【夢】
熟睡してると夢は見ないなんて話を聞くね。
まあ正確に言うと夢は見てるんだけど、それを覚えてないらしいが、そういう小難しい話はひとまず横に置いておこうか。
初日に続き、二日目もぐったりと疲れ切ったフィリオとフィリアは、まさしくその熟睡ってやつを堪能してたよ。
相変わらずふたり仲良くひとつのベッドで寝ながらね。
ただひとつ、変わったこともあった。
夢だよ。
とてもそんなもの見る余裕も無さそうなもんだったけど、不思議なことにこの日は二人揃って夢を見た。
あとになって知ることになるが、ふたりの見た夢はまったくと言っていいほどおんなじ内容の夢だったよ。
薄暗い、石造りの広い部屋。
いや、部屋と表現するのはどうだろうね。
そこは部屋というにはいかんせん広すぎた。
なにせ部屋の端が見えないんだ。
薄暗いって条件を考慮に入れても、恐らく下手な野原より広い部屋。
そこには規則的に並んだ同じく石造りの柱がずらりと並んでた。
だが重要なのはそんなところじゃあない。
気になったのは、いくつもの柱を囲うように置かれた見事な置物さ。
これに関しちゃ、石造りってことはまず無いだろうってのは、見てすぐに分かったよ。
一点を除けば、素晴らしく良く出来た彫刻とでも思えたかもしれない。
でも、そう考えるにはどうにもおかしいところが多かった。
たまに比喩として使うね。
(まるで本当に生きているような見事な彫刻)とかさ。
しかしこいつはそんな生っちょろいもんじゃない。
(生きてるようにしか見えない何か)とでも言うしか無い代物だ。
配置としては柱の真ん中あたりに一体、裸の女性の彫像らしきもの。
それを取り囲むように大きな、見たことも無い獣の彫像がずらり。
獣の像は全身が真っ黒な毛で覆われててね。
質感からすれば、下手をすると剥製ってことも考えられたよ。
大きな二つの目は橙色した猫みたいな目でさ。
見たこたぁ無いが、虎の目ってのはもしかするとこんな感じなのかもっていう、迫力満点の目ん玉だ。
ひとつ違和感を指摘するとすれば、こいつにゃ口らしきものが無いって点だね。
目鼻はあるが、その下には黒い毛がびっしり。
決して毛に隠れてるってわけじゃない。
ほんとに口自体が無いのさ。
見たことも無い獣の像。
これだけでもずいぶんと不気味だし、奇妙ではあるね。
だけどさ、ほんとに不思議だったのはその獣の像に囲まれた女性の像だよ。
比喩でもなんでもなく、まるで立ったまま眠ってるみたいな綺麗な女性の像。
腰まである髪。
整った眉。
目を閉じてるのに瞳の存在感を感じる長くしなやかなまつげ。
それらすべて銀色。
分かるかい?
例外はもちろん、真っ白な肌と薄桃色の唇。
誰かさんにそっくりだね。
ああ、怖いくらいそっくりだったよ。
そして、次の瞬間だよ。
すうっとそいつが目を開いたのは。
開かれた瞳。
言わなくたってもう分かるだろう?
その瞳もまた、
綺麗な銀色していたよ。




