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バトルロイヤルの結末

バトルロイヤル終了です。

優勝は……


 時は遡る。

 3日目の夜、バトルロイヤル4回戦。

 黒竜と化した小間竜騎の頭部に、万丈龍之介の聖剣が突き刺さる。


「うおおおおおおおおっ!!」


 万丈は叫ぶ。

 魔力を全て使い果たしてでも、目の前の敵を倒す為に。

 光と闇、相反する魔力が混ざり合い、

 そして……


「グオオオアアアアアアアッ!!!」


 黒竜の悲痛の叫びが響き渡る。

 聖剣が刺さった頭部から徐々にヒビが広がっていき、黒竜の体が崩壊していく。


「やった……のか」


 砕け散っていく黒竜を見て、戦いの終わりを感じ取る万丈。

 しかし……


「ククククッ! ヒャハハハハハハァ!!」


 邪悪な嗤い声と共に、黒竜の残骸から黒い霧のようなものが一ヶ所に集まっていく。

 その闇は、やがて悪魔の顔のように変貌していく。


「選手交代だ! ここからはオレが相手してやるよ、勇者サマァ!!」


「くっ! 海藤!」


 闇はどんどん膨れ上がっていき、悪魔の肉体を形作っていく。

 だが先ほどのダメージが大きかったせいか、肉体の構築には時間がかかっており、まだ最低限形作った程度のものでしかない。

 海藤を倒すなら今しかない。そう思う万丈だったが……


「クハハハハッ! よもや回復魔術を使う魔力も残ってないとはなァ万丈ォ!! ま、そこで指咥えて眺めてるんだな! テメェの宿敵であるこのオレが新たな姿に生まれ変わる瞬間をなァ! ゲヒャハハハァ!!」


「くっ!」


 海藤の指摘通り、先ほどの攻撃に全ての魔力を使い切ってしまった万丈。

 今の万丈に海藤を倒せるほどの魔術は使えない。

 だが、万丈にはまだ異能が残っている。


「やるしかない……か」


 万丈の掌に、漆黒の物質が球状になって出現する。

 「冥王星ヘルズマター

 全てを消し飛ばす黒い物質を出現させる異能。

 しかし……


「ギャハハハッ! いいのか万丈チャンよォ! 今のオレを冥王星ヘルズマターで消し飛ばしたら、テメェも死ぬぜェ!!?」


 冥王星ヘルズマターは生み出した黒い物質の質量に応じてライフが減っていく。

 今の万丈には、海藤を消し飛ばした後に生き長らえるほどのライフは残っていなかった。

 しかしそんな事は問題では無かった。

 万丈は既に覚悟を決めている。 


「海藤……ここで貴様をまた取り逃がすくらいなら……俺は死を選ぶ!」


「おォ!? 死なば諸共ってかァ!? いいじゃねェかオォイ! 貴様を初めて面白い男だと思ったぜェ、万丈ォ!!」


「うおおおおあああああああああっ!!!! 冥王星ヘルズマターァァァッ!!!!」


 海藤に接近し、冥王星ヘルズマターをさらに巨大化させる万丈。

 黒い太陽のような形態と化した冥王星ヘルズマターが、悪魔と化した海藤の闇を飲み込み、完全に消し飛ばした。


「やった……やっと、終わった……」


 闇をいとも簡単に消し飛ばし、その役目を終えた黒い太陽が徐々に小さくなり、消えていく。

 それは、万丈龍之介の最期が近づいている事を意味していた。


「体が……砂に……」


 万丈の体が徐々に砂と化していく。

 それはどこか砂時計に似ていた。

 この砂が全て落ち切った時、万丈の命は完全に尽きる。


「アリサ……父さん、母さん、皆……今、そっちに行くからな」


 やがて、万丈の鍛え上げられた逞しい肉体はまっさらな砂となって流れて消えた。



--------------------



「終わったっすね~。いや~盛り上がった~。結果はちとアレでしたけど」


 ゴスロリ風少女のような容姿をした邪神が、ぱちぱちと軽く拍手をしながらそう言った。


「そうですね。私たちにとってはいい結果ではありませんでしたが、まぁそれも神の導きなのでしょう」


 銀髪の妖精のような姿の女神は淡々と言う。

 最後の戦いによって荒れ果てた大地を、上空の彼方から見下ろしながら。

 そして、コホンと咳ばらいをし、再度口を開いた。


『お疲れさまでした。異世界転生バトルロイヤル。これにて終了です!』


 女神の透き通るような声が、ステージ全体に響き渡る。

 邪神と話している時とは打って変わった女神の明るめの声に、邪神は思わず苦笑いを浮かべる。


『それでは結果発表に移りたいと思います。とは言っても、ご本人はもう既に分かっていらっしゃるとは思いますが……』


 女神は一度間を置いて、軽く息を吸う。

 そして、3日3晩続いた戦いにピリオドを打った。


『異世界転生バトルロイヤル、優勝者は……砂肝汐里さんです! おめでとうございます!』


 荒れ果てた死の大地の上で、体のほとんどを黒炎で焼き尽くされた魔女、キルは女神の結果発表に唖然とした。


「え、私……が……優勝……?」


 キルの魔女の姿が徐々に蜃気楼のようにぼやけていき、ギャル風女子高生、砂肝汐里の姿へと変わっていく。

 その様子はまるで、彼女を塗りつぶしていた幾千もの嘘と闇が、徐々に剥がれ落ちていくかのようだった。




 ◇バトルロイヤル・結果発表

 

 1位:砂肝汐里

 2位:万丈龍之介

 3位:小間竜騎

 4位:海藤咲夜




お読みいただきありがとうございました。

優勝はキル、もとい砂肝汐里です。

次回、彼女の願いとは…?


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