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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【疑問と思考】

昨日の夕食とは大違いに、まるきり食欲の起きない朝食をすませるとさ、ふたりはまた寝室に戻ったよ。

別に二度寝しようってんじゃあない。たださ、

アナトールはあの調子。カゾットはどうも不機嫌。シャミッソーはいろんな意味で論外。

現実的には、ベッドでごろごろするくらいしか、ふたりにはやることが無かったのさ。

けどね。やっぱりこういう時間ってのも人間には大切だったりするんだよ。

ふとベッドの脇に座って天井眺めてたフィリアが、急に思いついて声を上げたんた。

「そういえば……」

もうひとつのベッドの上でちょこんと座ってたフィリオは何事かと思って、フィリアの二の句を待ったよ。すると、

「ねえ、フィリオ。ちょっと聞くけどさ」

話を聞くつもりが、質問が来ちまった。

「あんた、アナトールさんかカゾットさん、どちらかの名前、聞き覚えあった?」

一瞬、フィリオは質問の意図が分からなかったが、ひとまず、額面通りに答えて問題は無いと思い。ふるふると首を横に振った。

「……やっぱり……」

フィリオの無言の返事に対し、フィリアはひとりで納得した様子になり、少し考え込む素振りを見せたと思うと、さらにフィリオに質問したよ。

「あたしもよフィリオ。あたしも村であのふたりの名前なんて聞いたことが無い」

やたら真剣な顔してそんなこと言うフィリアだったけどさ、困ったことにフィリオはそういったことにえらく察しが悪かったんだ。

困って、意味が分からないって顔したフィリオに業を煮やしてさ、フィリアははっきり心の中の疑問を説明したよ。

「いい? フィリオ。うちの村は全部で二十と家の無い小さな村。そして、アナトールさんは今十四歳。カゾットさんは十三歳。てことは、うちの村にふたりがいたとすれば少なくとも私が七つ。あんたが五つの時にはまだふたりは村にいたことになる。それなのに、あたしたちはあの人たちを知らない。これって一体どういうこと?」

子供にしちゃあ、鋭い疑問だ。

小さな村で面識も無く、名も知らぬ人物。不思議だね。ああ、ほんとに不思議さ。

だがフィリアの疑問はこれじゃ終わらなかったよ。

「あとフィリオ、アナトールさんがカゾットさんについて話してた時のこと覚えてる?」

「?」

これは質問が漠然としすぎてたこともあるがね。悪いが、フィリオにゃちょいと難しすぎる質問だった。

「前にもアナトールさんがカゾットさんを私たちに紹介するとき、カゾットさんを(彼)って呼んだときにすごく変な感じがしてたけど、今回はそんなもんじゃなかった。はっきり言ってたでしょ。カゾットさんが館に来た時の話で、(兄妹)だっだって。(姉妹)なら間違いの可能性もあるけど、今度はどう考えても言い間違いじゃない。アナトールさんはカゾットさんを(兄)、つまり男だって言ってたのよ」

特にこの違和感については、今朝がたカゾットに抱きついた経緯のあるフィリアにとっては無視できないもんだったろうね。

で、ここまで話して、フィリオはようやくフィリアの疑問に合点がいった。

別にフィリオのおつむが特別悪いわけじゃない。フィリアの察しが変に良すぎるだけさ。

大したもんだよ。その年でそこまで疑問を持てる子はそうはいない。

まったく、賢い子さね。


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