幼なじみ
肌を刺すような寒々しい空気に柔らかい日光が射し込んでくる様な、そんな気持ちのいい冬のある日。
街はネオンや装飾が輝き、人々は一層騒がしくなり、赤服のおじいさんを迎える体制が少しづつ出来始めた頃。
俺は病室の前に立っていた。
病室のネームプレートには
石井美奈子
と書かれている。
俺が昔大好きだった、今でも愛しくて、俺の心を縛りつけている人の名前。
俺とミナは家が隣同士で、ミナの方が2つ上だが兄弟同然に育った、いわば幼なじみである。
お互いの家でご飯を食べるなんて日常で、そのまま泊まって一晩中二人で話してるなんて事も多々あったくらいだ。
いつもボーっとしていて、俺がついていないとすぐに迷子になって泣き出す泣き虫な女の子だった。
でも、妙に正義感が強く、頑固な子だった。
あいつを語るエピソードにこんな話がある。
ミナが小三で俺が小一のころ、二人で遊んでいる時に捨て猫を見つけた事がある。まだ子猫だった。
可哀想って内緒でミナの家に拾って帰ったが、すぐに親に捨ててこいって怒られてしまった。
俺が泣きながら捨てようとしたが、ミナが頑として諦めない。
子猫を抱きかかえ、一晩中正座して親に頼みこんみ
とりあえず今日は寝な
と言う親の言葉を頑として受け付けず、とうとう認めさせたという。
いつも何考えているかわからない笑顔でホニャっとしているが、芯が強い幼なじみだった。
二人でいるのが日常で、いないと調子が狂う。
そんな俺達が付き合い始めたのは自然な流れで、どちらが告白するわけでもなかったし、ハッキリと好きという気持ちではなかったが、二人の時間は本当に居心地よかった。
だが、そんな二人に終わりがやってきた。
ミナが大学に入ると、俺は簡単に捨てられた。
同じサークルの先輩に告られた。ごめんね。
本当に簡単だった。
大切な物は失って初めて気付くとはよく言ったもので、俺は喪失感やら虚無感やらで地獄のような日々が続いた。
本当にどこに行っても、何をしてても考えるのはミナの事で、あいつが頭に浮かぶ度に泣きそうになる。
そんな日々。
しかし時間とは便利なもので、どうにか立ち直った俺は、当時妙に認められていたサッカーに没頭する。
ミナを忘れようとスポーツに打ち込む。
一応、県で優勝し全国も経験した。
しかし何の気まぐれか、大学には勉強で入り、適当な大学で適当な大学生活。
その生活にはミナは全く入っていなかったが、俺はあいつを忘れる事が出来なかった。
何をしていようが頭にはあいつの笑顔があって、どこにいようが目はあいつを探していた。
他の女の子とも付き合ったが、やはり長続きしなかった。
そんな大学生活を満喫して一年がたった頃
あいつが入院したと聞いた。




