第3話 報告
「あのヤブ医者が……」
パリスの治療費で10万エル、足の弾は貫通してたろ……いっても8万くらいだと思ったんだが。
終わったことを嘆いても仕方ない。早く行かないと、ハルドは俺以上に金と時間に細かい。
◇
黒が基調の重々しい雰囲気の屋敷、今どき直接報告なんて珍しいよなホント。
門の前にいた執事に案内され、いつもの部屋の前まで行く。
扉を開けると、見慣れた顔が二つあった。
「おっ、リタじゃん!」
「……げ」
真っ先に飛びついてきたのは、淡い水色の髪を揺らす少女だった。
「ちょ、待て」
「久しぶりじゃん! 相変わらず綺麗な顔してるねぇ!」
「キモい、離れろ暑い」
「冷たいなぁ!」
ミレイア。
Cランクパーティー『花園』の一員で、俺より二つ年上の十七歳。
明るい性格なのは別にいい。
ただ、こいつは人との距離感がおかしい。
肩を組む。
頭を撫でる。
顔を覗き込む。
会うたびにこれだ、鬱陶しいったらない。
「……リタ、大丈夫?」
その後ろから、蜂蜜色の髪を一つに束ねた少女が顔を覗かせる。
エルナ、俺と同じ十五歳でミレイアと同じく『花園』のメンバー。
「何が?」
「その……調査先で何かあったんでしょ?」
「問題ない、俺はこうして生きている」
「そ、そっか……よかった」
エルナは胸を撫で下ろした。
こいつはミレイアとは正反対だ。
静かで、人の話をよく聞く。だからこそ、少し苦手でもある。
俺が何を考えているのか、妙に見透かされそうで。
「それで? 今日は何の報告かな?」
部屋の奥から声がした。
低く、落ち着いた声。
黒髪に白髪の混じった大柄な男が、書類から顔を上げる。
ハルド。俺たち『明星』、そして『花園』を援助しているスポンサーだ。
「まずは依頼の報告からだ」
「……随分と険しい顔だね」
「12A地区の地下は当たりだった」
ハルドの目が僅かに細くなる。
「ほう?」
「旧文明の遺物が大量に残っていた。衣服、電子機器、保存物資……他にもまだある」
「それは朗報だね」
「だが、俺以外の四人は遺物に目が眩んだみたいでな」
一瞬、部屋が静かになった。
「俺を裏切って、依頼品を横領しようとした」
ミレイアの顔から笑みが消える。
「……え?」
エルナも目を伏せた。どこかで察していたのか、驚きはないみたいだ。
「俺は三人を殺した。パリスは利用価値がありそうだから生かしてある」
「リタ、それ……」
「心配するな、遺跡も遺物も無事だ」
ミレイアが俺の肩を掴む。
「そうじゃなくて! リタが……!」
「俺なら大丈夫だ」
そう言って、その手を払いのける。
「それより重要なのは地下だ」
ハルドが黙って俺を見る。
「あそこは、俺と花園がしばらくフル稼働しても尽きないほどの物資がある」
「……それは、良いニュースだね」
「あぁ」
先ほどまでとは違う、商人の顔になった。
「なら、話は早い」
ハルドは机の上の書類をまとめる。
「君たちの契約について、少し考え直す必要がありそうだ」
「その前に一つ頼みがある」
「何かな?」
「新しいパーティーを組みたい」
ミレイアがすぐに口を挟んだ。やっぱり出ていくまで待てば良かった。
コイツがいると話が止まる。
「じゃ、じゃあ花園に来ればいいじゃん!」
「遠慮する」
「即答!?」
「俺には俺のやり方がある」
ミレイアは頬を膨らませた。相変わらず言動一つ一つがあざといというか……
「せっかく心配してあげたのに」
「それは本当にありがたいと思ってる」
「なら入ろうよ!」
「それとこれとは別だぞ」
エルナはミレイアと同じく優しい人間だ。きっと簡単に人を殺す俺とは根本が違う。
でも、優しいから俺すら受け入れようとして、また小さく笑っている。
「……リタらしいね」
「……あぁ」
俺はハルドを見た。多分ハルドも、花園と俺の合併を望んでいる。
だが、やはり分かってしまったんだ。
寄せ集めの雑魚じゃダメだ。
俺は俺の手で、頂点へ行く。
そのために必要なものは、自分で集める。
「悪いが、しばらく依頼は受けれない。1人じゃ効率も悪いしな」
「分かったよ、君は言ってどうこうなる人間じゃないしね」
「心配しなくとも、俺はすぐにでも復帰するつもりだ」
こればっかりは運だしな。
中央支部、そこに俺の求める人材がいれば良いんだがな。
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ミレイア 装備概要
主要武器 『エバルトR4』
幅広い兵器を開発するエバルト社製の新型アサルトライフル。
高い精度と扱いやすさから探焉者の間でも人気が高く、丸みを帯びた特徴的なデザインは都市内の女性からも好評。
防具 『ウォティアのマント』
小型魔法生物『ウォティア』の毛皮から編まれた魔法具。
高い耐熱性と優れた伸縮性を持ち、見た目以上の防御性能を誇る。
ただしミレイア本人は「可愛くない」という理由であまり気に入っておらず、戦闘時以外は丸めて背負っている。




