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魔法が満ちる荒廃世界をこの手で統べる。  作者: 李座ー丼


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プロローグ 奪われるだけの弱者


「みんな、もう少し奥に行かないか?」


「やめとけ、ヤマト」


 今回の探索では収穫が多かったからか、ヤマトはいつにも増して無計画さが目立つ。


 そんなヤマトを制止するのは、いつも俺の役割だ。


「今日はもう切り上げよう」


 空も少し暗くなってきている。

 無理をする必要はない。


「え〜、せっかくここまで来たのにか?」


「アンタねぇ、リーダーのリタに従うのが決まりでしょ?」


 駄々をこねるヤマトに、俺の隣にいたサラが面倒くさそうに言った。


「……分かったよ〜」


「なら行こう」


 こんな所には、1秒たりとも長く居たくない。


 郊外に出てかなり歩いた。もうそろそろアイツらに出くわす可能性も出てくる。


「ねぇ、皆んな喜ぶかな?」


「あぁ、きっと―――」


 俺がそう言いかけた時、絶え間ない銃声に遮られた。


「伏せろッ!!!」


 2人は何も言わずに、俺に言われた通りその場に伏せた。


 耳を覆っても聞こえてくる銃声は、未だ止むことなく響いている。


「巻き込まれる前に、動いた方がいいか……」


 俺は伏せる2人に手で合図を出した。

 スリーカウントの後、それぞれが立ち上がって走り出した。


「……なんだ? 何と戦って―――」


 また、俺の声は途中で途切れた。

 遮ったのは音でも衝撃でもなく、唐突な“死”。


 甲高い、珍しい鳥が囀るような、跳弾の音が後から聞こえてきた。


「あっ―――」


「―――キャアァァァアァ!!!」


「……ヤマト?」


 ヤマトの頭が揺れたと思えば、血が飛び散った。

 倒れるまでの少しの時間が、長く感じた。

 死んだのか? 今の一瞬で?


 ……サラだけでも守らないと、流れ弾か……ここから早く離れないと。


「キャアァァアァァ!!!」


 俺は声が出なかった。

 早く言わないといけないのに、静かにしろって、早く逃げようって。


 早く言えッ!!!

 叫んだら、声出したらアイツらが……


「―――はっ?」


 俺のすぐ横を、何かが突っ切って行った気がする。

 頬を撫でる鉄の風、それが通り過ぎる頃には、叫び声は聞こえなくなっていた。


 金属が無秩序に繋ぎ合わされ、辛うじて獣の姿を模った『機械じかけの獣(マキナ)』。


 身体の至る所が軋み、小さな悲鳴のようだ。


「……り……ダ……」


 化け物に咥えられたサラは、胴が二つに別れそうで、それでも俺を見て生を望んでいる。


 俺はサラの声から耳を塞ぎ、その顔から目を背けた。


「……ねェ、だ……て」


 きっと最後まで、サラは俺を呼んでいた。

 咀嚼し、飲み込まれる瞬間まで。


「カ、カカ……ガァァァッ!」


 次は……俺かよ。


「……」


 いつまで動かないつもりだ?


 ……これじゃ同じだ。

 リタ、お前は何も変わっていない。


 殺せ、敵わなくても、殺すまで死ぬなッ!


「……あ、あ"あぁ"ぁ"ぁ"ッ!!!」


 がむしゃらに声を上げて、キツく握りしめた拳を振るった。

 半狂乱に、その鋼鉄を殴った。ほんの数発で、手からは血が垂れて、握った拳に力が入らなくなった。


 それでも、俺は止まらない、止まりたくなかった。認めたくなかった。


 だが無慈悲にも、血塗れの口は開き、ゆっくりと覆われていく。


「……クソがッ! くそォォォッ!!!」


 バァンッ!


「ギッ!?ア"ア"ッ!ギギギがガギッ……?」


 ガコンッ!


 何かの部品が一つ、また一つ外れて噛み合いがなくなっていくみたいな、そんな音が聞こえた。


 俺を飲み込みかけていたソイツは、体をガタガタ揺らした後、奇声を上げてその場に倒れた。


「いや〜危なかったな!」


 そんな軽い口調で出てきたのは、二人組の男たちだった。

 身長の半分ほどの大きさの銃を抱えている。


 身体の底から湧いてきた安堵で、俺はその場に崩れた。


「コイツらに獲物を持ってかれるとかだったぜ」


「馬鹿かお前、ガキに狩れるわけねぇだろ」


 ……何を言ってるんだ、こいつらは?


「にしても、こいつぁ質がいいぞ!」


 俺には一瞥しただけで目もくれず、マキナに群がって、その身体を分解していく。


 悍ましかった。


 さっきまで俺たちを襲った化け物を、簡単に殺して、笑っていられるコイツらが。


「こんなのやめらんねぇよな、探焉者!」


 また、奪われてしまった。

 2度も家族を失った。


 奪った奴は、今目の前で殺されて、ただ貪られている。


「……俺のせいか」


 弱すぎるんだ、俺が。


 勝てなくてもいい、せめて守れるだけの力があれば、俺も…探焉者に……。


「それだけじゃダメだ……ッ!」


 マキナを殺せる探焉者になっても、同じ探焉者に奪われてしまう。


 誰も届かない、何からも奪われない。

 圧倒的な頂点に、俺が至ればいい……


 俺が、このゴミみたいな世界をッ!


 ……この手で統べるんだ。

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