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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【加速】

カゾットを寝かせていた部屋にひとり残されたフィリオも気になるかも知れないが、行動の規模で考えればアナトールの部屋に残されたフィリアのほうが断然アクティブだった。

まず精神状態がやばかったよ。

アナトールの説明を聞いてないフィリアからしたら、この時点ではカゾットは死んだとしか思えなかったからね。

さすがに死人が出るってのはイベントとしてはでかすぎさ。

さしものフィリアも半ば正気を失った。

だが、その点はやはりフィリアだといったところかね。

自分の精神が軋む音を聞きながら、それでもなお行動には理がある。

急くようにドアを適当な部屋に向けて開けた。

つながった部屋はただの何もない狭い部屋だったが、それ自体に別段意味は無い。

重要なのは開いたドアをそのままにしておくこと。

そしてドアの間に椅子を置いた。

これでドアは閉じない。

つまりアナトールが部屋に戻ってくることがないってことさ。

すると、お次はさらに派手な行動だ。

アナトールの机の引き出しを引っこ抜くと、中身を全部ぶちまけた。

もう後戻りする気が無いからできることさね。

で、前に見て目をつけてた本を床から拾い上げると、やはり予想した通り鍵つきの本だ。

革製の表紙に同じく革製のベルトが金具で固定され、そいつが本を開くことを許さない。

開けるのに必要なのは当然、金具に付属した鍵穴へ鍵を差すこと。

しかしね、

後先を考えない人間に、この鍵がどれほどの意味を持つかを考えてごらんな。

はっきり言って何の意味も無いよ。

そうさね。

どれくらい意味が無いかは、フィリアの次の行動が教えてくれた。

本の開閉を封じてるベルトを机の角に引っ掛けて、上から思いっ切りぶっ叩いたのさ。

ああ、簡単にちぎれ飛んだよ。

たかが細い皮のベルトだからね。

さて、じゃあ問題はこの本の中身だ。

パラパラとめくって中身を確認しようとした時に、フィリアは自分がどれほど冷静さを失ってるか自覚したよ。

切ない話さ。

読めないんだ。

中身を確かめるようにも単語が理解できなきゃ読めない。

ここに来てまた焦っちまった。

一瞬、どうしようかと思ったが、まあそこはフィリアもしっかりしてる。

すぐにドアへ向かうと、ドアに挟んだ椅子を取り払って、一度ドアを閉めた。

気が気じゃなかったのは言うまでも無いね。

今この瞬間、アナトールがドア開けて入ってきたらもうどうしようも無いからさ。

でもそんなことを気にしてる時間自体が自分を追いつめるってのも分かってる。

だから急いで開けたよ。

手ごろな書庫へ通じるドアを。鍵をぶっ壊した本を持ったまま書庫に入ると、まずまたアナトールの部屋から椅子を持ち込んで、ドアに挟んだ。

ここでようやく一息だね。

安心ってわけではないけど、少なくとも多少の心の余裕くらいは生まれる。ようやくに本の内容を確認できるってわけさ。

棚から一冊、辞書を取ると、さあ、こっからが読書の時間の始まりだ。

あとは時間の問題さね。

せいぜい頑張ることだよ。


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