第8章
第8章:
ベルカとアルハンの戦いは、狂気に包まれていた。
二人は正気を失ったかのように激しくぶつかり合い、剣が空を切るたびに火花が飛び散った。
しかし、次第に戦況はアルハンの方へと傾き始めていた。
ベルカは深手を負い、荒い息をつきながら膝をつきそうになっていた。
それに対し、アルハンは不気味な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてきた。
その瞳には、冷酷さを超えた狂気が宿っていた。
「終わりだ、ベルカ……!」
アルハンは剣を高々と振り上げ、最後の一撃を加えようとした。
だが、その瞬間——
彼の表情から、笑みが消えた。
剣を振り下ろそうとしたアルハンの姿が、突然煙のように消え去ったのだ。
まるで初めから存在しなかったかのように、彼は霧散した。
「……消えたのか?」
ベルカは地面に崩れ落ち、肩で荒い息をついていた。
全身の痛みと、流れる血の感覚を感じながらも、不思議と安堵が込み上げてきた。
顔を手で覆い、低く呟く。
「計画のために……ここから早く抜け出さなければ……」
だが、次の瞬間。
ベルカの表情が変わった。
痛みと疲労に覆われた顔の奥で、冷酷で不気味な笑みが浮かび上がったのだ。
瞳には、まるで潜んでいた黒幕が正体を現したかのような冷徹さが宿っていた。
「もうバレたようだな……仕方ない。
あの連中は計画をどこまで進めている?
"あのお方"も既に到着されているのだ、これ以上の問題はない……
まったく、最悪だ……」
——その時だった。
空気が突如として重く沈み込んだ。
ベルカは反射的に身構えようとしたが、目に見えない圧倒的な力が彼を押し潰した。
呼吸さえも困難になるほどの圧迫感に、身体がまるで石化したかのように動かなくなった。
それは、先ほどのアルハンとは次元の違う、より深く、より暗い存在の力だった。
そして——
遠くから、誰かが歩いてくる音が響いた。
その足音は穏やかでありながらも、空間そのものを歪めるかのように響き渡っていた。
「……アルハンの時間が尽きたか。
まったく、面倒だ。」
その声は、冷たく深みを帯びていた。
ベルカは、全身が凍りつくような恐怖を感じながら、
目の前に現れた漆黒の影を見つめた——。
「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第9章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!