#0 それで、辞世の句は完成しましたか、魔女様?
マリアンは無意識に呼吸を止めていた。目前の獣をどうやり過ごそうか、どうにか逃れられないかと祈る小動物のように、ゆっくりと顔を上げた。
彼女を見下ろしているのは、白銀鎧の騎士だった。
鎧に彫り込まれた、深い水流。春風にたなびく外套は、雲一つない青空に浸けたよう。青い釉薬、青い染料。青色は神の権威の証であった。
いくら世情に疎いマリアンでも理解できる。これほどの青を纏う騎士といえば、聖騎士しかありえない。魔女を討つために教会が神の武器を与え、各大教区に一人しかいない、恐ろしい騎士。
それまで静かに礼を取っていた騎士の、その手が下がった。腰に吊られた大層な神の剣に籠手の先が触れ、金属がちいさく鳴る。籠手が逆手に柄を握りこむ。
マリアンは息を詰まらせた。
悲鳴をあげたくても、喉から鳴るのは木枯らしのような呼吸音ばかり。しかし、脳みそはとてもよく動いている。
彼女は走馬灯を見るように、どうしてかの《慧眼の騎士》がはるばるこんな山奥の小屋まで自分の首を狩りにきたのかと、その発端を思い出していた――――。
ブシロードワークス小説大賞に出したい!!と書き始めたものの、その小説大賞の存在を知ったのが応募期間も終わりかけの頃だったので、まったく書き上がらず……。いろいろ諦めた結果、超圧縮したプロローグが出来上がりました。
本編は順次投稿していきます。ゆっくりのんびり読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
26/10/16追記
プロローグを90%ほど削りました。




