表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『婚約破棄された瞬間、全員の本音が吹き出した件』(連載版)  作者: くろめがね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

第八話 『焦る人ほど、先に動く』

8話です。

茶会から三日後。


城の空気は、ほんの少しだけ変わっていた。


誰も何も言わない。

それなのに、何かが動いているのが分かる。


噂は、前より静かだった。

でも、その静けさは前とは違う。


以前は「同情」の静けさ。

今は――


「観察」の静けさ。


私は回廊を歩いていた。

いつものように挨拶を交わす。


しかし、その上に浮かぶ本音が変わっている。


(この人、本当に動じない)

(あの茶会、見事だった)

(王子様の方が立場悪いかも)


……なるほど。


噂は、

もう“私を慰める話”ではなくなっている。


「誰が間違えたのか」


その話になり始めている。



昼前。


侍女が少し慌てて部屋に入ってきた。


「お客様がお見えです」


(こんな早い時間に?)

(しかも王子側の人)


私は、静かに頷いた。


「通してください」


応接室に現れたのは、

王子の側近だった。


前に謝罪に来た人物とは別の男。


若く、

野心が顔に出るタイプ。


彼は丁寧に頭を下げる。


「突然の訪問、失礼いたします」


(急がないとまずい)

(殿下が焦り始めている)


……ああ。


やっぱり。


私は席を示した。


「どうぞ」


男は座ると、すぐに切り出した。


「殿下が――」


一瞬、言葉を選ぶ。


(どう言う)

(謝罪だけじゃ足りない)


「……あなたに、お会いしたいと」


部屋の空気が、少しだけ揺れた。


私は紅茶を口に運びながら聞いた。


「どうしてでしょう」


男の本音が、

はっきりと浮かぶ。


(評判がまずい)

(婚約破棄が軽率だったと広まってる)

(このままだと殿下の評価が落ちる)


……なるほど。


つまりこれは、


謝罪の続きではない。


火消しだ。


「殿下も、少々行き違いがあったと……」


(取り消しは無理)

(でも関係修復したい)


私はカップを置いた。


「婚約は、解消されたはずです」


その言葉に、

男の本音が揺れる。


(そこは触れるな)

(問題はそこじゃない)


「いえ、その……」


「誤解を解きたいと」


(殿下が悪者になっている)


私は少しだけ考えた。


ここで断れば、

王子側はさらに焦る。


受ければ、

彼らは「まだ可能性がある」と思う。


――どちらがいい?


答えは、

もう決まっている。


「分かりました」


男の本音が弾ける。


(助かった!)


私は続けた。


「ただし」


男の背筋が伸びる。


「二人きりではなく、

 第三者の前でお会いします」


(……え?)


私は静かに言った。


「誤解を解くなら、

 皆の前の方がよろしいでしょう」


男の頭の上。


(それは困る)

(殿下が謝る形になる)

(完全に立場が逆)


私は微笑んだ。


「問題がありますか?」


男は言葉を失う。


(断れない)

(でも殿下が怒る)


しばらく沈黙。


やがて彼は、

ぎこちなく頭を下げた。


「……伝えておきます」



男が帰ったあと、

私は窓際に立った。


城の庭が静かに広がる。


胸の奥が、

少しだけ熱い。


私は、

王子を追い詰めたわけではない。


何もしていない。


ただ、

•泣かなかった

•騒がなかった

•逃げなかった


それだけで、


相手が勝手に焦り始めた。


そのとき、

侍女がぽつりと呟いた。


「……すごいですね」


(殿下の方から動くなんて)


私は首を振った。


「すごくありません」


本当にそう思った。


私は、

勝とうとしているわけではない。


ただ――


自分を下げないようにしているだけだ。


窓の外で、

風が吹く。


城の空気は、

確実に動き始めていた。


そして、

私は気づく。


この次の会談が――


最初の“本当の勝負”になる。


そろそろ、スッキリできそうですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ