻の姿が見えず、まだ自分は夢の中にいるのかと頰をつねってみても、しっかりと頰は痛みを感じていて、焦った私はガバッとベッドを飛び出してリビングへと向かいました。

 するとキッチンの方でなにやら料理をしていた妻がひょこんと顏を出し、

「おはよう、今日は結婚記念日だから朝から頑張っちゃった。」

 と自慢気に料理をキッチンへと運び出して、へへッと可愛いらしく笑いました。

 私は色々な感情を伝える術がなく、静かに妻を抱きしめて、

「ありがとう、これからもよろしく。」

 とだけ言いました。

 妻はうんうんと頷きながら抱き返してくれました。

 だんだんと登る太陽を見ながら、ずっと夜が来なければいいのにと私は思いました。

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