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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【衝動による行動】

「焦るな」と言われて焦らない人間はいない。

当然だろうね。人間てのはもともとから天邪鬼にできてる。

言われた通りに気持ちが切り替えられるなら、誰も苦労しない。

そうだろう?

だからふたりは直接行動することにしたよ。

まあ、正確にはフィリアが、だけどね。

で、実際ふたりはどんな行動に出たか。

まずやったのは、またもやドアを開けることさ。

あ、今度は別に館の外へ出ようとしたわけじゃないよ?

アナトールの煮え切らない態度をどうにかし、自分たちに必要な情報を得るための助っ人を呼びに行ったんだ。

「じゃあ行くよ、フィリオ」

ドアの取っ手に手をかけたフィリアがそう言うと、フィリオはいつも通りさ。

望んじゃいないが首を縦に振る。

大体、フィリアはフィリオに対してほとんど質問をしない。

「はい」か「いいえ」を聞くだけ。

というより、むしろ「はい」という返事を聞くだけだね。

はっきり言って、それはすでに質問の体を成してないけど、まあ、あくまでフィリアにとっては儀礼的な何かなんだろうさ。

で、今度もフィリアは勢いよくドアを開けた。普通なら、つい何時間か前にあれだけ怖い思いしたドアだ。ある程度は躊躇が入ってもおかしくなさそうだけどね。

またあの黒い霧が立ち込めた部屋が出てきたらどうしようってさ、誰でも考えそうなもんなんだが、こういうところはどうもフィリアは根拠の無い自信を持ってる子だったよ。

そして、フィリアの異常な行動力には運命の女神とやらもつい苦笑しちまうんだろうね。

見事、予想通りの部屋に出た。

いや、部屋自体は大した問題じゃないね。重要なのは中の人物さ。

でもまあ、だとしてもその部屋の奇妙さはなかなか興味をそそられるものだったけどね。

だだっ広い正方形の部屋の中央にこれまたえらくでかい豪奢な噴水がある。

とても室内って光景ではないよ。

これでもし天井でも無くてさ、空でも拝めたんなら、ちょっとしたお屋敷の中庭で通りそうな造りの部屋。

さて、そこに目的の人物はいた。

噴水の脇に腰かけて、手に持った長い布を指に巻いて弄ってた。

噴水の上げる風に銀色の髪なびかせてね。

正直、フィリオとフィリアはしばらく固まっちまったよ。

見知った人物だと分かってても、こうも印象が変わると、人間てのは戸惑うもんさ。

水しぶきの上げる風になぶられる銀色の髪と同じく整った眉も長いまつげも瞳さえ銀色。

言わなくてももう分かるだろ?

カゾットさ。

普段の目隠し取り払ってさ、ぼんやり噴水に腰かけてるカゾットがふたりの様子に気づいて、ぱっと振り返った時にゃあ、フィリオもフィリアも、例えでなく、本気で心臓が止まりそうになったよ。

はて、これを褒め言葉として使っていいものかは迷うとこだがね。

ふたりを見つめたカゾットの顔ときたら、まるで人間とは思えないほど綺麗だったのさ。

噴水に乱反射する光に映し出された瞬く髪。

当惑した目元を飾る眉。

瞳の印象をさらに強める、羽みたいに伸びたまつげ。

それらすべてが銀色。

例外は真っ白な肌と薄桃色の唇。

それはフィリオとフィリアに、カゾットを女性と確信させるには十分すぎる姿だったよ。

だがさ、そんなカゾットを見られたのも一瞬のことだったね。

慌てた様子で指に巻きつけた布きれ引き抜くと、ぱっと開いて、すぐにまたいつも通りの目隠し姿さ。

ただその一瞬見たカゾットの姿に、完全に呆けちまったフィリオとフィリアがこのあとまた動き出すには、まだちょいと時間が必要だったけどね。


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