↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4live  作者: @naka-motoo
PR
19/53

第19話 真夏の月(その1)

 7月の最後の夜。金曜日。「BARたかい」本番の日は、この夏最高の気温を記録した。僕たちの住む鷹井市の今日の最高気温は、38℃。全国版のニュースでも、今日、全国一の気温だったと伝えられた。その代わり、というか、雲一つない快晴で、月末で細っているだろうが、月の光の下でのBARは夏の夜の風情を醸し出してくれるに違いない。

 BARの開店は17:30。ちょうど近場の会社のサラリーマン・サラリーウーマンたちが、一番乗りできそうな時間だ。その後、バンドの演奏開始は19:30から。

 一番手(前座ともいう)は、僕ら4LIVE。二番手は枯井戸。トリはAcid Voiceだ。

 僕らは、開店したばかりで、一番乗りの客がこぞってテーブルに着き始める様子を見ていた。もし満席となったら、全部で300人だそうだ。僕は、どんなに多くてもせいぜい50人入ればいいんじゃないか、と思っていたが、予想に反してぞろぞろと客がテーブルに着く。

 オーダーは隣のデパート‘大都’の6階レストラン街の飲食店の店員たちが担当する。

 お酒は大都の入り口に設置されたカウンターで作り、簡単な肴はイベント広場に隣接している「チェリッシュ」や、本業でバーをやっている「カペラ」などが対応する。今日は「カペラ」は、BARたかいであぶれた客を受け入れてくれるだろう。

 それ以外の食事に近い感じのオーダーは、大都6階のレストラン街にそのまま流され、ボーイがキャビンに食事を乗せてエレベーターで運んでくる、といった流れだ。

 出だしからの注文に、スタッフがフル稼働で対応している。ただ、雰囲気は静かだ。スピーカーからは聴いたことの無いジャズナンバーやブルースが自然に耳に入る程度の音量で流されている。

 僕はどうせ、ビヤガーデンのノリで来る客が大勢いて、BARの雰囲気など出る訳はないのじゃ、と思っていたが、非常に静かな大人の雰囲気がその場に醸成されている。

 多くても4~5人のグループでの来店だ。一番多いのは2~3人のグループ。皆、クールビズのシャツに、ビジネスバックを提げ、ハイボールやロックを注文し、静かに話し込んでいる。カップルもいる。男性はロックを、女性はカクテルを注文し、特におしゃべりをするわけでもなく、時々お互いに視線をやっては微笑し、後は流れて来るジャズに耳を傾けている、といった若い二人もいた。

 リタイアした後かなり年数が経つような年配の男性1人客も何人か目に入った。

「灰皿を・・・」とボーイに頼んで、タバコを燻らせながら、ドイツの瓶ビールをグラスに注いでもらっている。

「ありがとう・・・」と老人特有のしゃがれた声だが、ずしりと重みのある声質で声を掛けられ、それに微笑で応えるボーイ。

 僕は、一瞬、ここが鷹井市であることを忘れそうになった。今、こうして目にしている人種は都会にしかいないものと思っていたが、それは完全に僕の思い込みだったようだ。

 裏を返せば、ビヤガーデンや居酒屋ももちろん‘大人’の素敵な世界なのだろうけれども、そうではなくて、「BAR」に憧れを持つ人たちがそれなりにおり、加えてバンドが演奏する、ということへの期待を持っている人たちが結構いるのかもしれない、と僕は勝手に想像する。

 だとすると、この間、マスターが言っていたように、

‘酔っ払いだと思って舐めたらだめだぞ!’的な諫言が現実味を帯び、否が応にも緊張が高まる。中3の時のライブハウスデビューとは異質の緊張だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。