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目が見えない


「坊。私を父と呼んでみよ」


「あー……?」


「坊。父、だ」


「あーぅー。……んは! きゃっきゃ!」


「……葬送の準備を」


 ◇


 ぴちょんと水滴がほほを打った。


「うん……?」


 おかげでオレは目を覚ましたが……。


「うお!? イテテテテテッ!? いたっ!?」


 全身が痛い! どこがどう痛いのかさっぱりわからないくらい痛い!

 ジタバタしたいが力がまったく入らん。

 しかも。


「暗っ! 真っ暗すぎるだろ、コレぇ!」


 うつ伏せになっている地面が見えないくらい暗い。まったく日が差していない。洞窟か?

 なんだ!? なにが起きて一体どうしてこうなった!?



 ホワンホワンほわんほわんほわわ~ん。←回想に入る音(古くて新しい!


神様「オウ、兄ちゃん。スマンけど、さっきちょっとワシがしくじってもうたせいで兄ちゃんさっき死んでもうたさかいのう、スマンけど、よそで余生を送ってくれへんかいのう」


ワイ「は、はい……」


神様「オウ、そうかそうか、助かるワ! グァッハッハッハ!!」


 ほわんほわんほわわ~ん。←回想から戻る音



 ぴちょんと水滴がほほを打った。


 ハッ!? また気を失ってた!?

 尋常じゃないダメージだろ、コレ! 3フレーズのセリフ回想の間に気絶て!!

 どないなっとんじゃーい!


 ……全部声に出せないくらいしんどいんですけどね、今。


 いや、これマジでやばい。転生早々また死ぬ。


 なんのために転生して、なんのために生きるのか、わからないまま終わるのはいやだ!

 こちとら、あまりの暇さにテクノブレイクで死んでんだぞ!?

 せっかく拾った命、捨ててたまるかい!

 クソァ!!

 ずぇってーコレも神様のミスだ。あのパンチパーマ、こっちが半引きこもりのオタなのわかっててあの態度だろ。こちとら大声にすらビクゥッってなる程度の文化系だっつうの!


 ……あ~クソ、また意識飛び始めた。

 心なしか身体も温かくなってきたし……。


 って!

 コレ、日差しだな! 太陽光のあったかさだわ!!

 でも目の前まだ真っ暗なんですけど!?


 え!?

 なにコレ!? 盲目ってこと!?


 ……マジかよ……。


 ◇


 ぺろぺろ……ぺろぺろ……。


「ん……」


 柔らかくてぬとっとしたなにかがほほをなでた。たぶん、動物の舌だ。

 オレは眠気に抗いながらそちらに目を向けて――


「やっぱ見えてねえじゃん」


 暗闇に絶望した。


「××××××××××?」


 声が聞こえた。知らない言葉だ。

 そういえばいつの間にか仰向けになっているし、布団、いやシーツか? タオルケット? みたいなものも被せられている。


 どうやら転生・即・死(悪・即・斬みたいな)は免れたらしい。

 でも目は見えないんだよなあ。


「××××××××××?」


 また声をかけられた。たぶん男の声だ。なに言ってるのかわかんねーや。


「えーと」


「おっと、日本人転生者か」


 !?


「お前も!?」


「オレは転移だけど。そのなりだと3~4歳だろ? 最初から意識があったんじゃねーの?」


「いや、さっき気がついたところだ」


 そういえば身体の痛みがなくなってる。「さっき」って言ったけど、これはたぶんかなり時間経過してるな……。


「相当ダメージ負ってたし、そのショックで意識を取り戻したのか、死んだ身体に魂魄をぶち込んだのか微妙なところだなあ。具合は?」


「だるい……けど、痛みはなくなった。でも、目が見えない」


「だろうな」


 見てわかるということは脳の理由というよりは眼球の問題なのか。

 なら――


「治せないのか」


「無理だ」


「異世界なのに?」


「魔眼を埋め込むとか、時空系魔術とか、そういう手段に訴えれば可能だけど、どっちもオレはできん」


「手段はあるってことか」


「眼球移植くらいの技術なら地球にもあったと思うけど『治る』とは言わないだろ?」


 ……なるほど。

 たしか眼球移植は結局視力は戻らなかったような気がするけど……。


「ちなみにあんたがこっちに来たのって日本でいつ頃?」


「西暦、だっけ? で2000年とか? こっちで数百年だか数千年だか生きてるんでほとんど覚えてないが――」


「どっちだよ!? いやどっちでもスゲェけど!」


「普通とは言わんがたまにいる。日本の百歳以上のお年寄りくらいの確率だ」


「それでも結構なもんだが……いや、オレは2016年に死んだから」


「時間のずれとしてはマシな方だろ。前、オレより過去のやつとかいたぞ」


「ああ、そう」


 話し疲れたせいか、眠くなってくる。――たしかにまぶたに重みを感じない。


「ひとまず寝ろ。目のことはなんとかなる」


 その言葉に安心したのか、オレはまた意識を手離した。


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