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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【本心】

この日の朝食は昨日の朝食とはまた違った意味でひどいもんだった。

とてもじゃないが連日食事の際、こんないたたまれない状況が続けば、そのうち(変化)以前に餓死しちまうんじゃないかってほど、食欲の欠片も呼び起こさせない食卓さ。

昼食に至っちゃ、さらに最悪。

昨日とはまた違った理由でカゾットが顔を出さなかった。

ん? 先日とは違う理由が何かって?

お前さんまさかそいつは本気の質問ってわけじゃあないだろうね……いや、まあいいさ。

私も話をするのは嫌いじゃないからね。ついでに説明してやるよ。

昨日に関しては、ちと複雑だ。

今日の件で分かったことではあるが、カゾットは過去に、アナトールとシャミッソーから必要な情報を与えられないまま館に残る選択をし、結果、望まぬ形の(変化)に見舞われるはめになった。

これは別に悪意から起きたことじゃあ無く、単にアナトールとシャミッソーの情報不足による不幸にして不可避な事故の類だったわけなんだが、当事者のカゾットは運が悪かったで済ませられる問題じゃない。

結果、カゾットは種々の情報について、異常に敏感になっちまった。

そのせいで、アナトールからシャミッソーの状態を遅れて知らされた際に、過去の事件を思い出し、ひどく立腹することになったと、そういった流れだよ。

対して、今日の事情はある意味、昨日よりも厄介さ。

頭では分かってたこととはいえ、アナトールに当たり散らすしか出来なかったわけだが、それが行き過ぎた結果、アナトールが壊れちまった。

自分の想像以上に相手を精神的に追い詰めてたってことを知った時、まっとうな人間ならどんな反応を示すか。その典型例さね。

八つ当たりに近い感情が一転、自責と慙愧で押し潰され、カゾットもまた壊れちまった。

しかも間違いなくアナトールよりひどい壊れ方さ。

まったく、面倒事が絶えないよ。

さて、そんなこんなで館の人間関係がほぼ崩壊した今、フィリオとフィリアの立場は恐ろしいほど不安定になった。

本来なら、こうした特殊な状況下では、頼るべき人間がいてこそなんとかやっていける。

それなのに、本来頼みとしたい相手がふたり揃って精神を病んじまった。

冗談抜きで致命的だよ。

命綱無しで岩山をよじ登るようなもんさね。

だが、これもまた人間の面白さだよ。

今回の件でもよく分かった通り、人間てのは常に二面性を持ってる。

外面的には世話焼きの常識人だったアナトールも、中身を見れば、負うべき責任の重圧に押し潰されそうになってた、ただの子供さ。

衝動的に自殺一歩手前の行動をとったのも、内面では目の前の現実から逃避したいという欲求からきたものだろうよ。

そしてその点に関しちゃ、カゾットも同様だ。

外面的には弱みを見せないよう、わざとふざけたり、不真面目な態度をとってはいるが、実際はアナトール以上に過酷な現実から逃避したいと思ってる。

真正面から現実を受け止められないからこそ常に斜に構えてた。

これもまた防衛本能さ。

本当は脆弱な精神を守るため、虚飾に満ちた余裕を見せてるわけだよ。

だからこそ、いざ追い詰められると一発だ。

ガラス細工みたいに粉々になる。

そんなこんなで現在の館には心を病んだのがふたり。

右も左も分からない子供がふたり。

これだけ絶望的な条件が重なってると、いっそ清々しくすらあるね。

しかし、さ。

これまで言ってきたとおり、人は常に二面性を持ってる。

いい意味でも悪い意味でも。

そう、どっちにでも転ぶ可能性があるのさ。

ああ、だから面白いんだよ。人間ってのはね。


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